『鳥インフルエンザ問題の今後(93)』



今日の午後予定されている寺門チームの検討会自体は7日の日本農業新聞の13面記事以上の進展がある筈もなくニセワクチン使用など現場から見れば技術的に不可能なことなので、そんな歪んだ、こっちの方が余程作為的な調査をどうこう云う気にもなれぬし無論期待もしていない。

それよりも昨日の養鶏業界2団体の農水省へのワクチン要求に伴う記者会見での訴えがどの程度理解されたかが気掛かりで直ぐ当たって見た。思った通りとはいえ、がっかりを通り越して危機感を持った。本当の危機を察知出来ない此の国の民意はかなりの低さだと断ぜざるを得ない。国側のこれまでの宣伝で、さなきだにワクチンは危険だと誤解をしている記者達にとって、農水の自爆テロに等しい偽ワクでっちあげは、ワクチン自体を否定することと、生産業者は信用が出来ず悪だと極め付ける二重の巧妙な手段ともなって、すっかり人口に膾炙してしまっている。明らかに国民の目を欺いて居る訳だが、これは此のままにして置けない由々しき大事である。

我田引水になるが、懸命に生産に従事する、養鶏業者は決して悪ではない。また皆が心配してくれるほど無知でもない。我々の「阿呆の鳥飼い」と違って、平均飼養数30万羽ともなれば、息子の一人位は獣医だし、専門の獣医も多い。鶏の病気のことは誰よりも分かって居る。それが最も多いのが茨城県である。もっと自ら主張して知らしむべしと思うのだが、根が農民で行政のような手練手管はもともと苦手だ。みすみすやられてしまうのは口惜しい限りだ。

国が今までの惰性でと云うより、いつも云う《清浄国論》の旗のもとで、その主張をにわかには変えないことは百も承知である。ただ今回の茨城の事態をこれまでの方針で打開出来るかと云えば、はっきりNOである。

その証拠に殺処分さえウインドレスにかこつけて回避せざるを得なかったではないか。自爆テロに等しい偽ワク疑惑を持ち出して批判を避けたではないか。茨城県はウインドレスの故を以て「おとりつぶし」は免れても、偽ワクの疑惑を持たれたままでは如何とも為し難い。県の養鶏協会こそ全業者を結集させて濡れ衣をはらし、一方で健全なワクチン行政を要求すべきではないのか。それそこでもう悪いイメージを散々植え付けられたワクチンへの忌避反応が記者達にも消費者にも出てしまう。

これから予想される真の恐怖にワクチン無しで立ち向かわざるを得ないとすれば、事実上業界は少なくとも一時的にはオランダ、イタリーのように消滅する。それを回避出来るのは国民の支持を得ることなのに、この有り様では業界のみならず、国民生活にとっても本当に由々しい事態だと思うのである。尤も食料全般に、この自給率の低さでは、鶏卵肉なんて全部輸入で沢山か。オランダもイタリーも一時は種卵もワクチン卵も無くなってしまったんだぜ。そんなことにならんようにとのカプアさんの忠告も此の国には届きそうもない。


H 17 9 9. I,SHINOHARA.