『鳥インフルエンザ問題の今後(]])』



薬事法で抗菌剤、抗生物質が使えなくなり採卵養鶏で事実上鶏病の治療が出来なくなってから久しい。と同時に効率が追求されて鶏の経済寿命が極端に短くなり概ね飼養期間は1年以内に縮まった。
厳しい農場では許容される産卵低下は3%程度ともいわれ、たとえ1コマでも何らかの発症が疑われればそのロットは即刻淘汰されるのが原則だ。将に疾病よりも疾い処分である。
特に呼吸器病の場合、鳥類は気嚢を持つ所から同時に生殖器官が犯され産卵低下を起こすため、病気の種類に係わらず即刻の淘汰が要求されることになる。呼吸器症候群の中にはマイコプラズマから気管支炎、喉頭気管炎、ニューカッスル病など多くの疾患があり、特にブタのPRRSではないがそれらが絡み合って きちんと判別出来ずどっちみち治療は不可能だから淘汰する以外方法はない。
そこへ昨今の鳥インフルエンザ騒ぎだ。しかしどう考えてもキチンと管理されている企業養鶏なら、何らかの病気が発症して鶏がバタバタ死ぬまで放って置くとは考えにくい。その上でそれを家保へ連絡して病性鑑定の結果を何日も待つなどという悠長なことはもともと有り得ない事だという。
その点では山口の例も浅田農産も、初期の、通常とわずかに異なる時点での、すばやい処置が出来なかったことがひそかに現場での問題点とされてきた。
当時の卵価安は戦略的企業養鶏にとってはシェア拡大の好機とされたにもかかわらず、その期間中に通常のローテーション以外に推定3000万羽が淘汰されたともいう。これをどう見るかは世人の勝手であるが、今年の冬を占う意味では無視出来ない事実である。

今年も公式発表は皆無だが実際には例年通り、いろいろな鶏病の発生は伝えられて来る。関東地方一部のILT,SHSなども気になるところだ。我が家では怪しい事例は直ぐ家保に連絡することになっている。しかし古来、精農は 草を見ずして草を取る として来た。現代の養鶏に置き換えれば病気が出てから発見したのでは遅いのである。それ以前の何らかの兆候を嗅ぎ取るにはこまめな観察以外ないのだが我が家ではどうも自信がない。                                       
確かによほどの甚急性の疾病ならいざ知らず、普通の病気なら飼料摂取量、産卵低下などの予兆を感じ取ることは出来る。実際に発症してからでは遅いから、それが許されるものかどうかは別にして 見ざるもの清し の段階で処分することになろうが直結で処理場を持たない我々はそれ以上どうすることも出来ないだろう。
実際問題として公的機関による鳥インフルエンザの摘発淘汰では同定までに時間が掛かりすぎ、その後の処理の稚拙さを見ても、とても防圧は出来そうにない。それでも表面上はうまくいったのは、日本の場合、うがち過ぎた見方ではあるが同時進行的に何千万羽もの卵価安自主的淘汰が行われたからだとするのが本当かも知れない。

しかし南東アジアの國のように、鶏を直接、財産とは見ない我が国でも、予期せぬ早期淘汰の連続は養鶏場にとって経済的に、やがてボデイブローのように効いて来るに違いない。