鶏飼い時事(じじい)…『決起集会を前に』



全国養鶏生産者決起集会を2日後に控えて、打って一丸となる方向付けが出来たのは喜ばしい。大いに期待したい。

ただそのことと、この冬の実際の防御とは別問題と云えないこともない。私自身の各論を並べて見る
(1)今回のサーベイランスの評価。
1996年、岩手、鹿児島でのH3N2とみられる弱毒型強毒タイプ?の突発を受けて、翌97年に行われた全国調査は、平成11年の家衛試の報告書によれば、一応各亜型を対象とし摘発淘汰を目的として行われなかったことでHI試験のしきい値を下げても特別問題はなく、検出困難な中にも東北以西の分布を指摘し、現在でも北海道地区の家保の指導文書ではその文言がそのまま使用されている。
その点で今回の調査は対象をH5,H7に絞り、予め摘発淘汰をうたう等、偽ワク(農水造語ばかりだが)疑惑追求ともとれる不純な動機がみられ、9月2日の喜田委員長発言の不可解さと相俟って、現場の著しい不信感を買った。この時点で明らかな失敗であった。
このような無意味で害のある調査は今後ともすべきでないし許すべきでない。
繰り返すが我々現場の感覚では人のインフルエンザの二〜三年置きの大流行、豚のスワイン株(ホッグフルー)の高い陽性率、鶏に対する1997年の家衛試調査の結果、御用を務める以前の研究者達の言葉、実際の見聞きした怪しい症例と検出の困難さなどから、LPAIの浸潤については確信に近いものをもっているし、79年振のHPAIの話も、先輩達の話から、後にND扱いされた数例など怪しい事例は沢山ある。従って茨城は偶然の摘発であり、感染が同県内の一部に止まるとした公式見解は《清浄国論》を固持する為だけの全く恣意的なものに過ぎないと思っている。

(2)疑似患畜の取扱いとウインドウレス鶏舎の差別問題。
当局と小委員会は、明らかに偽ワク疑惑のもと(それを裏付ける証言は無数にある)、何ら症状もなくウイルスも居ない多くの解放鶏舎収容の陽性鶏群の殺処分を指示した。ウイルスが存在しない陽性鶏群を変異要注意とするのは詭弁であるし、その殺処分は言語道断である。

(3)予防的ワクチン(重複語)接種許可の要求。
世界三機関が92/40/ECに準拠して摘発淘汰によるHPAIの根絶をうたっていたのは過去のことである。昨今は繰り返しワクチンによる防御を訴えている。外電はこのことをしばしば報道するが、意識的に翻訳がなされない。民間までがこれに協力的であるのは解せない。
数日前、大新聞紙上で初めてワクチン問題が提起されて皆驚嘆した。日本はそのくらい情報を閉ざされた後進国である。《OO発同盟》時代とさして変わっていない。

(4)実際防御の方法
今のような殺す方向でのワクチン要求はあまり意味がない。本来の予防の方向としても、アジュバントワクチンでは廃鶏処分が数カ月出来ないので実際的でない。従って育成中のプログラミング接種のみが可能だが、昨今の情勢では感覚的に《百年河清を待つ》に等しい。しかし要求自体は急を要することは無論である。
実際の防御方法はいろいろ考えられる。一番いいのはレセプターに蓋をするヒントだ。これだと取り付けないからサイレントエピデミックも起こらない勘定だ。蓋するだけなら張り付く物なら何でも良い。ND猖獗時さんざ体験した筈である。
繰り返すが、よく考えて見ると我々現場は79年振りにお目に掛かった訳ではない。ずっと以前から実際は出っくわし続け、処理し続けて来た筈である。ウイルス退治はどれも大して変わらない。問題は福岡のND発症例のように家保自体がうまく処理出来なくなっている点である。レセプター塞ぎの緊急スプレーの効果には度々触れて来た。出始めてからでも間に合うし、機器などは霧吹きスプレーヤーで沢山だ。ただ一秒でも早く塞ぐことが肝要である。

(5)情報が出て来ない。
「農水の情報取りは電話で事足りる」とは記者諸氏の感想である。
あれほど饒舌だった研究者達も、御用を務めるようになったら何も言えなくなったらしい。公的見解など聞きたくもないが必要な情報が一切出て来ないのは困る。
例えば
茨城での流行感染の時期(分かってない筈がない)
LPAIの浸潤状況 (分かってない筈がない)
など言い出すと切りがない。

尤もこうなると現場側も、あれだけ問題にされていたED症状、ウインドレスの産卵ピークが出ないこと、散発するND,IB など何も出なくなった。目出度いと云えば目出度いのだが、そういえば
見ざる 聞かざる 言わざる 動かざる は古来日本人の美徳とする所だっけ。

H 17 9 26. I,SHINOHARA.