『鳥インフルエンザ問題の今後(44)』



情報のあまり伝わって来ない四川省より、多くの日本企業も進出して親しみの深いジャカルタ近郊での出来事は、風聞風評まで即座に届く身近な問題である。

今回の親子三人の事件は生鳥と全く接触のない、高級住宅地の住人で起きたことだけに、人での水平感染の懸念を一層持たせることにもなり「鳥インフルエンザが人に飛んだのは事実かどうか(それなら)最初の犠牲者は鶏に接する農夫であるべきなのに」と農業省のスポークスマンも困惑しているようだ。そこに四川省と同時にジャカルタ近郊での豚の屠殺情報が出たから、もう勘弁して欲しいと思っていたら今日はその近くでH5N1によるchicken dropが発見され、ウエストジャバ州の農場の鶏でも発生があったと報じている。

もとより所謂ガセネタの類いは多いだろうし、だからといって中国事情にしても不確かな最初の外電より最終的な新華社通信のほうが信頼出来るとは誰もが思っていない。まあ風評の立たぬよう、なによりも自分自身の精神衛生のために一切見ざるもの清しをきめこむほうが利口なことは分かっているのだが 、今はわれわれ百姓の家庭でも、英文の外電が自動翻訳で直訳されて出て来る時代だから嫌でも見てしまう。便利で不便な世の中ではある。

ベトナム、タイ、カンボジアの地方の村と違って、付近には農夫も生きた鶏も居ない環境(ママ)のジャカルタ郊外の高級住宅地は道路にそってヤシの木が植えられ、それぞれの家は金属のフェンスで囲まれていて、そこで奥さん達が、その話題 にもちきりだという図は、日本の消費地でも起こり得ること、決して他国事ではない。

水海道での今回の続報については、その方向を選択した時点で想定されたことであり、どうにも致し方ない。ウイルス自体は宿主と命運を共にした訳ではなく、同じH5N2がメキシコで当初発見された際は産卵率はゼロになりそれは絶対に回復しなかったとガルシアさんの報告にあり、それだけ今回のものは鶏に親和性があり、摘発が困難で、より風土病化し易いだろうととは指導医の意見。とりあえず関東地方くらいの鶏は覚悟したほうがいいなとまたおどかされた。尤もこれはおどかされる以前に半ばあきらめている。

何しろ既に環境中に飛び散った、鶏と滅法仲の良いウイルスは喜田先生の云われる通りならば、一つの個体に2週間位づつとどまりながら抗体だけを残して個体から群れへと渡り歩きslaughterer達はその後を追いかけ、痕跡を消して歩いて改めて清浄化の旗を立てる、全く悪い冗談だと指導医も嘆く。

その悪夢は鶏がいるうちは延々と続く。そのうち気が向けば鶏相手ならなにも外の遺伝子の手を借りるまでもない、身内の変化で鶏くらいいつでも殺せる。ウイルス達はそんな調子で今日も飛び歩いているのだろう、うちにきたら明け渡すさ。

H 17 7 27. I, SHINOHARA