『鳥インフルエンザ問題の今後(]\)』



季節外れの大型台風23号、それにタイからの外電、我々鶏飼い百姓にとって将に《内憂外患こもごも来たる》である。

タイ政府が事ここに至っても鳥インフルエンザワクチンを許可しない態度について、さすがに世界中の國や関係機関が訝って居る。ProMED情報などを自分なりに訳してみてもそのことがひしひしと感じられる。
例えば家禽にワクチン接種することで鳥インフルエンザの潜在的流行が起こり、それが農場労働者、家族を危険にさらすことを当局は望まないからとするタイ政府高官の言い分も、インフルエンザの専門家達自身が、それは商業利害(commercial concerns)が大きな決定理由だと決めつけて(単語の意味こそsuspectだが)いることでも分かる。。実は我が国の堅持する《清浄国論》もその本音とするところは貿易利害であることは周知の事実であるところから、この際、本当に鳥インフルエンザを防圧するためならば、アジア全体の問題と捉えて我が国も協調すべきであると思う。

一方で我々が成功例だと位置付けるメキシコについては相変わらず、メキシコでのモニターされない形の広範囲な7年に及ぶ同一ワクチン接種が隣接のグアテマラとエルサルバドルでもウイルスが風土病化した一因だと信じると手厳しい(Suarez)。
確かに野外毒とワクチン株を区別するためにモニターすることは絶対条件とされるが、実際は従来手法では難しくなりつつあることが豚コレラのENDの場合も指摘されているし、素人考えながら前述の体験でも、いろいろムラがあることは専門家も指摘しているようである。(例、The use of unvaccinated sentinels and the serological and virological monitoring is spotty at best.)

しかし何度も繰り返すように伝えられるタイの惨状と、少なくとも強毒型発生と他の人畜での発症を押さえ込んで居るメキシコとでは、それに批判的な文章、例えば
Although the vaccine still prevents clinical disease, it no longer reduces the amount of virus shed by the chickens.
に接しても両者を比較すれば、それで十分成功ではないかと思わせるものである。

あまつさえ、もう一つのワクチン成功例、香港の場合も、テリトリーがせまいからだとかいろいろ難癖をつけてその情報を翻訳したがらない。(Hong Kong's experience is not easily translated to other countries, however.)
そしてこれまでのようなウイルス根絶の為と称しての家禽の大虐殺は、むしろ人間の思い上がりによる重大な失敗例(We don't want repeat the same mistake in which 400000chickens were killed here in 2003. an Indonesian said )として歴史に刻まれるかも知れない。

今年2月、タイでウンピョウが死んだ。今回のトラの大量死の間になにも改善された様子のないことを訝った論調もある。しかしこれも繰り返すように人間社会のことは獣医微生物学のようにはいかないものであることも教訓としていかなければなるまい。