『鳥インフルエンザ問題の今後(77)』



ようやく飼養現場でも納得出来るような感染状態になって来た。ここまで来れば、流石に不認可ワクチンの噂も消えるだろう。もともと発症無し、ウイルス無し、抗体のみのケースは行政側では規則を作った段階で不認可ワクチン使用を想定している。だからトリフル通達の最初に《ワクチン使用は疑似患畜として摘発する》むねうたって居る。従って行政としてはそこに責任を負わして問題を帰結させたい意向があり、そのようなリークを直接受けたとする信じられぬ情報すらあったとされる。

本来三点セット(臨床とウイルスの検出と抗体の検出)の二つまでを欠き、わずかな陽性反応だけで殺処分に踏み切る等の無茶が許される筈はない。我が国の感染研、動衛研の検出技術そのものは高く買うけれども、それらは必ずしも確立された技術ではない筈だ。況んや家保段階に於いておやである。

過去にもっと単純な雛白痢の検査でさえも、陽性反応だけで菌が出ないことで当時の家衛試に随分かけあったが、非特異反応と分かって居ても判定は覆らなかった。摘発基準に非特異反応に対する要件が無いのである。養鶏団体の国に対する要請で、地方の家保での検査段階でも国に合わせてHI試験に改めてくれと云って居るがこの非特異反応を含めたスクリーニング技術が伴わないと実施は困難だ。実際研究者達との話でも突き詰めると多くはどっちも納得しないのに、一応ありがとございましたと首を傾げての別れがほとんどだった。

AIウイルスの遺伝子の検出(PCR)やウイルスの分離もガンカモのように腸管に存在すると居場所が分かって居るなら未だしも、肝心の発症の無い鶏からの検出など困難に決まって居る。それでもいまのように陽性反応のみのケースはワクチン使用を想定した規則によって無条件に摘発対象にし、また行政自体がそれを匂わすようなリークをしないまでも、風評を放置して置くやりかたはワクチンに対する消費者の不安を放置して居るのと全く同じであり、そのようなあらぬ噂の火消しまでわれわれ現場がやらねばならぬとは呆れた状態で、これからも官側はこの全く不確かな根拠での殺処分を正当化するために、あらゆる汚い手を使って来ることが予想出来るのは、あながちペリカン文書などのアメリカ映画の見過ぎとばかり云えないのである。

H 17 8 31. I,SHINOHARA