『鳥インフルエンザ問題の今後(92)』



台風一過の猛烈な暑さだ。どうしても処理を続ける現地のことを考えてしまうのは鶏の管理労働に携わって来た者の因果である。

昭和40年代初めのニューカッスル病騒ぎ以来、マレック氏病の猖獗はあったものの、鳥インフルエンザくらい恐れを持って迎えられた鶏病もない。それに他の疾病は適切なワクチンの使用によって、全く被害を受けないで済む。ある意味で鶏界全体が平和ボケの状態だったかも知れぬ。

今、世界中がHPAIそれ自体を持ったガンカモの南下という初めての事態に緊張して居る時、我が国も全神経を覚醒させてこれに当たらねばならぬのに、当局の策謀ともいえるワクチン騒ぎ(これは100%彼らによってもたらされたもの)によって事実上の思考停止状態に置かれてしまったことは、あたかも太平洋戦末期、不可侵条約を信じて、その備えを疎かにしたのと全く同じ状況であると認識すべきである。下らぬだけでは済まされない。

若し真に良識を持った国民が残って居るなら、この不毛の論議を止めて本当の危機に向けての備えを堅くするべきである。今下らぬニセワクチン論議(真のワクチン論議こそ必要)をもり立てようとする者があれば国民の良識をマヒさせる行為と等しいことを悟るべきである。

泥沼に入り込むのは小委員会だけで沢山だ。鶏界自体が検証して、技術的にも実際にも到底有り得ぬと否定し篩にかけたこの問題を、蒸し返し蒸し返し二度三度フルイに掛け直すのは思考停止以外の何物でもない。そのような業界の意見はこのホームページに多数寄せられて居る。その中には養鶏協会のHPにみるワクチン云々の文言を、農水の圧力に依るものと見て、禁じられたワクチンを用いるなどもともとあり得ぬことと抗議しているものがほとんどである。

ただ当シリーズとしては問題をあらぬ方向に誘導して、委員会などへの風当たりをはぐらかす意図のもとでの国のプロパガンダには一応反論もして置く必要もあるとの意見もあるところから最低の事柄だけには応じたに過ぎない。

アジアにまたがるバードフルーの最大の容疑者は《唐土の鳥》である。野外毒化したウイルスを運ぶ容疑者としてもまた彼らを除くことは出来ない。感染が県内に止まるのは、意識してそうして居るからである。これくらいで魔女狩りは専門の寺門チームに任せればいいではないか。

茨城は最大の養鶏県であり、業者は信頼に値する。官とか民間とかの信頼差問題ではなく、LPAIの監視は本来外からは無理で基本的にそれだけ難しいということだ。それがHPAIに変異する危険への監視はプロ中のプロである彼ら(多くの専門獣医も活動して居る)に任せるべきである。生兵法は大ケガの元と昔から云うではないか。


H 17 9 8. I,SHINOHARA.