『鳥インフルエンザ問題の今後(]Z)』



ADBF(後記)は最早タイ、ベトナムそれにおそらくは南中国においても、半ばendemic化し一向にcalm down(沈静化)しそうにない。もともと広範囲なepidemicが土着してしまったら、こんなやっかいな事はない(註、横文字は外電のまま)。犬、猫などのペットはいうにおよばずネズミ、ミミズに至る環境中のあらゆる生物が保毒の対象になる。ここにきてレセプターを特定する説そのものがあやしくなったとも聞く。自然界のことは、なまじっかな人知が及ばぬことくらい誰でも分かって居る事だ。たかだか天然痘を征服したくらいの人間が、こともあろうに変幻自在のインフルエンザウイルスを根絶しようとかかっているところに最大の間違いがあるのではないだろうか。

タイにしても、もっと素直にワクチンを使って環境中のウイルスを減らす努力をしていればメキシコのように少なくともHPAIの発生は防げたのではないか。ここへ来てどちらが成功かはっきりしてきたと思う。自然の脅威、その本質を見ずに、人間が定めた貿易上の協約などに捉らわれ利害だけで決めた方策がこんな結果になるのは当然だろう。そして、そのアジアで先進国、最大の輸入国としてそれを主導してきたのは外ならぬ日本である。アジアに位置する限りAsia´s deadly bird flu に対しては自国の清浄化を主張し輸入を制限し続ける我が国の態度はむしろ醜い限りである。その辺を見通せるすぐれた政治家、役人、それに研究者が見当たらないのはアジアにとって本当に不幸である。決して時代のせいではない、秀れた人物がいないだけなのだ。本当に嘆かわしい事である。

そんな折りも折り、農水省は10月15日またしてもAI対策意見交換会を開くという。もうそんな見え透いた、本当は何もやる気のない、これまでのようなかたち作りだけの対策ならやめたらどうだ。大東亜共栄圏などという大それた思想は過去にアジア各国に多大な被害を及ぼした。しかし、こと重大な感染症に関して自国さえ無事なら周辺諸国のことはどうでもいいとするような態度は繰り返すように決して誉められたものではない。実際に、これまでの人間のインフルエンザ対策としてのワクチン準備も周辺諸国の発生傾向を調べて、細かく型を合わせて準備してきた筈である。それが今回の鳥インフルエンザでは一転して自国の清浄だけを主張して周囲の状況に合わせようとしない。これではうまく行きっこないのは明らかではないか 。動物のワクチンだって過去の例では、まず緊急に接種して承認は翌年だったという事だって有るのだ。要は如何に効果的に実施して疾病を防御するかにある。

東アジアの深刻な事態を看過すべきではない。ワクチンをやるにしてもメキシコのように全面的に施すのでなければ意味のないことははっきりして来た。もしそれに不備があれば、より秀れた我が国のシステムを一刻も早く構築すべきである。対策会議をやるなら、もうその辺の対策であるべきだ。それなら大賛成である。
今度の事態はヨーロッパやアメリカの話ではなく、もっと身近かな日本を含めたアジアの問題であることを冒頭の外電4文字は示して居る。