鶏飼い時事(じじい)…『インドネシアの鶏を救え』



何によらず現場は常にスクラップ&ビルトでありトライ&エラー(試行錯誤)の連続で学んで行くものである。永遠に半可通のままであり生兵法であり続ける訳だが、それ故に考える努力をしなくなったら一切の進歩はなくなる。
その養鶏現場を、為政者も一般国民も割りと一面的に単純に捕らえている。あまり崇高なものではないことは確かだが、さりとて利益の為だけというのもあり得ない。小委員会のように獣医微生物学だけというものでもない。

飼育管理者にとってインフルエンザの高熱ほどやっかいなものはない。私自身30年間休日なしの無欠勤だったが40度近くの高熱で作業を続けるほどつらいものはない。子供が高熱の時は一晩中抱き抱えてオロオロするのは皆同じである。鶏飼いだけが欲に目がくらんで人への危険も顧みず、鶏だけが大事だと写っているというのに苦笑した。
スペイン風邪では一部落で十数人が死亡し、両親が死んで祖父母に育てられた人が数人いる。無理をする壮年層がやられた例がやはり多い。
信仰のある人は旧約聖書のヨブ記に感動するが、ただ物語りとして読む人、特に日本人の場合は代わりの家族財産を神から与えられる話に違和感を持つ。日本では、少なく共これまでは二世三世の繋がりで掛け替えのないものと教えられて来たからである。そんな家族や従業員が大事でない鶏飼いはいない。その点ではパンデミックへの懸念を表明したアナン事務総長以上に心配である。

ASEANなど近隣諸国の農相会議が開かれたが、日本も国際機関を通じて協力を申し出たという。もはやOIEなどの世界三機関がこぞって云うように家禽家畜の段階できっちりコントロールすることが一番重要なのに、各国の経済事情で、殺しも出来ず、ワクチンも打てずで一体どうなるのか。日本も使えぬワクチンを死蔵して置くくらいなら今すぐインドネシアなど困っている工業の協力国に送るべきだ。日本自身は殺す余力があるのだから殺し続けるのだろう。家畜家禽の処理如何でパンデミックの危険が増すのなら、どの国から始まっても同じである。それなら必要で困っている国を優先すべきだ。

ただ、そんな時に、ありもしない日本発の違法ワクチン接種情報が世界を駆け巡るとは許せぬことである。<大金持ちの日本国と400万羽の違法ワクチン疑惑の養鶏場>対比の報道は国辱ものである。根拠もなく公表した手合いはいつも云うが国賊である。
自らの潔白を主張するなら養鶏団体は、名誉棄損を申し立てるべきだ。こんな侮辱はないとその折りも書いたが、業界は必ずしも侮辱とは受け取っていないらしい。しかし国賊学者の心胆を寒からしめてやるくらいでないと本当のことはなかなか出て来ない。

世界健康三機関ももっと強い勧告をすべきだ。繰り返すように日本もそんなに自国が安全なら、死蔵ワクチン位はすぐインドネシアに送るべきで、養鶏団体も「我々はインドネシアの鶏を救うため、日本政府に備蓄のワクチンをすべて送るよう要求した。我々は政府と世界的な研究者によって守られ、鳥インフルエンザに関しては世界一安全である」位のことを云わないと示しがつきそうにないではないか。
まあ余裕が有るのは結構だが、その代わりいざと云うとき慌てなさんな。
 
H 17 10 2. I,SHINOHARA.