『鳥インフルエンザ問題の今後(50)』



鳥インフルエンザに対する養鶏場の全国的サーベイランスは粛々と進められているらしいが、わが家でもこの9日、検体を提供する。一応環境から隔絶された形のウインドウレス鶏舎以外は、環境を変えるほどの消毒は返って害があるので自然環境に順応せざるを得ず、環境中にウイルスが存在すれば馴致させていく形にもなる。もともと鳥インフルエンザの性格からは、日本だけという狭義の捉え方をするべきでなく、度々云うように、パンデミックは数日で世界中に、トリフルの突発は一養鶏場中心と便利に使い分けるのは恣意的に過ぎるというものだから、全アジアにウイルス汚染が広がれば日本もそしてわが家も、と考えるのが順当だと思う。どっちみちその状態だと何時かは陽転するに違いない。

今回のサーベイランスが未承認ワクチンの摘発目的で行われるなどというまことしやかな噂が立つのも、これがH5,H7の陽性鶏の殺処分だけという、全く無意味な形で、しかも本来的ディスクローズではなしに、ウオンテッド(逮捕)目的に行われているからにほかならない。

要するにウイルスの環境汚染の責任を養鶏場に押し付けて、陽性というだけで逮捕、鶏は死刑と、恫喝に近い図式を、外ならぬ養鶏協会が自ら望んだというのが未だによく分からないのだが、やはり日本は清浄国であるとした国の立場を100%受け入れているからに違いない。そして各地方の陰性報告が続くことによってその立場が公式見解として証明されれば、取り敢えずはそれでいいんだということだろうか。しかし金融危機と同じで問題の先送りは将来の被害をますます大きくしかねないと思う。

いろいろ情報が錯綜するなか、仮に目出度く清浄国が立証出来ても、鶏に親和性が高いとされたウイルスはどこへ消えたのかなどの疑念とともに、周辺国の情報からも、この冬に向けての全国の養鶏場の恐怖感が薄らぐことはなさそうである。

兎に角現状では当局からの必要な情報はほとんど明らかにされない。その一例が、某県で検出されたウイルスはH5ではなかったと知らされるだけといった具合だ。97年の家衛試の調査でも検査結果そのものではゲル内沈降反応よりはるかに低倍率での感度が良いとされるHI試験で8倍以上を陽性とする形でも東北以西でわずか数%しか引っ掛からないということは、発症を伴わない鶏での検査がいかに難しいかを物語っていると思う。従って文章としてはその点を考慮してか、それでも東北以西に広く存在すると書かれている(但しH1,H3)。

ひるがえって、仮にわが家の検査結果が陽性になろうとも、別に不認可ワクチンを使った訳でもなく自然の環境に近い形であるから、実際に環境のウイルス汚染があればやむを得まい。一旦自然宿主のもとを飛び出したウイルスが再び帰去来(帰りなんいざ)をきめこむことはないだろうし、実際の被害が拡大することで将来的に我が国も、ワクチンによって環境中のウイルスをコントロールせざるを得なくなるのは明白だろうから、その時までやり過ごす方がむしろ利口なやりかたかも知れない。しかし養鶏場のホームページなどでは相変わらずわが家は大丈夫ですとする主張がほとんどで、生産物の安全性を強調しながら政府の云うことを信用して経営を続ける以外に方法は無さそうである。

H 17 8 7. I, SHINOHARA