『鳥インフルエンザ問題の今後(71)』



(70につづく) ウインドレス鶏舎に対しては、先日、鳥インフルエンザウイルス封じ込めに有効だと変な結論を出した委員会側の喜田教授も本当は批判的で、自然養鶏をやって居る人達を前に「ウインドレスは耐性菌が出来易く、、」などと云っていますが、これはナンセンス。ウインドレスでは抗菌剤や抗生物質を使って居るような誤解を招く許せない発言です。しかし資料によると養鶏関係にも、けっこうそのような薬が納められて居ますが、これは種鶏や雛育成関係のクリーニングに向けてのものです。従って卵や肉にそのようなものが含まれて居る恐れは全くありません。消費者などのワクチン反対論の中には、これらの薬とワクチンを同じように考えて居る誤解があります。その誤解を解くのは政府や学者達の仕事ですが現在の施策に都合がいいらしく黙ってとぼけて居ます。

ニセワクチン使用論の中には、実際ウイルスが出たこともあって生ワクチンではないかと云う人が居ます。ウインドレス鶏舎の内外は、かなり頻繁な消毒が行われて、飲水の消毒までやっています。だからワクチンを飲水でやることは出来ません。一方ウインドレス内でスプレーをやることは大変危険な行為で潜在しているいろいろのものが絡んで始末がつかなくなり、大規模経営がやれることでは有りません。
ウイルスが残って居るような海外の粗悪な死毒ワクチンはどうだとする話もありましたが、何百万羽分の量は膨大です。とても隠せるものではありません。

話があらぬ方向に飛んだけれど、わたしが云いたかったのは、今度のケースで官側の厳重な監視下で、最も信頼される業者のウインドレス鶏舎群の間で、数週間の内に感染が広まったとすると、空気と共に取り込んで拡散するウインドレスの機能がこれまでは有利とされていたものが 逆にウイルスをばらまいて感染を速める結果になったのかも知れないという疑問についてです。

これまで教えられて居た教科書の、鶏舎内でのAIウイルスの伝播様式は、AIウイルス自然宿主の渡り水禽が弱毒ウイルスを含んだ糞を落として、その中のたまたま10の5乗位の量のウイルスが鶏の呼吸器の粘膜などに取り付くと、その鶏を発症させることが出来、発症した鶏はそれ以上の沢山のウイルスを排泄してウイルスは舎内の鶏の間を循環しながら感染を繰り返し、ちょっとの変異で強毒株に変化するかも、と云うもので鶏舎を一巡するには、けっこう時間がかかるとされていました。ただ今度のように全く症状を出さないようなばあいの必要なウイルス量など知られておらず、そのウイルスの特性もあることでしょうが、案外少ない量での感染が可能なのでしょう。
(尤も日本の教科書の悪いところは、浅田農産の例など、何かから強毒株を直接受けて発症した例など、目の前に事実があっても学術的に解明されないうちは記述を乗せようとしない事で、少しも実際的では有りません。だから役にたたないことが多いのです。)

それが今回A鶏園の例では前回の検査が3週間前とすると、その時は総て陰性ですからその後感染し抗体が上がるまでに2週間を要するとすれば、それに先立つ、たった1週間くらいで厳重な消毒をくぐり抜けて全鶏舎に感染したことになります。これが事実なら教科書の書き換えもさることながら、委員会の評価と逆にウインドレスの危険性を際立たせる事になり、防疫への懸念は一層深まります。
これを委員会なり小委員会の人達がどう判断するかですが、なんといっても今回は、最初の家保の検査の陰性判断に始まって、その監視下での推移ですから間然とするところがなく、その通り認めるしかないでしょうね。

しかし、もともとウインドレスがトリフルに弱いのは、ウインドレスの本場オランダが一番こっぴどくやられたことでも分かりますし、先日紹介したプロメド情報でもカナダやアメリカの実際被害を受けたところの研究者達はそう口を揃えて居ます。今度の例で、やっぱりそれがほんとだったと云うことになれば先日の委員会の判断は物笑いの種です。だからそうならないように農水ともども知恵を絞るでしょうが、こんなことにあまり頭をつかってばかりいられても困ります。

それに実際に外国の例での感染の拡がる速さはものすごいそうで、あっと云う間だそうです。我々の教科書がくるっていただけなんですね。野外と違ってウインドレスの中はそれぞれ特異的な不活化ワクチンによる抗体しか有りませんから、一旦別のものが入ればひとたまりもないわけで、研究者によっては煙突見たいなウインドレスの中では、ウイルスの量さえあれば3週間あれば十分だよと云う人も大勢います。

まあ、ウイルスの性質にもよるでしょうがこんどのは確かに鶏に親和性が高くて罹り易い。弱毒タイプは、感染が遅いと云われて居たが、それはあくまで古い教科書の記述で、今度のはそれこそ2つか3つのウイルスで 簡単にうつる奴なんでしょう。だから皆が、それもなまじ分かってる人ほどワクチンだと思ってしまったのに違いないのです。実際未知のウイルスのなかには生ワクチンそっくりなのが居たって不思議はない訳で、もう我々の、その古い教科書は捨ててしまわなくてはなにも理解出来なくなってしまいそうです。何より目の前の事実を認めてかかることが大切だと思います。

あと何かにメキシコのワクチンの批判みたいなことが出て居ました。話題の?グアテマラの隣の国の話ですからちょっと触れます。メキシコ政府AI対策委員だったドクター ガルシアの話です。
メキシコでは最初6つの研究所に不活化オイルワクチン製造許可を与えたが、別の1つにポックスベクターの組み替えワクチン製造許可を与えた。このリコンビナントワクチン(生ワク)でインフルエンザウイルス感染は効果的にコントロールできるが生ワクだから当然抗体応答がよくない。メキシコの生産者はワクチンを接種すると抗体があがるのが当然(註、どこの国でも同じ)と考えており、これがリコンビナントが伸びない理由だった。というわけで、これからは様様なリコンビナントワクチンがメキシコに限らず、世界中で効果の限られた不活化ワクチンに代わって開発され使用されて行くでしょう。

最後にA鶏園のウイルス分離検査は陰性だったとの結果が発表された。とすると数週間前の家保の検査結果は事実上否定されたことになるのか。良かったと思う反面、混乱しても来る。

H 17 8 28. I, SHINOHARA