『鳥インフルエンザ問題の今後(34)』



敵を知り己を知れば百戦危うからずと孫子は云ったが、AIに対して何時迄も豚コレラ対策と同じ考えで居たのでは埒があきそうにない。その豚コレラでわが国自慢のワクチンもEND(+)(−)での野外毒との区別が敵の進化で分からなくなって来たと聞かされたが、基本的に発生点を押さえて撲滅しようとしてかかる今のAI対策では敵が捕まる訳がない。

今度の全国的サーベイランスの実施も喜田教授のいう3点セット理論で行けば、症状もなく痕跡も無い一般の養鶏場を対象にアトランダムに10羽ずつ位の調査をやっても余程運の悪い奴が捕まるくらいで、それにぶつかった養鶏場こそ良い災難である。そのようにスケープゴートを差し出すかたちでその辺りを殺戮し、それで表面的に清浄化を装うというやりかたはもうご破算に願いたい。やるなら本当に実効ある方法にすべきである。

パンデミックを想定するときは数日の間に世界中を駆け巡るだろうというのに、鶏の場合は繰り返すように豚コレラ並の考えである。H5N2の発生をどうこう云う前に、中国で野鳥がバタバタ死のうが、韓国でH9が蔓延しようがわが国は清浄国論のままだ。対策といえば、またH9が入らぬように鶏舎に網を張れ、である。馬鹿じゃないのかと思う。

文字通り日に千里を飛ぶ鳥が媒介するのだから、同じ亜型が世界を席巻する位あっと言う間だと思うが、そうはいかないのは、その地方地方に住み着いた原住民がいるからだ。研究者達は酷評するがメキシコがH5N2のままでいるのはコントロールだけで退治しないからだろうし、一方いろんな亜型が出没するイタリアはワクチンを使うまでに夫れ夫れを絶滅しようとして無理な退治をしたからだと思って居る。

現場を知らない研究者達は、絡んで出て来る他の疾病を必ず悪者扱いし、それがあると病勢が悪化するという。ところが多くの場合それらは互いに競合排除しようとしている。敵の敵は味方である。免疫の何たるかを知らない無知な我々現場でも、早くからそのことによってT細胞が増えるんではなどと云って来た。喜田教授に云わせればまさにナンセンスだろうが最近ではそんな現場のやり方を認めるような理論もどんどん出て来るようになった。学説なんて直ぐひっくりかえるが現場の体験はいつまでも 生きて居る。

これは戯れ言として聞いてもらいたいが、どっちみち環境中のウイルスを調べるなんて出来っこない。養鶏場の実態を調べようと思ったら家保に鶏を100羽づつ飼わせるべきだ。毎日体温を計り産卵を調べて居れば必ず異常は見つかる。検体は地方の責任を問わないように直接動衛研に集める。それだったら実態が分かるかも。

今度のサーベイランスは一見しらみつぶしに見えても変幻自在のAIウイルスが相手では、たまたま運悪くぶつかるかもしれない養鶏場相手のロシアンルーレットに思えてならない。弾に当たったらあきらめるよりないか。それに再起のことを考えると、それが条件の互助制度に参加する気は毛頭起きないのである。そんなこんなでリスクばかりが多くなる養鶏自体がジリ貧化していくのは避けられないように思われる。

H 17 6 14 . I,SHINOHARA