『鳥インフルエンザ問題の今後(79)』



今回の一連のLPAI陽性鶏摘発の当初、殺処分に反対したトップページの緊急提言を取り下げる気持ちは毛頭ない。

繰り返すように、発症の無い、陽性だけの鶏群を淘汰しようとする根拠は、《清浄国論》を掲げる国がそれに違背する形で使われたワクチン接種鶏を一罰百戒の意味で摘発しようという云わば不純な考えに基づいた規定に従った行為に他ならないからである。この主張は既に鶏卵肉情報8/25号に寄稿してある。従ってこの場合、ウイルスの発見はもともと想定していない。今回はそこに、たまたまわずかなウイルスを発見した。その時点で逆に自然のウイルス感染を疑い、尚且つ最初のA・K養鶏場主の真面目な性格を考慮に入れれば、規定の条文を作成する際想定したであろうワクチンの使用などないことがはっきりした筈である。しかるに、一部の不埒な噂を放置するだけでなく、それを助長するかのごとき官側の発言もマスコミ関係から漏れるなど、すべてに疑いの目を向けたまま、その不純な規定を適用して殺処分を始めたことから、その後の経過は残念ながら予め指摘しておいた通りになってしまった。これを予測して発言していたのは私の知る限り《とき》様(笹山登生の政策道場笹山登生の掲示板)だけである。

これらの判断はたびたび指摘するように、社会心理や経済にうとく無知に等しい研究室の微生物学者達にはもともと無理な仕事である。それでも専門家と称する連中での構成を、そこへの丸投げを常とする小泉政権下の官僚が固執するならば、せめて我々現場の事情にも通じて居る民間ラボなどの研究者も、それに加えるべきであった。

今、この憂うべき事態になって、さあ新しい適切な判断を、と求められたとき、それに応えることが可能な小委員会なら最初からこんなことならない。いま彼らはこの無限ともいえる鶏の虐殺の意味すら分からなくなっている。学者と称する人達の判断力は、先の鶏卵肉情報誌で普段は貴重な研究を発表されている北里大のT博士が、この期に及んでも小委員会の判断が正しかったと礼讚しているのをみても、いかにわれわれ現場と乖離しているか分かるというものである。

今、シベリア方面からの渡り鳥の南下を目前にして、同じ情報誌に、それを終戦時の混乱になぞらえて書かせて貰ったが、今度はお望み通り、きつい症状を伴った真のアウトブレークが来るのは必定である。その事態に実際に立ち入った時、無症状の鶏共を殺し続けた無意味さを幾ら反省しても遅い。


H17 9 2. I, SHINOHARA