鶏飼い時事(じじい)…『鳥フル対応とヘビの子騒動』



《鳥インフルエンザ問題の今後》とした2004年6月10日以来のシリーズは100回で一応終了しました。永い間、身近な情報を沢山寄せていただいて感謝しております。気持ちでは控えめに控えめにと思いながら、切実なご意見に押されるとつい感情的になったりしたことを反省しています。今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

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昨日のasahi.comによるとシーズンを前に「家畜防疫互助基金」が底をつきそうだという。まだ実際病気が発生した訳でもないのに である。

報道でみても最近の日本人は精神的免疫(大川総裁)が低くなった。例えば今日のニュース、ペットのナントカニシキヘビの子供が行方不明になった。無毒で親になっても2mくらいという。昔だったらナーンダということでここまでの話だ。それが今は違う。
大勢の警察官や区役所の人が出て、ヘビの子捜しをする。住民は「早く捕まらないと怖い」と話す。生態系が狂って日本のヘビが居なくなる話まで出かねない。
危険はなくても毒ヘビや大蛇と同じ扱いである。上は郵政解散の770億から下は子ヘビ騒動まで、なるほどこれでは国の借金も税金も増えるわけである。

互助基金も同じだ。本当の大蛇が出たときに備えてのそれを、無毒のヘビの子かも知れないものに使い果たしてしまったのではないか。
13日の茨城新聞。県は「ウイルスが強毒性に変異する恐れがあり、早急に防疫措置を完了させるため」自衛隊を呼んだとある。マスコミも国民も自分で考えることをしなくなりお上の云うがまま受け取るだけである。

鳥フル対応とヘビの子騒動を一緒にしたら茨城県が怒るだろう。「県民の不安を払拭することが大切だ」とかなんとか。
話がそうなった時、その大金を使い、自衛隊まで駆り出した鶏の殺処分に本当はどんな意味があったのか、ほかに選択肢はなかったのか県自体はよく考えたろうか。特に此の処置は公衆衛生とは関係なく、家畜の保健問題だと云って居たから尚更、国際的に見てコントロール手段を封じたままの清浄国論是か非かという大問題、生産県としての信用問題、とんでもない額の補償の問題、それらをすべて吟味した上で決定すべきことを、せまい視野の獣医微生物学だけの顕微鏡族に委ねっぱなしでいいのかという疑問はなかったのだろうか。
ミネソタ大学のハルバーソン教授のレポートによると、向こうでは、LPAIが発生したとき、ワクチンでコントロールするか補償するか費用を勘案して決めるそうである。そうなると見通しの甘さは許されない。1万羽なら潰せても、50万羽だととんでもない予算になる。同時に公衆衛生、家畜防疫上危険かどうか産業側獣医とよく討議するそうだ。

今回の茨城のケースを検証して見よう。
最初の水海道の陽性問題で小委員会は殺処分を決め、喜田委員長はこれで拡がることはないと断言した。陽性だけで無症状の鶏を疑似患畜として摘発できる規則条例があるにしても、それはあくまで無認可ワクチン使用を想定した規定である。それにあとは見つからないとする根拠はない。したがって私達はその時点での殺処分に強く反対した。

どだいコントロール手段をもたないままLPAIの摘発を進めたら、国民の税金である予算をどのくらい使うことになるのかとかの話を聞いたことが無い。しかも将来危険な変異を起こす公衆衛生上の懸念はH1〜H3を除きどれも同じであるとした青森大会の際の喜田委員長自身の言葉にもかかわらず、H5,H7以外の亜型は対象としないずさんさで、たまたま表面化しただけのH5のLPAIを分かった範囲で徹底淘汰してもHPAIの場合と違って無意味に近いことは、少し調べれば分かることだ。同時にその陽性鶏群の持つ危険性を十分比較検証してからでも処分は遅くない筈である。
一部にウイルスを見つけたとしても、それがそこだけの問題か全国的な環境問題かはよくしらべてからでないと分からない。不顕性のLPAIが一カ所に止まって居るとするのは、あまりにも想像力欠如で、拡がってしまって居るとする方が自然である。
どっちにしても、先に予算を示して、ここまでなら補償が可能だ。ただしこれ以上は予算がないからコントロールせざるを得ないと有る程度は財政的なことも考えに入れて置くのでなければ最後には収拾がつかなくなるのは当然である。

一口にイタリアは1800万羽、オランダは3000万羽、アジアは1億4000万羽の死亡淘汰といっても、それだけで一国の経済が疲弊するほどの莫大な出費である。普段、顕微鏡だけを覗いて居る指導者たちに研究費以外の経済問題をとやかく云ってもラチが明くまい。せめて行政側がそれを補足していかなければならないのに、聞くところでは委員よりむしろ事務行政側にコントロール反対意向が強いと云う全く信じられない話が伝わって来るのである。それならば最初から云うように業界側は補償についてもっと担保をとって置かなければならなかった。
月並みな云い方だが、今のままでは国民の大切な税金をドブに捨てて居るようなものだ。危険、危険と比較検証もせずにいうが実際はヘビの子と同じかも知れないのである。

H17 9 14. I,SHINOHARA.