鶏飼い時事(じじい)…『泰山鳴動して』



今回の茨城鳥フル問題、あまりにも大きな犠牲を伴ったが結果は<泰山鳴動してネズミ一匹>だった。これでせめて業界の意識改革に繋がるものがなければ、収穫は皆無に等しい。

ショウプの実験でも、当時のホッグフルーはヘモフィルスインフルエンザとおぼしき細菌が介在しなくては感染しなかった。茨城株も同様、SPF鶏には、それ自体感染しないという。何れにしても従来の想定型との抗原の差異が激しく備蓄のワクチンは効かないとされる。しかしハルバーソンのレポートにもあるとおりH5,H7に対してH1の不活化を使う例もあるとすれば、免疫そのものがはっきり液性、細胞性と一つの作用だけでなく、Ig,キラーT細胞、INF,その他、生ワクでなくても何らかの作用が期待出来るのかも知れない。

政府も正式にメキシコ政府の返事を貰ったからには、更なる現地調査の意向など失礼の極みで、物見遊山のほうがまだましである。
まあいくら無害に近いウイルスでも見つかったとなると放ってもおけないのだろうが、費用対効果の点では無駄はすべきでないのは当然である。
すべからく官側の隠し事の多いのには辟易させられるが、業界側も追求するものはきちんと追求すべきである。

具体的には、県内で陽性になりながら県境をまたぐと、搬出しても陰性となる不思議。業界一の信用を誇るAK園で同じ家保の検査で全陰性が全陽性と判定された不思議。この二つの整合性を求めても、(1)家保が全く未熟なのか、(2)茨城が極端に検査のしきい値を下げたのか、(3)他県はウソをついているのか、(4)検査の抗原そのものが違うのか確かめなくてはならない。官がワクチンを持ち出すなら、業界もまた状況証拠を突き付けるべきなのである。

委員会側は自分達の知見と全く異なる今回のウイルスに遭遇して、ワクチン接種が可能か不可能かの検証もせず、摘発された各農家が強く否定しているにも拘わらず、状況証拠さえもなしに、農家の実名を明らかにした上で、9月2日には唯一の選択肢としてワクチン説を発表し、農水はまた刑事訴訟も辞せずとぶち上げた。
さすがに9日の寺門さんは喜田さんより常識的で、唯一の選択肢を可能性の一つにまで後退させた。

このように両者を対比させた上で、唯一整合性のあるのは(4)検査抗原の違いだとして確証がないままに論を進めても裁判で負ける話ではない。私が業界を代表する立場だったら、鶏の処分を理由に、喜田さん達を引っ張り出して行政訴訟を起こすとした理由である。無論寝たきりじじいではせんのない話ではあるが。

そこで今回の業界の要求である。茨城株相手にせずなのか、茨城株が相手なのか。敵は本能寺なら茨城株とは和睦すべきで備蓄ワクチンがそれに効かないことなど問題ではない。そしてHIによる全国サーベイランスの要求でもどっちが相手なのかはっきりすべきだ。

これまでのところ先達の学者達はあまりにも過去の己の研究範囲に拘り過ぎている。これでは新しい事例は皆想定外だ。発達障害と云われかねない。

H17 9 30. I,SHINOHARA.