『鳥インフルエンザ問題の今後(72)』



N.Y様 貴酬

お便りありがとう御座いました。 いつもいろいろ農業問題にも関心を持って戴き感謝致しております。 私自身も養鶏というより農業という立場を離れぬよう努力するつもりでおります。今後ともよろしくご指導下さるようお願い申し上げます。

ウインドレス鶏舎を最初にみたのは昭和30年代、狭山ケ原の曽田牧場の種鶏舎で陽圧式でした。後ホソヤ式陰圧鶏舎の見学会などを経て、私の回りでもウインドレスが多くなりました。
どちらの様式でも鶏舎内外の気圧差で換気を行うことに変わりはなく、陰圧で吸い込んでも、陽圧で吐き出しても、機関車の前引きか後押しかの違いで、空気の出入りする量自体は大差ないものとされています。

実は、本当は《とき》様(笹山登生の政策道場笹山登生の掲示板)の云われるように自然を知らぬばかばかしい事かもしれないと私自身思いますが、一応教えられて居る学術資料では鶏を発病させ得るウイルスの量をきめており例えばそれが100万個なら、舎外の野鳥の糞を吸い込んでも拡散して数を減らせば罹りにくくなるでしょうし、2、3ケで発病可能なら拡散することで数十万羽が感染可能にもなります。ところがいわゆる教科書には野鳥の糞から罹るのには10の5乗ものウイルス量が必要だとされ、それならば、陰陽どちらの形式でも拡散して吸い込むウインドレスは野外式に比べて安心だというのが論拠の一つです。実際は2、3ケで感染させるウイルスだっているかもしれないし、現に今度の奴がそれかも知れません。現場ではそう考えながら作業するのですが、教科書そのものは学術的に証明されないと書き換えられません。 そこが現場の悩みの種でもあります。

まあ、言葉で云えば10の5乗のウイルスのかたまりですが、実際は目に見えない微粉末で、ウイルスの世界のことを文字で表すと感覚的にとんでもない誤解を生じるおそれもあると思います。 私自身ウイルスの世界のことは 《そろり 新左衛門》の狂歌にある
蚊の流す涙の中の中島で いさごをとりて千 千に砕かん
という現実離れのレベルのことで、つい最近まで人間はウイルスの存在すら分からず素焼きを通ることの出来る「濾過性病原体」と称して居たくらいですから本当のことは何も分からないじゃないかとする、これも《とき》様の云われる通りとわたくしも思います。

ただ現場にあるものとして自分のスタンスをはっきり決めて置くことは大事で、この2年間ホームページに書き続けて居るそれも10年以上前に書き出した「農村パラダイス」の思想も現代の農村事情と相容れない面だらけでも、地球上にこれだけ飢えと貧困がのさばって居る現状をみれば、苦々しいことがあっても、60数億の人間がいる現実を考えたら量産指向もまたやむを得ないかなと思って居ます。
ご健康を祈り上げます 敬具。 H17 8 28

東松山市 東平 1709 篠原 一郎