鶏飼い時事(じじい)…『スペイン風邪の記憶』



家内の母親は98歳、まだ健康である。甲山というその部落では流感で十数人が亡くなった。実家は村医者で外部からの医者を手伝ったという。ぶっ殺しても死なないような屈強な男たちも肺炎であっけなかったそうだ。しかし自分の家では誰もやられていない。外部からの医者も帰りにお茶を飲んで帰っていたという。
第一次世界大戦(1914〜18)が終わったのもスペイン風邪の流行のせいだと云われるが、当時を題材とする多くの映画などでも主題としてはあまりお目にかからない。浅田農産の鶏に見るように突発の脳症脳炎よりも末期にHaemophilus influenzae pneumoniaが絡んだ劇症肺炎(現在はセフェム系抗菌剤を用いる)を併発して死亡する例が多かったらしく(医学大辞典など)、あまり大パニックの様相は見られない。
一時、我が国の学者間で復元の話のあったスペイン風邪ウイルスの再現が、危険だと反対していたアメリカで為された。そのウイルスと現在のH5N1が似て居るというなら身近かなところから当時の様子などを調べて見ようと思って居る。

日本の学会の意向に沿えば人類は新しい型に対して全く免疫を持たぬというが、我が国でも2〜3年毎に流行を繰り返すインフルエンザがかなり差別的に感染するところをみると、交差免疫のような抗体的な共通項がかなりあるような気がして居る。それぞれ接する相手は違うが、医者も鶏飼いもインフルエンザには強い。私も家内もワクチン無しでもひどくやられたことはない。なにか有る筈と思って居る。
今回発表された細胞内のRNAポリメラーゼ(RNA合成酵素)と表層構成蛋白M1(ウイルス増殖の促進抑制因子)の関係など、素人の読みちがいは大有りとしても、それら細胞内の環境がレセプター以外にインフルエンザウイルスの感受性に影響するとする、石浜国立遺伝研究所教授の論文などからも、現場とすれば常に何か参考になるものはないかと漁り続ける訳である。

今日は合同委員会が開かれて居るが、弱毒タイプの扱いについて、より突っ込んだ議論がなされるべきである。現実に周辺諸国でワクチンが広く使われて居るからにはH5N1中心にウイルスのマイルド化はどんどん進む訳である。アジア諸国で当分の間の有る程度の常在化はやむを得ないし、強毒タイプの突発を防ぎ人への危険を防ぐのが精一杯だろう。

ウイルスの性質からして、もともと我が国独自の方策など有る訳がない。今更ワクチンを使うと事が複雑になるなどという韓国当局者の言い分は噴飯物で、事態はもう十分に複雑化している。韓国ではマイルド化したH9N2,我が国はH5N2,次ぎはやはり周辺国からの野鳥などによる今回いわれるようなワクチンも絡んだ弱毒タイプのH5N1か、直接の渡り鳥からの強毒株かである。高病原性弱毒タイプなどと殊更対策を複雑にする我が国独自の言い回しはやめて、その対応も同時に世界三機関の取り決め、勧告に沿った形にすべきである。インフルエンザのパンデミックが、数週間で世界中を駆け巡るというなら、鶏での対策も豚コレラは云うに及ばず、口蹄疫とも一線を画すべきであろう。

H 17 10 7. I,SHINOHARA.