『鳥インフルエンザ問題の今後(46)』



アジアンデッドリーバードフルーとして紹介された本命のH5N1より一足早く韓国から中国にかけてHPAIとしての突発を交えながら流行したH9N2はマイルド化しているものの相変わらず広がり続け、韓国などこれへのワクチン対応を迫られている感じだ。

日本も当然、それらの情報をもとに、隣国として対策をたてねばなるまいと思っていたら急にH5N2がLPAIとして出現した。いま茨城県はその陽性鶏を片端から摘発淘汰している。この状況は少し皮肉っぽく云えば、喜田さんのワクチンが完成する2年後まで続くのだろう。その間、全国的サーベイランスが実施されることになったが、その対象はあくまでEUの92/40に準拠した亜型としてのHPAIで、現在続けられている摘発淘汰とともに、これでは鶏の犠牲を増やすだけで実際の防疫効果はゼロに等しい。それらの疑問を列挙する。

(1)92/40ECは基準が古すぎ近隣諸国の実情を全く考慮していない。
(2)今回のH5N2は臨床的には典型的LPAIとしの出現である。向後これがHPAIに変異することを恐れての淘汰ならば同じ危険性を他の亜型に対しても考慮しななければ効果がないのにサーベイランスでは対象外である。
(3)LPAIの浸潤は環境汚染によるもので発生源を押さえるの愚は世界各国で立証済みである。ウイルスはたかだか2、3週間で抗体を残し環境中に飛び去る。この意味で陽性鶏群中に僅かに残っているかも知れないウイルスを捉える為に、全群を淘汰するのは単なる殺戮に過ぎない。
(4)今回の摘発淘汰は喜田さん自身の云われる臨床症状、抗体、ウイルスの3点セットを全く考慮していない。
(5)国は鶏の犠牲数までオランダ、イタリアなどEC各国に準拠しようと考えているふしがある。浅田農産の24万羽くらいでワクチンの許可など出来ないとする発言は研究者共々随所に見られた。とすれば数千万羽の犠牲の上でなくてはワクチンの認可は考えないだろう。しかし絶滅は不可能に近いから、いずれはワクチンに頼らざるを得ない。
(6)アンケートによると生産者、消費者ともワクチンを危険視する人の割合は50%近い。この期に及んでの生産者のカームダウンは御用学者達の比較対照しないままの一方的ワクチン危険論に拠るところが大きい。一方の消費者へはワクチンと抗菌剤、抗生物質を混同した誤解を解く努力をせぬまま寧ろ放置している、 などなど。

何れにしてもHPAIの突発は淘汰、LPAIの浸潤はワクチンコントロールというのは世界の常識である。それが未だにLPAI対策さえ全く出来ていないわが国は最初のほうで述べたように20年遅れて居る。WHOが警告するジャカルタの危機も、韓国事情も全く無視して時代遅れのLPAI殺戮を繰り返し、歴史に学ばず失敗を繰り返そうとしている我が国は92/40ECよりも更に遅れて居て20年遅れとする理由だ。

今度の茨城の事例は、わが家と同程度の農家に集中している。恐らく同じようなやり方なのだろう。もともとの喜田さんの云われるウイルスと仲良くしようという方針だ。不認可ワクチンなど論外だが、環境中のあらゆる勢力と既存のワクチンによる基礎免疫は精一杯利用しようとして、万一AIに侵入されても突発がないように心掛ける。その結果、ウイルスは抗体だけを残して飛び去る、これが理想だ。その意味でそれが有効に働くなら我々自身が遮二無二特異型ワクチンを欲しているわけではない。ところがそんな効果的な場合でも全群淘汰だとすればもう万事休すだ。

日本の場合はこのような養鶏農家とウインドレス企業養鶏場は混在している。考え方、対処法は相反しても、5キロ圏内に入れば一蓮托生である。ウインドレス鶏舎でのバイオセキュリティは特にHPAI侵入には有効だと思う。しかし環境汚染型のLPAIに対してはネズミ、ゴキブリ対策からして大変だ。それに一旦侵入すれば抵抗力のない分循環して仮説通りにHPAI化しないとも限らない。何だ彼だ云っても出荷先への影響はあるに決まって居る。

しかし当面は非特異的な免疫に頼って居る(実際有効かどうかは分からないが)開放鶏舎が問題なのは今回の発生の特徴と言える。最終的に症状が出なかったのは鶏側の理由とすれば将来、国の方針がまともになったときに有効だ。それを確認して行きたい。
後は前述の喜田さんのワクチンが認可されるのを待つとしよう。それにしても小委員会などでご本人がそれに言及されるとは学者もえげつないな。

H17 7 31. I,SHINOHARA