『鳥インフルエンザ問題の今後(100)』



9月の半ば、 そろそろHPAIへのカウントダウンが始まって居るのではとの仲間の声が聞こえ出した。流石に皆警戒している。鶏飼いにとっては日々の観察が基本で、どんな小さな異常も見逃すな。とベッドから檄を飛ばす。

日本ではインフルエンザウイルスは冬の間流行して、暖かくなると南半球に行ってしまう。そして抗体の無くなる秋になると、また人などに付いて少し変異して舞い戻って来る。一部はショウプの実験のように豚、ミミズなど環境中を移動していると考えられて来た。だから夏は流行は無いと。ところが今年は沖縄で流行が起こった。流行期のない亜熱帯地方は抗体保有がバラバラだから小流行は何時でも起きるので、その方面に旅行する時は夏でも予防注射を受ける。平均気温が上がって沖縄でもそんなふうになったかと報じられた。
鳥フルも基本的には同じ動きだが、鳥に付いての移動だから南半球でなく北に帰る。夏の間は抗体だけだがこれからは人間と同じようにウイルスが戻って来る。
夏の間に始めたサーベイランスにうちに来る医者達は疑問を呈した。「今の時期、ウイルスはいないぜ、鶏には居るのかい?」そういえばそうであった。居ないのが普通かもしれない。
それにしても、今度の茨城のように、全鶏舎が陽性なら、(99)の伜の受け売り説明のようにもなるが、人間のインフルエンザでも抗体の消え方が早く、少しづつ変異するから毎年やられる場合もある。鶏のほうも、これから実際ウイルスが帰って来るし、居残り組もいるようだから。

これまでの教科書の記述では実際感染が起こるときは、飛沫核感染でゆっくりウイルス、抗体出現と繰り返しながら鶏舎内を一巡し、その間に強毒に変異することがあり、中でもH5,H7はその危険性が高い(河岡教授)ので全く油断が出来ないと教えられてきた。現にカナダだったか同一鶏舎内でHPAIとLPAIの両方が見つかった例があったというように、その変異のさまを裏付けた話があった。
茨城の話に戻れば、ほとんどが陽性というだけで、人間の医者の考えではウイルスは見つけても居ない時期に大騒ぎするのはおかしいということもあるから、これが変異するわけでもなく、他の方がよっぽど危ないとするほうが理屈にあっている。実際は今後の発生と茨城は直接関係ないとしたほうがいいと現場の私達は思う。
鳥フルが変異しやすいのは、ウイルスの性質と共に、その感染速度が遅く、抗体の出来方にばらつきがあることも一因とされるなら、ウインドレスだと空気の対流で、全群にあっと云う間に感染が成立し、且つ鶏一羽辺りのウイルス付着量が少なく速やかに平均的な抗体をつくることで今度のことも説明できれば、やはり鳥フルに対しては有効だとの仮説が成り立ちそうである。

病気を実際に見つけるのはまず症状である。症状が分からないとそれこそ雲を掴むような話になってしまう。それを抜きにして、忍者ウイルスを追いかけるのは実際的でなく、平成11年の家衛試の報告書を見ても、特に地方にとっては無理のような気がする。
サーベイランス方法の見直しは是非必要である。症状を発見するのは養鶏場自身でないと無理で、それを信用しなければ話にならないだろう。必要な野鳥の調査をこそ国がやるべきだ。

H 17 9 13. I,SHINOHARA.