家畜の伝染病予防法第17条ではその病原体を根絶するために罹患家畜を殺処分することになっています。だから流行初期の段階ではこれ以外は考えられない必要な処置です。 ところが今回は全アジアに跨がる異常な大発生で、もはや殺処分では間に合わずどの国でもワクチンを使い始めています。それに殺処分はその補償に莫大な国費を必要とします。それはみな税金ですから無駄にすることは許されません。だからまずその病気が殺処分で根絶出来るかどうかの見通しを立てることが何よりも重要です。 例えば霞ケ浦の養殖鯉などはもともとコイヘルペスの根絶は不可能だったにもかかわらず、強行された訳で大きな税金の無駄使いとしてこれから糾弾されるべきです。こう云うのは法の立法趣旨精神を無視した国や県の脱法処置というべきでしょう。 トリインフルエンザに関しては我が国の学者の間で問題視され出したのは確かに30年近く前で出水の鶴が危ないということで私も見に行ったものです。それがいまだにワクチン行政の上でも臨床的にも生かされて居ないのは、その学者の人達があまりにもマニアックでありコレクターで有り過ぎたのではないかと皮肉な見方もしています。 その強毒トリインフルエンザも7年前から世界各地で散見されるようになり、やはり殺処分が繰り返され最終的にはワクチンで押さえざるを得なくなっています。日本の現状も次ぎの発生を見るまでも無く、繰り返すように周辺諸国を見渡すとき最早根絶は不可能で速やかにワクチンで防御し人間にとっても危険な鶏の発症を防ぐべきです。いまNBIから許可申請が出されているのはH5N2の不活化ワクチンでイタリアなどのH7亜型での報告などから(NBIシンポジウム)交差免疫が期待されるものです。 いずれにしても野外では不活化ワクチンは十分な時間的余裕をみて、重ね打ちをして十分中和抗体を上げてからでないと実験室内の成績があげられないことはニューカッスルのとき散々体験しました(ブースター効果)。だからある国のように駄目な鶏を埋けながら残す鶏にワクチンを打つのでは遅すぎます。一刻も早く準備すべきです。 しかし申請が許可されて実際それが使えるようになるのは一年以上かかるそうで恐らくウイルス侵入に間に合わないでしょう。(このところの業界の動きをみても西と東の卵価は西が1Kg30円も高く、流通に何らかの支障を来して居る証拠ですが、そのくせ静かなること林の如しで息をひそめている感じです。)これは行政の怠慢と言えるし、なぜかワクチンを認めようとしない我が国の学者事情ともいえる特殊な環境も大きな阻害要件だと現場の私たちは感じています。 そしてこのままの無防備な状態では、とても雛は導入出来ませんから時間的に一旦の廃業はやむを得ないと思っています。鶏が世界から居なくなる訳ではなく、まずそれが危険な発症をしないようにワクチンで抗体を持たせておくことで、糞へのウイルス排泄も減って人への感染も軽減されることが期待されるのに、ほんとに馬鹿な話だと思います。 また批判された中国のH9ウイルスとの細胞性免疫による交差免疫または相互干渉の存在は学者から否定されながらもフィールドでは早くから認められて居たもので生ワクチンが出て来たとき、利用出来る根拠になるものと期待出来ます。 H16 2 2 I, S |