『鳥インフルエンザ問題の今後(70)』



ウインドウレス鶏舎に鳥インフルエンザを防ぐ機能があると、早とちりした対策委員会が苦し紛れの鳩首会談で、そのことを殺処分しない理由に上げて発表してしまったので、それについて一部のマスコミなどがそのまま無定見に取り上げたりして、消費者の誤解まで生じるようになりましたが、もともとは今度の件の当事者であるIさんなど、一部の素人評論家の説に便乗する形で、自場のウインドレス(業界ではこう呼びます、風無しになりますが)を宣伝されていましたから、それがそのまま受け取られて居た面もあり、そのことが委員会の面々の頭にあったものと思われます。

事実これまでの業界の教科書にはトリフルウイルスが一羽の鶏に感染するためには10の5乗ケというウイルス量が必要と書かれて居ました、したがってウインドレスに猛烈な勢いで吸い込まれたウイルスは散り散りに拡散されて鶏に取り付くことは不可能だと思われて居たのです。それが今回のA鶏園の事例が確認されますとたった数週間でウインドレス鶏舎間に感染が拡がったことになり、それが事実ならば教科書の書き換えが必要になります。つまり実際はもっとずっと少ないウイルス量で感染が可能なら、吸い込んで拡散されるウインドレスは最も危険な鶏舎になります。同じAIウイルスでも、一個でマウスを倒せるものから同じ亜型の組み合わせで50万倍のウイルスを必要とするものから全く無害のものまである訳で、古い教科書を後生大事に抱えて居るととんでもないことになりかねません。

ウインドレスは環境調節鶏舎とかノーマン鶏舎とか云われ、鶏の近代的大量飼育には欠かせなくなった鶏舎システムで隔絶の本来の意味は作業員に対してで、空気に対してではなく当然空気量はより多く必要とします。
皮肉なことにこのシステムは事伝染病に対してはワクチネーションの進歩に支えられて居ます。近年各種のワクチンは長足の進歩をとげ長期間免疫を保持出来るようになり、短く効率的になった鶏の経済寿命と相俟って、鶏舎収容前にワクチネーションを完成させておけば廃鶏で処分するときまでそのまま飼うことが可能になりました。反面途中で追加でワクチンを打つことは不可能です。このことからインフルエンザワクチンを許可する場合も育成中に組み込む形でないと実施不可能であることが分かると思います(開放型鶏舎は別)。同時にニセワクチンなど一旦鶏舎に収容してしまえばとても不可能なのです。

このようなウインドレスでも日常、卵や鶏糞は外に搬出しなければなりませんが、それには集卵ベルト、集糞ベルトが使われ、卵はGPセンターに、糞は処理場の運ばれます。一番の問題はそれらのベルト類の殺菌、殺虫で未だに解決はされて居ません、したがって野外の開放型鶏舎では全く問題とされない、単純な原虫やら外部寄生虫、それに大きな声では言えないネズミなどにも悩まされることになります。

このようにウインドレスはすくなくともその生理面で太陽光線がなくても、追加のワクチンが打てなくても、飼料やワクチンの長足の進歩に支えられて鶏卵肉の省力てき大量生産を可能とすることが出来るようになったのです。(つづく)

H 17 8 27. I,SHINOHARA