『鳥インフルエンザ問題の今後(]]U)』



明けましておめでとうございます。
養鶏業界にとって今年が、新しい希望の年になるかどうかは一にも二にも鳥インフルエンザの動向にかかって居ると云って過言ではない。大つごもりの、にわかの大雪にはビックリした。鶏の呼吸器病には気温の急変が大敵である。昔は解放鶏舎ばかりだったから「雪の朝クーケクーケと鳴く鶏(コ)かな」ということがよくあった。気管支炎の発生である。今はワクチンさえ効いて居ればどうということはない。業界の鳥インフルエンザワクチン要求も、それとはいわば対極の、互助、補助事業のほうに来てしまった。やんぬるかなである。それも大事かも知れぬがワクチン要求という意味からは、もって瞑すべしと思って居る。

最早エンデミック化したと思われるH5N1に対して中国、東南アジア諸国は摘発淘汰を諦めワクチン接種に切り替えて居る。この方向がサイレントエピデミックをうながし、公衆衛生の危機、数週間で世界中に拡がるパンデミックにいたる危険があるというなら、そのために日本だけが鶏の犠牲を強いて清浄国を維持しても貿易協約上の意味だけしかないことになる。
しかし今のところ幸い国内の鳥インフルエンザ再発は伝えられて居ない。同時にいつもなら各地で散発する各種鶏病についても同様である。公式発表に限れば日本中から鶏の病気が無くなってしまった。まことにご同慶の至りというべきか。
去年は鶏も牛もインフルエンザやBSEで駄目になり唯一豚だけが無事でヘルシーだともてはやされた。そんなものである。

まじめな話に戻れば、各農場が浅田農産の事例に懲りて、管理上の監視を異常なまでに強化し摘発淘汰が速くなって居るのは事実のようだ。そのような場合、その農場周辺の汚染が10の何剰かになるまでは発症しないだろう。一部で2月以降を危険視している根拠はその辺にあるようだ。さすがに今年はだれも油断はして居ない。

もう一つ問題がある。一部であれだけ警告しているにもかかわらずニューカッスルワクチンの接種率が上がって居ない。ワクチネーションが命の育成場もオイルアジュバントの不活化ワクチンで2000倍以上の抗体価を持たせているが、それでさえ生ワクスプレーで鳴くことがある。気管支炎などを含め局所の免疫が足りないのだ。普段は散発発生で済んで居るニューカッスル病が間隙をついて大発生するのは鳥インフルエンザにやられた各国で経験済みである。今のように何故か公的情報まで消えてしまうから尚更危険なのである。 何度もいうがSARS騒ぎのとき都内の何処の病院も肺炎で発熱した患者を受け付けて呉れず、一般の肺炎患者も減った。実はこのとき長男のJC仲間が数人なんらかの発症をしたときの体験である。それぞれカロナールやスパラを処方してもらったらしい(笑)

情報の大切さは今度のスマトラ沖大津波でのテレビ画面で人々の無警戒さを目の当たりにして、改めて慄然とさせられたものである。情報が無ければ人々は平然としていられる。しかし実はそれが一番こわい。逆に去年の養鶏界は情報とは似て非な風評で甚大な被害を受けた。その意味からは情報の無いのは一面では天国と云えるかもしれない。
H 17 1 2 篠原 一郎