『鳥インフルエンザ問題の今後(]]V)』



渡り鳥が北に帰りはじめ時期的にはもう一息の所まで来たと少しはホッとする向きもある今日この頃、年明け後、卵価も久しぶりの好調さ。あまつさえ最近は鶏卵も過剰な栄養食品から機能食品として見直され、種々の効果が喧伝されるようになり、さながら鬼(Bird flu)の居ぬ間の浮かれようにも似て有り難さを通り越して苦々しく思うことさえある。何故なら我々が目指すものは、あくまで安全で美味い食品そのものだからである。機能として医学的に分かったとするものなど自然の摂理、本来の構造に比べれば九牛の一毛に等しくそれも直ぐひっくりかえされる。そんなものに捉われるより本質的な食品としての味を極めんとするのが我々卵作りの本道であると信ずる。

いま日経新聞に連載中の免疫学者、石坂公成先生の「私の履歴書」を養鶏の現場から興味深く読んで居る。そこから学者の学説にとらわれることなく長年の観察経験からくる現場の直感をも大事にすべきとの教訓が読み取れる(ScientistLibrery etc)。

やはり数日前の新聞で国立感染症研究所で初めて免疫増強材としてリン酸アルミニュウムを加えたインフルエンザワクチンを開発したとの記事が出た。鶏関係ではもう何十年も前からホルマリン、アルミニュウムゲルを加えたワクチンを作り、近年はより強力なオイルadjuvantワクチンが使われて居る。人間の場合アルミが脳に入ると痴呆を促進するから高温処理で卵油を作るナベはアルミを使ってはいけない(アルミ箔はどうなんだ)と云われて久しいが、その懸念があればアルミゲルは人間には使えないのではと心配してしまう。

昨日は育成場からヒナが入った。近年は実施されたワクチネーションプログラムの一覧表が必ず添付され、こちらはそれにもとずいて以後の追加を検討する。何しろ人間の場合は404病、鶏はそれ以上と云われ、しかも人ではさして意に介されぬ咳や鼻水や喘鳴が鶏の場合は淘汰の対象になるのだから堪ったものではない。にもかかわらず冬場のインフルエンザ発症期に人間のほうは今年は大流行だったが鶏のほうは他の病気も含めて公式発表は福岡のニューカッスル一件だけ、鶏の病気そのものが無くなった訳で文字通り御目出度い話ではある。

余談だが我が家の指導医の先生が初めてA型インフルエンザにやられた。最近は自分で簡単に検査出来るからやってみたらインフルエンザである。症状は気管支炎だけで熱はない。直ぐタミフルを飲んで一発で治った。奥様も同様とのこと、だから「お前、インフルエンザは必ず高熱が出るというのはあてにならないぞ」ということであった。

話をトリフルに戻せば基礎免疫としての生ワクも含め、育成中に10数種のワクチンを打ってくる我が国の現在の鶏の持つ種々の免疫抗体は昔のニューカッスル猖獗時の鶏や東南アジアの鶏の比ではない。そして的確なワクチネーションプログラムを持たなければたちまちクレームが付く育成場の現実を考えるとき、これからの養鶏経営では繰り返すように的確な基礎免疫付与と広い意味での交差免疫の観察を学界が認めて呉れない以上、現場で実際の効果を試行錯誤しながら探って行くより無いと考えて居る。

無為無策のまま現在の高卵価を奇貨として喜んで居る鳥飼いは何処にも居ない。

H 17 ,3,16 I,SINOHARA