『鳥インフルエンザ問題の今後(]]X)』



昨年2月の浅田農産事件以来、日本の養鶏界は実に貴重な体験を重ねて来た。そして得られた結論は、当然の事ながら「発症は最大の敵」という事実である。この一年で中国は世界中の英知を集め、ワクチンで発症を防ぎ、その開発にも成功したと報じ、それについては眉唾の我が国を尻目にOIEの大勢をも動かしつつあり、中国はもはや清浄国だが日本は未だ汚染国だとさえのたまう。なにを云うのかと悔しがってもそれが進歩として捉えられる。法治国を標榜する我が国は、一度規制すると日進月歩の世界の情勢を追えずに、現場は地団駄踏むことになってしまう。BSEしかり、トリフルしかりでついにはOIEの中でも孤立しかねない状態に追い込まれかねない。

繰り返すがワクチンに反対する立場での研究者も、それが環境中のウイルスを減じ、発症を防ぎ、家畜衛生上も、消費者を落ち着かせるためにも有効であるとのポジティブ面は認めたうえで そのネガティブ面の懸念をせねばならぬのに、どの大会でも、国が予め用意した「清浄国論を踏まえての我が国の施策、立場は変わりません」とのメッセージに併せた主張に固執し、其の点、例えワクチン反対の立場でも、産業側の意見も取り入れた形の去年6月、国際シンポジュームでの小沢OIE名誉顧問のまとめ発言を我々は初めて評価したのであった。

我々現場がワクチンを主張するのは、トリフルを含めたインフルエンザ全体を人畜共通の究極の病と捉えて云うのであって、個々のH2N2が2年で消滅したとかH5N1が撲滅可能かなどと云って居るのではない。自然界のどのようなウイルスに対しても、わずかな知識しか持たぬ人類がこともあろうに大先輩のウイルスの撲滅を期して、いたずらな家禽の殺戮をくり返す愚をやめて人知の限りを尽くして、コントロールし慰撫する方向に努力すべきで、其のためのワクチンや免疫の研究を遅らすべきでないと云って居るのである。また本来そのような主張をされていた喜田教授なども、清浄国論の旗の元 ではチグハグな発言を繰り返される。他の先生方も同様で、かるがゆえに諸悪の根源は清浄国論にありと断ぜざるを得なくなったのである。

本来、無知蒙昧な養鶏現場から大上段に振りかぶったような頭でっかちな主張をすべきでないことは重々承知もし反省もしている。しかし仮に将来、最近のOIE案の方向のようにワクチンで発症を防げば清浄と見なすとするような環境下で、我が国でもワクチンが許可されるようになったとしても、モニター鶏の陽転を見た場合は全群処分される等、撲滅清浄化方針下での施策が条文として残ってしまえば、技術的にいくら可能でもアジュバントワクチン接種後の規制のように、全体の方向が変わった場合でも、にわかにはどうにもならないであろう我が国の常態を考えれば、一方で致命的なoutbreakを防ぐために姑息な手段である同定をさける迅速な処理が要求されることも覚悟せねばならず、現場からの声なき声も効果はなくても発すべきであるとも思って居る。

H17 4 1  I ,SHINOHARA