『鳥インフルエンザ問題の今後(47)』



度々書いたように、私自身昭和30年代に雛白痢の非特異反応で13−30号系の種鶏を菌が出ないまま全廃した(させられた)経験を持って居る。従って菌やウイルスが出ない、或いは症状のない陽性反応には強い疑念を抱いて居る。だから小委員会での喜田委員長の3点セット発言に強い関心を持った。

因にHIで調べると、免疫血清によっては非特異的に反応を示す場合があるとの記述にぶつかるし、AGP反応のほうは感度は低いが比較的高い信頼性を有するとしながら、それを書いている動衛研自体は相変わらずHIを使って居る。また遺伝子分析技術の大革命といわれるPCR法についても専門誌でしらべると絶対的ではなく目的によってはウイルス分離も併用するべきだとしている。何れにしてもその元にあるのは臨床症状であり、これらを総合的に勘案すると喜田発言の通りになる。

鳥インフルエンザウイルスは喜田さんによれば2週間、他の文献でも3週間程度で、抗体が上がると居なくなるというやっかいさだ。強毒型ならば症状がはっきりするが、今回のような弱毒型では肝心の元があやふやだ。にも係わらず茨城県では、事実上抗体だけで拙速ともいえる殺処分に踏み切った。繰り返すように非特異反応に苦しめられ、そのくせ非特異的な抗体に期待するわが家としては目を疑うようなやり方である。これで問題とはならないのだろうか。実はこんな学術的な問題が現場と密接に関係するのである。

鶏を殺処分する重大な決定をするとき実際は総合的に誰がそれを判断するのだろうか。いやさプロデューサーなりコーディネーターはいるのだろうか。

ただ検査をして疑わしいものを殺処分する。それだけで良いのか。実際に被害当事者となった場合はそれらを明らかにするために根拠がしめされぬ場合は行政訴訟ではっきりさせる必要があり、その積もりであるし、そのためにも繰り返すように某国の不認可ワクチン問題など論外である。

今日だけでも情報は錯綜していて、何が何だかよく分からない。ネット新聞などPCRが陰性のまま殺処分になったり、逆にPCRが陰性だとして制限を解かれたとしてあったりする。尤もフイリピンのトリフル記事に至ってはまるで判じ物だ。

やはりこんなときこそ喜田さんや大槻さんに出て来て貰って、きちんとした責任ある話をして貰いたい。養鶏業界はカームダウンし、消費者は人間の安全の為には鶏の犠牲は仕方がないというのが大かたの考えらしいという。マスコミによる風評を業界も当局も気にするが、そのマスコミにもそっぽを向かれたかたちで、業界とすればむしろ危険な徴候だとは思わないのだろうか。

こんなことを続けていると卵の消費も確実に落ちて来るのは明白だ。効いて来ない筈がないしその徴候はお客さんの言動から見えて来て居る。

農業新聞がBSEや鳥インフルエンザ問題でこれからの畜産は変わるだろうと書いたが、一体どう変わると云うんだろう、不安定になるだけじゃないか。

殺処分が仕方がないとすれば、それが唯一の選択肢だという確かな学術的根拠を頭の悪いわれわれ現場の人間に分かるようにかみ砕いて説明して貰いたい。知らしむべからず的黒塗り手法では到底納得出来そうにない。

H 17 8 1. I,SHINOHARA