ごまかしを見抜く常識を持とう



2002年5月15日、東大医科学研究所で開催された大規模なNBIテクニカル・シンポジウムでの警告が業界内でさえ全く無視されているのは驚きだ。その出席者のひとりである業界新聞が昨日届いたが逆向きの記事ばかりで改めてガッカリした。

WHOの「感染した動物はすべて殺処分」は たてまえとしてはそうだろう。しかし同時に彼らがいう未曾有の事態でもある。テクニカルに対応しなければ たてまえだけではどうにもならないところへ来てしまっている。まさにNBIの当時の指摘通りである。

清浄国を信じて大量の鶏肉類を輸入していたタイが大騒ぎとなり緊急に輸入を止めた。隠して居た彼国の政府が悪いというが、隠すより現れるという形でなければ都合の悪いことは表面化しないという常識を持つべきで、学者、研究者らの真面目な世界では有り得ないことかも知れないが、社会へ一歩踏み出せば、それがなければただの馬鹿だということになりかねない。馬鹿には政治は出来ないから隠すのは当然だったろうと私なら考える。

我が国の農水省のコメントが笑わせる。曰く タイからの輸入分くらいなら国産を増やすことでも対応出来る。 なにをか言わんやだ。どこまでノーテンキなのだ。ワクチンもしていない日本のにわとりに感染しないと思っているのかね。清浄国の旗を掲げて居ればウイルスが遠慮するとでもいうのかね。「旗は飛びくる弾丸に破るるほどこそ誉れなれ」の気概なのかも知れない。

今回、渡り鳥だけじゃなくてウイルス的(現代用語)にはタイから堂々と入って居たことが常識的には証明されたかたちだ。肉にくっついたくらいなら焼いて食えば影響ないそうだから一般消費者は心配しなくていいそうだが、ウイルスはスーパーに行けばいくらでも居そうだということだと、少なくとも清浄国の旗のもとにある鶏飼いは危なくてスーパーにも行けなくなる。いやさスーパーに搬入して帰ってくるだけでもウイルスはついてくるはずだから納入そのものが危険だと、直接被害を受け兼ねない鶏飼いなら常識で分かる筈。

昔は伊藤たい吉さんとか高橋広治さんとか鶏の専門家がいて総合的に指導し皆それについて行ったから常識的にみて大きな間違いはしでかさなかった。戦前、畜産の主任官だった私の親父はどこの県に行っても、高橋さんを講師に呼んだ。だからまず常識を踏まえて、相手をみて話をした。今の医者は病気をみて患者を見ないとよく批判されるが、養鶏界はまさにその通りで、その上だれも肝心の自分の目を持って居ない。

せっかくシンポジウムで良い話を聞いても、普通の常識のうえに立って判断できなければ、単なる文献止まりで現場で役にたてることが出来ない。世界を見て、まわりを見て、政府を見て、行政を見て、ひとつひとつの研究を見て、おのれを顧みて総合的に判断出来なければ、結局、鶏人ともに生き残ることは出来ないと思う。

タイではコレラにしていたというが鶏の症状は似ていても桿菌のコレラなら我々が顕微鏡で見たって分かる。そんな初歩的なゴマカシでもその政府が正式発表するまでは伝わって来ない。国としての表示も、卵のオヒヤ(冷蔵卵)扱い以上に、あてにならないことがあることも常識としてわきまえておく必要があるだろう。

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