『鳥インフルエンザ問題の今後(35)』



全国の家畜保健衛生所に農水省の鶏を100羽ずつ預けて飼育して貰いそれをモニタリングしてAIの環境汚染を調べるとした案に早速幾つか反応があった。いやこれは案と云うより精一杯の皮肉の積もりだったから、こっちがあわてた。だって今度の全国調査は養鶏団体の陳情もあっておこなわれると云うし、茨城県は茨城県でわざわざそれを全農家に対してやるようにこれも陳情に行ったそうで、どうもそれらの意図というか効果の程が理解出来ないのでおちょくったような不謹慎極まる案だからだ。

先ず労力の割に今度の一斉調査が効果がないと思われるのは、何度も繰り返すように抗体も上がり難くく一カ所に止まる事なく直ぐ消えてしまう、喜田教授に云わせれば可愛いウイルス、そしてその実態は始末に悪い変幻自在の忍者ウイルスに対して、「とき様」が指摘されるように閉じこもりで動かぬ相手に対するような安易なやりかたで環境調査が出来る筈もないからだ。ある時点でたった10羽の抜き取りで発症もしていない全農家の鶏を調べたって、やすやすと捕まる相手でないことは皆先刻承知の筈、かなり馬鹿馬鹿しい労力と費用の浪費だ。しかも例えLPAIでも、見つかればすべて小委員会に掛けて殺すことを約束された形で、 説明会では慇懃な言い回しでもその実態はこれまた最大の恫喝をこめているだけでなく、たまたま偶然に遭遇した相手を殺すだけなのに全国調査で養鶏場のすべてのウイルスを殲滅し清浄国を保つ努力をしたと見せかけるような、 国や御用学者に都合の良い結論に持って行かれる危険を当然察知しなければならない業界団体や県が陳情までしてそれを要求することが理解出来なかったし、むしろ絶望したからである。

本当は国だって鶏をやたらに殺したくは無い筈だが繰り返すようにワクチンというコントロール手段を持たないからには見つけたら殺す以外なく、出来るだけくまなく調査する形で、偶然見つかれば殺すが、その実なるべく見つからない方法を採って居ると勘ぐらざるを得ないのである。何度も繰り返すが、そのような国や御用学者の狡さを見抜くのが我が国の、そして自分達の鶏を守る立場の業界団体ではないかと思うのだが。

ではそれを避けるには、そしてわが国のAI汚染の実態を明らかにするのに効果的な方法は?と実現性もないのに考えたのが国の鶏を家保に預ける案である。特に農水省の鶏とした訳は、AIという疾病の性格から豚コレラではあるまいし、せまい日本のなかで更に地区、地区を限定してかかる愚を避けて、せめて調査の段階では地方の責任を無くして掛かろうとする配慮からである。 もともと一群の中でも現れては消える変幻自在の相手に対しては最低でも100羽位をモニタリングして継続して調査しなくては捕まえることは出来まい。そして何よりも調査は見つけたら殺すぞという恫喝抜きでやらなければ正確を期することは出来ない。まさか一般の鶏を使って司法取引する訳にいかぬからこの場合国の鶏でなくてはならない。地方の責任を避ける上では地方所属の鶏でも困る。モニター鶏は毎日の検温と産卵調査だけでほとんどの異常は察知出来る。察知したら、家保自身もタッチせず、影響のある都道府県を素通りさせて鑑定は動衛研に直接持ち込む。結果は当の家保にも知らせず一旦は極秘のまま全国集計した後 速やかに公表する。その中にAI情報があれば、全国に向けて警報を発する。これを繰り返せばいい。つまり鶏の虐殺で地方経済にまで影響を与える処分と調査は切り離された形で行われないと正確を期することは出来ないと考えるからだ。

本当は皮肉や冗談でなく、真剣に実効のある施策が欲しい。

H17 7 15 . I,SHINOHARA