『鳥インフルエンザ問題の今後(69)』



実際に何か変化が起こるまで続けようと思って居たこのシリーズもいよいよ終わりに近づいたようだ。
さすがに今日のA鶏園の検査結果は衝撃的である。わずか数週間前の、同じ家保のゲル沈検査で総て陰性だったものが今回は44/50の割合で陽性ということは、新しい感染があり現在進行形でウイルスが残って居なければおかしくなる。また新しい大変な事態になりそうである。困ったことだ。

A鶏園は業界でも屈指の信用のある農場と聞いて居る。また家保の検査が、それぞれの検査法の特徴があるにしても基本的に信頼出来ないはずはない。とすればわずかの間の感染の拡がりは総てウイルス自体の性質とウインドウレス鶏舎の構造によるものと思わざるを得ない。

その経過から見れば、吸気孔から吸い込まれたウイルスは鶏舎一杯に急激に拡散し、あっと云う間に全群に感染して、排気口よりすみやかに排出されたということになり、それ以外の選択肢が考えられない。それにこれだけは確かなのは陰圧式の鶏舎なら猛烈な排気でウイルスが外に拡散することは避けられそうも無いことだ。ただいくら鶏に親和性の高いウイルスでもそんなにうまく平らに感染出来るのかという疑問が残るがそこが煙突構造のウインドウレスの怖さかも知れない、しかし一部で疑っているワクチン説は逆に不可能になった。はっきり野外毒である。グアテマラ株が直接日本に入るルートが考えられなくても、春先、黄砂の頃、偏西風に乗った野鳥にくっついて、外からは様子の分からぬ中国から侵入することだって有るかも知れない。兎に角100%の陰性から100%近い陽性に数週間でウインドウレス鶏舎間を渡り歩く感染速度は、農水省の言い分とは逆に、ウインドウレス構造の危険性を示唆するものと云えるだろう。そして、この鶏舎内での恐るべき拡散度合いは野外でも同じと考えれば、最早このウイルスを捕まえることは不可能であり、この確実な情況証拠をもとに国はその方針を速やかに変更すべきである。

さきのI農場の場合は、2カ月まえに搬入された中古鶏(農水新語であり、業界での呼び方はあくまで廃鶏である。廃鶏は病気の巣と云われ、普通は廃鶏を手間をかけてまで同一経営の農場に採卵目的で移すことは有り得ない。採算もとれず、それ以上に疾病、寄生虫の持ち込み、カニバリズム発生など危険過ぎて、われわれでも考えられない。それを何ゆえ天下のI農場ともあろうものが問題の此の時期に、茨城から埼玉へわざわざ移送したのか誰もが理解に苦しむところで、事実この説明のつかぬ所業によって起きた事態は、結果的にわが埼玉に重大な影響を与えたことになる。)とかで、すべてが?マークだったが今度の例は現在我が国で信頼度NO1の経営での、公的監視下での疑う余地の無い現在進行形であり、AIが我が国有数の養鶏大団地に入り込み拡散中である事は確実と云えそうである。

これまで度々もらして来たように、産卵ピークが出ないとする症例は実に多かったらしく、何かが絡んで居そうだというのは仲間同士の合言葉に近かった。前にも云ったように韓国の噂などからそれと疑う者もいたことは事実で、カプアさんの警告のように取り分け危ないのは養鶏密集地であることは間違いない。そこで一旦感染が起こればさながら燎原の火の如く拡がると脅かされていたから皆警戒はして居たと思うが敵はやはり予想外の機敏さで入り込んでしまった。この事態になっては、さすがにもう清浄国は無理で、理想的ウインドウレス農場での相次ぐ感染を見て、これ以上のバイオセキュリティのレベルアップは不可能に近く最早予防的ワクチンの使用しか方法がないのは明白である。

ただこれまでのワクチン要求の場面では、業界は常にそれと対極の補助金要求をともに掲げ、その後も業界自ら互助基金を創設するなどしてワクチン要求を専一先鋭化して来なかったきらいがある。この業界、悪く云うと、何でも彼でも補助金に結び付けようとするところがないでもない。相手の政治家もそうでワクチンの陳情に行ったら、話す前にいきなり分かった分かったと云われ、補助金の話に勘違いされて息子が憤慨したことがある。しかし繰り返すようにワクチンの要求と補償のそれが対極の位置にあることは世界の常識である。その認識が業界になくてはいつまで経ってもそれを強く要求することは出来ない。強く要求しなければ当局だって動けない。《たたけよ さらば 開かれん》であろう。

H 17 8 27. I, SHINOHARA