『鳥インフルエンザ問題の今後(52)』



あえてグアテマラ株陰謀説までは採らないが、今回の茨城の事例を矮小化しようとする意識が清浄国を標榜する官側とそれを支持する関係者の間で厳に存在することだけは確かである。

それに伴う全国規模のサーベイランスも、その方向で進められ、その結果を消費者と生産者双方の沈静化(calm down)につなげる努力が一致して為されるだろうということも十分推察出来る。しかし仮にそのような一時的安心感が根本的に国民の不安を解消出来るかといえば、そんなことは有り得ない。

現にここ数日のトリフル関連のニュースを見ても、ロシア、カザフスタンのH5N1による野鳥、家禽の大量死に加えてモンゴルでの白鳥、ガンカモの感染死、それに韓国でのH9の広範囲浸潤の疑い、これらがこの秋以降、渡り鳥の渡来と同時に我が国に押し寄せる悪夢を払拭するのは生産現場とすれば困難である。少なく共、目先の時間稼ぎをやっておけば、あとは何とかなるという見通しが立って居ればそんなに恐れることはないかも知れないが、何の具体的方策も無いまま、敵を迎え撃つ心情は、生きた心地さえしない。

昨日、検査の家保の人達とも話したが、仮に個人的に今回の調査結果が陰性であっても、陽性が出れば全群を淘汰するという方針のもとでは、特異型ワクチンは無論のこと、鶏の抵抗力を増すための一切の馴致、フィードバックの方法も事実上否定され、ひたすら隔離と消毒によるバイオセキュリティのみで養鶏場内の清浄化を計る方策は、環境中のウイルス浸潤のない初期の段階での対策としては最も効果的であるとされたが、最近のような周辺国の状態では、最早ウイルスと共存する方向に転換せざるを得ないだろうし、それには鶏の抵抗力を高めるべく、あらゆる免疫機能を活性化させる努力をすべきだが、現在の国の指導方針は、それらをすべて封じてしまう方向であり、まさに《とき》様の云われる通りである。

そして本来ウイルスの絶滅など不可能で、それとの共存を図るべきだとの本音は当然、喜田教授達もみな持論とするところなのに、中国の反日教育ではないが、指導者の表面的言動に惑わされて、本質的理解が出来ぬまま、つまりは一向に啓蒙されぬまま国民も業界自身もあるという事実が、危険の迫った、この期に及んでさえもあるじれったさが、ついつい過激な主張となって顰蹙をも買うのである。

いっそのこと国性爺合戦の一場面のように、雲上で下界のさまを烏鷺の戦いになぞらえて見下ろして居る仙人のつもりで、この危ない2、3年は、愚にもつかないゴマメの歯軋りは止めて、少し気楽に業界の外から眺めて居たい衝動に駆られることもしばしばだが、他方、日本人のメンタリティからは、隣と同じなら殺されても文句は云わず一致団結して事にあたる美徳に甘んじなければ村社会では生きて行けないと諭されることもまたしばしばである。

H 17 8 10. I,SHONOHARA