『鳥インフルエンザ問題の今後(60)』



昨日までは、北からの渡り鳥がH5N1に感染して飛来し、直接強毒タイプのウイルスを拡散させる強い懸念を、世界三機関や学会の常識にも逆らうかたちで飼養現場から言うことに、いささかの躊躇もあったが、今日はそれを現実のものとして捉える各国の報道に接してむしろその変化の早さに驚かされる。

例えば、野鳥と湿地帯についてのバイオロジストDr Ruth Cromieは感染している多くの渡り鳥が、途中で死ぬだろうからヨーロッパへのウイルスの拡がりは、多くの人達が恐れて居るよりは遅れるかも知れないと云ったり、オランダ、ドイツなど現実に野外の鶏を屋内に隔離して強毒感染を防ぐ指令を明日にでも実行しようとしている、と報じたりして居る。更にはウイルスの感染はガンカモだけでなく、同時にシベリアから各地に移動するツルなど(waders)脚長族の野鳥でも危険視されている(ジェンマ コリンズの追加報告に記載)とすれば、ツルの集団越冬地を抱える我が国としても重大な関心を寄せなければなるまい。
また、あれだけ動物愛護の観点から運動場付き鶏舎に国策として固執してきたヨーロッパの各国が、いち早く家禽を屋内に退避させる方向に転じたということは、彼らがこの度のトリフル情勢の変化を、如何に重大視しているかの証左であろう。

過去のAI対策で最初に全面的ワクチネーションを導入して、やりかたが杜撰だと我が国などで非難されて来たメキシコは、実は危険な我々のような小規模経営の鶏を総て淘汰してからワクチンを始めた事実を知るべきで、我々自然型養鶏は来るべきトリフルの来襲のまえには世界各国の対策で見ても、全く無力で危険であることを誰よりもわれわれ自身が知るべきであると思う。

シベリア、カザフスタンさらにモンゴルと自然宿主を巻き込んで感染を拡げるH5N1に対して、いまさら関係学会にお伺いを立てて居る暇はなく、我が国ももう家畜疾病予防小委員会は解散すべきで、今回の世界的情勢を前に彼らでは荷が重すぎる。一刻も早く研究者の立場に戻すべきであって、第一に彼ら自身がそう考えないのがおかしい。と同時に我々も、いざ緊急事態というときには、国策にそって経営をたたむことも躊躇すべきでない。

然し乍らそれ以前に前記報告でも云うとおり、政府に対してcontrol measureをステップアップするよう強要すべきで、全面的ワクチンの接種実施は、もう世界の常識になるだろうくらいの 先見性をもって行われるべきである。

しかし悲しいかな、その実態は無認可ワクチンの噂に振り回されたり、当の被害農場にとっては死活問題でも、世界を揺るがす緊急事態の前では重箱の隅を突つくようなLPAIのかすかな痕跡を追いかけるさして意味のない鶏の虐殺を、これ見よがしに続けるとあっては、いずれ世界の物笑いになりかねない世紀の愚行であることを歴史が証明するだろう。

H 17 8 21 . I, SHINOHARA