『鳥インフルエンザ問題の今後(68)』



【休日閑話 お勝手談義の紹介】

「陽性がまた出たね」
「ここは大農場を10カ所くらい持ってるイセさんと別の意味で、昔は家保の実地研修に使われたくらいの日本を代表する名門の養鶏場だよ」
「そんなところが何故?」
「業界では有名な専属の獣医さんも居て、診療部門も持って居るし、簡易検査は自分でもやるし、家保の検査も無事終わったばかりだったとある」
「何が問題なんだろう?」
「検査の精度と云うか、基準が示されていないんだ。家保ではAGPという方法でやるのだが、これは結果は確かでも、特に数値の低い方で感度が悪い。もう一つのHIテストのほうは低倍率の感度は抜群だが非特異反応と云って、健康な鶏が馴致というかたちで、自然に持って居る抗体に反応することがある為、その判別に技術を要するといわれ家保の人達がその技術を習得する必要があるとされているらしい」
「一長一短あるわけだな。しかし今回そのAGPで引っ掛からないものが、HIでは陽性とされる。しかもウイルス自体は出ないとすると、非特異反応ということも有り得るわけだな 」
「しかしそれを云い出すと国は始末が悪くなる。これまでの例でも、よほど国が都合の悪い場合はいざ知らず、それを認めたことはない」
「でも今度は国も困っているんだろ」
「そこへ逃げ込む可能性はある。しかし今度は検査した動衛検が黙っていまい」
「なるほど、難しいもんだね」
「だから本当は喜田さんの云う発症、抗体、ウイルスの3点セットをそろえる必要があるんだな。国の方針があまりにも行き当たりばったりだからこういうことになる」
「話しを聞いて居ると悪いのは、みんな国だと云うことになりそうだね」
「ところがそうとばかりも云えない。国がこの期に及んでも《清浄国論》の旗を降ろさない訳は、もともと生産者側との合意があるんだよ」
「ああ、聞いたことがある。国内の農業を保護するため輸入国に難癖をつけて、そこからの輸入を阻止しようという政策だね?」
「よく知ってるね、だから養鶏団体だって自分達の尻に火がつくまでワクチンに反対して居た位なんだよ。自分の国でワクチンを使えば、ワクチンを使った外国産品を阻止出来なくなるからね」
「本音はそんなところだったのか、それが分かって居て、お前が国の清浄国論を非難するというのも、なんか口裏を合わしてる感じでうさん臭いね」
「非難するほうだって国だって、小委員会の連中だって本当は分かって居るのさ。その証拠に委員長の喜田さんだって外で持論を云うときはまるっきり別のことを云って居るだろ。実際、日本中の自然養鶏の人達は、その喜田さんの《自然養鶏大いにけっこう。要はウイルスと仲良くすることです》という言葉を頼りに鶏を飼っているようなもんだよ」
「何だい、みんなが知っててののしり合ってるんじゃラチがあくわけない。で此の際どうすればいいと思う?」
「ここまで来たら農水の立場を理解する必要もある。BSE問題でも、国とすればアメリカとの約束事もあって本音は早く解禁したがっている。ところが食品安全委員会がうんと云わない。食肉業界も宮城の牛タン組合も必死の陳情を繰り返して居るが、事実上消費者も生産者もそれぞれの立場で輸入に反対しているので、さすがに国としても押し切って動く訳には行かない。良い悪いは別でそういう仕組みだと云うことだ。まあAI問題とBSE問題は違うが、どっちも国や行政の一存では行かないということだ。《貧乏人は麦を食え》の一喝ですむ時代ではない」
「そんなことくらい俺だって分かってるよ、じれったいね。どうすりゃいいって聞いてるんだ」
「まあそう怒るな、筋道を立てて考えれば、国は生産者のためを思って清浄国論を守っているんだろ?なら生産者側がはっきりもう結構です。外国製品とは自分達で競争して行きます。というべきで農業の自立とはそういう事なんだよ。ところがJAをはじめ、そういうのはあくまで少数派だ。かく云うわたしが昔から、村八分でいるのも、それを主張し続けているからなんだよ。彼奴の云うこと聞いてると助成も補助も受けられない、それじゃあ農業はやって行けないと云う訳だ。此の立場は養鶏団体だって同じこと。国に楯突いてやれる訳がない。皆大なり小なり制度資金などの恩恵を受けてる立場だからね。」
「すると、とどのつまりはなにかい?はっきりそう訴えない業者が悪いって訳かい?」
「うーん」と返事に窮して居る。

H 17 8 26. I, SHINOHARA