『鳥インフルエンザ問題の今後(88)』



2日の小委員会はワクチン原因説を打ち出した。農水省は普段の慎重さに似ず、訴訟まで言及してこれをフォローした。今日の外電の中には日本のgovernmentの意向を、抜き出して報道しているところもある。どうなることか分からぬが後に引けないことは確か(exactly)である。

しかし今日も電話でのUさん、Kさん達の問いに若い者が「そんなに勝手にコピーを作り回るようなワクチンだったらメーカーは商売になりませんよ」と俗っぽく答えて居た。
「まあ、もとはどうあれ、これだけ勝手に増えていくのはいくら粗悪なものでもワクチンとは云えず、立派に野外毒です。感染が茨城県内に止まって居るとするのはワクチンに見せかける為の偽装に過ぎません。今回の陽性例も再調査の結果です。最初の調査は総て陰性でした。この違いは(1)技術的なものなのか(2)しきい値を下げた結果なのか(3)その間の新たな感染なのか、肝心な事は一切説明が有りません。これ以外の陰性とされたところの再調査、更に環境の調査をすることによってウイルスとの整合性が出て来る筈です。ここまでは、あくまで《清浄国論》を崩すまいとする明らかな国による情報操作です。それでもワクチンだと云い張るのなら、これだけの数の養鶏場が全部それぞれに接種したことになり、そんなことは有り得ないし、事実すべての農場が否定しています。
尚最近の議論の中には国が殊更《清浄国論》を強調しないこともあって、この大事な根幹部分を軽視した発言が目につきますが、農水の前任課長栗本さんの頃は、どんな有意義な議論も最後には「国の清浄国論を踏まえた立場は変わりません」と一蹴され続けて来たのです。単なる清浄国ではなく《清浄国論》で、国がこの旗印を降ろした事実はないのです。ごまかされてはいけないし昨日のことをもう忘れての議論では本当の議論になりません。」

こんな素人騙しのテクニックに引っ掛かる手合いは流石に居まいと思いきや、消費者団体の疑惑の目は、むしろ生産者側に注がれて家保、民間ラボによる自主検査を続けて来た真面目な養鶏場ほど疑われ、官側が検査を業者任せで放置した結果だとするような驚くべきコメントさえ見られて、プロパガンダの怖さをまざまざと見せつけられた思いである。

このようなLPAIの拡がりの現状に鑑み、それをコントロールする為にもワクチンの必要性を訴えて居た養鶏業界の足を掬うように、確かにワクチン問題を取り上げてやったぞ、とするような皮肉たっぷりで、見方によっては勝ち誇ったようにさえ見える小委員会の主張 と云うより詭弁は、流石にかえって墓穴を掘った形である。振り上げた拳は元には戻らない。

繰り返すように過去に溯って原因を追求することは、そのために組織された寺門チームがやればいいことであって、そこにワクチン疑惑があったことと、現状をどうするかという小委員会の立場はおのずと別である。そして茨城県に於ける現況は、常識で見ても到底ワクチンなどと云えるものではないこと位、当の小委員会の連中が先刻承知の筈である。それを農水自体がフォローして国民を騙すだけでなく、世界に向けて発信したことは、国辱的な行為であり世界の物笑いになりかねない。国内はともかく世界に向けて、その自国民を騙す意味での国のプロパガンダは流石に通用はすまい。かくなる上は世界の良識に期待するのみである。

ウインドレス鶏舎を防疫面で差別優遇した措置も喜田委員長自らが否定するコメントを当の2日の会議後出して居る。このことからも官側の本音は単に膨大過ぎる殺処分の量を、処理可能の線まで引き下げようとの姑息な意図に基づくものであることは誰の目にも明らかである。
ただ官側の主張そのものは当初から清浄国論の立場は変わらぬとして一貫している。産業側との対立はどの先進国の場合も見られるが、その場合も通常LPAIに対しては産業側は自衛の為のワクチンか補償かを要求し、政府側の懐具合でその何れかになるといわれ、日本のようにその両方を要求することは矢張り少しおかしい。業界の真の発展の為には、そのような甘えの構造を無くして、規模の大小ではなく業界としても個々の経営としても自立することが今後は大切であると思われる。

H 17 9 7. I, SHINOHARA