「地方分権速報」(1999年1月分)

朝日新聞に掲載された地方分権に関する記事を、月単位でまとめて掲載してあります。

目次

○1/29分権委に骨格説明 地方自治法改正案 自治省
○1/29特例市制度、59市が対象 地方分権権限移譲
○1/27「減量政府」官は抵抗 省庁改革大綱を決定(時時刻刻)
○1/26「腐敗大国」への道(経済気象台)
○1/19地方再生こそ日本再生の切り札 富野暉一郎(論壇)
○1/17自治体、浮かぬ顔 鳥獣保護“分権”へ(時時刻刻)
○1/14三重・北川氏(知事 地方政治のリーダー)
○1/14サルで分かる分権の難しさ(記者席)
○1/9「官」の刷新へ(あふれろ民力:7 21世紀私たちは第1部)
○1/7NPO・NGOを知る10冊 
○1/3市民が技を鍛え始めた やわらかな社会をつくる(社説)

分権委に骨格説明 地方自治法改正案 自治省
年月日   1999年 1月29日

 自治省は28日開かれた地方分権推進委員会(諸井虔委員長)に地方自治法改正案の骨格を説明した。分権委の勧告を受けての改正で、国の機関委任事務が廃止され、自治体の仕事は自治体の裁量がある「自治事務」と国道管理など国が実施方法まで定める「法定受託事務」に分かれる。改正案骨格では、法定受託事務の定義が「国がその適正な処理を特に確保する必要があるもの」と、国の指示が強まりそうな表現になり、分権委側が懸念を示した。同改正案はさらに調整後、地方分権一括法案として、3月上旬に国会に出される。

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特例市制度、59市が対象 地方分権権限移譲
年月日   1999年 1月29日

 地方分権の受け皿として、都道府県から騒音や振動の規制地域の指定など13項目の事務権限移譲を受ける特例市制度が人口20万人以上の市に新設される。28日、自治省が地方分権推進委員会に説明した地方自治法改正案に盛り込まれた。1995年の国勢調査に基づき59市が対象となる。これらの市からの申請で指定される。
 移譲される権限にはこのほか、都市計画法に基づく開発行為の許可などもある。これで、市町村は権限レベルで、都道府県に近い指定市、保健所などを設置する中核市、特例市、一般の市町村の4段階になる。
 対象の市は次の通り。
 函館、青森、八戸、福島、盛岡、山形、前橋、高崎、船橋、松戸、柏、市川、市原、越谷、所沢、大宮、上尾、浦和、草加、春日部、川口、水戸、町田、府中(東京)、相模原、平塚、小田原、大和、厚木、茅ケ崎、藤沢、松本、甲府、福井、富士、沼津、清水、一宮、春日井、四日市、大津、八尾、吹田、東大阪、枚方、豊中、茨木、寝屋川、尼崎、宝塚、西宮、加古川、明石、呉、下関、徳島、佐世保、久留米、那覇

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「減量政府」官は抵抗 省庁改革大綱を決定(時時刻刻)
年月日   1999年 1月27日

 21世紀の中央省庁のあり方を描いた政府の大綱が26日決まった。政府は減量し小さく、国のかじ取りは官僚任せから政治主導に……。こんな近未来図が浮かんでくると、当然のように官僚は強く抵抗し、その作成過程で大綱は後退した。スリム化の前提となる地方分権や民営化も進んでいない。全身傷だらけの行革案だが、デンと官僚が真ん中に座った日本の経済や社会の仕組みは変わるのだろうか。それは国民にとってどういう意味を持つのだろうか。
 (10面に大綱要旨)
 ○「受け皿」減少に難色 スリム化、本当にできるの? 論議が必要
 「公務員を減らすことのみが目的で、それぞれの組織の本来の役割や必要性が議論されていない」。約4万5千人の職員を抱える国立病院・療養所が独立行政法人の対象に決まった26日、全日本国立医療労働組合(遠山亨委員長、組合員約3万2千人)は早速、撤回を求める声明を出した。
 少しでも財政支出を減らすための行政組織のスリム化。その中心が、病院や博物館、研究所などの部門を役所から切り離す独立行政法人化だ。
 対象となる組織はお金や人事を独立して扱うことができる。効率的な経営をすれば利潤がでる。それを独自に使うことができる。うまくいけば職員の給与が増える。しかし、失敗すれば職員数の削減につながる恐れもある。要は民間企業と同じような経営感覚をもってもらうのが狙いだ。
 大綱には84の機関や事務の独立行政法人化が盛り込まれた。政府の目標である「国家公務員を2000年度から10年間で25%削減」の「削減数」には、独立行政法人に移る職員数も含める。どれだけの職員をこの法人に移せるかがカギだ。
 ところが反対の動きは労組だけではない。約12万5千人の教員・職員を抱える国立大学は、独立行政法人の候補だった。しかし、文部省が難色を示し、最終結論は2003年までに先送りされた。
 文部省にとって、国立大学は本省の局長ポストに就けない「キャリア」官僚の受け皿。役所から国立大学を切り離すことは受け入れがたい話だった。同省幹部は「いざとなれば地元代議士が反対で立ち上がってくれる」と強気だ。
 独立行政法人化がうまくいけば、政府の財政支出が減り、回り回って国民の税負担が減るという効果も期待できる。しかし、国立病院などの経営が効率化された場合、直接の利用者に対するサービスはどう変わるのか。こうした視点からの議論はほとんどされていない。
 ○結果公表は不明確 政策評価制度の実効性は? 外からのチェックがカギ
 各省庁が自らの政策を評価するための組織をつくり、その結果を次の政策に反映させる――一見、画期的ともみえる制度の導入が大綱に盛り込まれている。
 具体的には、各省庁がそれぞれの政策評価を担当する「課」か、それ以上の組織をつくる。そして、個別の政策について「必要性、優先性、有効性という観点から改廃について評価する」としている。
 理屈の上では、政策や事業計画が国民にとって不必要と判断されれば中断することもありうる。事前の評価だけでなく、すでに予算化された事業でも、社会状況が変わって必要がないと判断されると廃止される仕組みだ。
 現在は総務庁の行政監察局が毎年、約20の政策などを調べ、無駄や改善すべき点などがあれば、担当する省庁に勧告している。しかし、勧告に強制力はなく、罰則もない。実効性も乏しかった。
 現行制度に比べれば、「政策評価制度」はある程度の効果が期待できるかもしれない。
 例えば利用者の増加が見込めない高速道路の整備計画や、深刻な環境破壊が予想される公共事業などがまな板に載せられるようになれば、役所の意識も変化しそうだ。
 ただ、問題がないわけではない。まず、評価する側もそれぞれの省庁に属する官僚であること。仲間の仕事を評価するのだから「身内の計画をダメと言えるだろうか」という声も少なくない。さらに、評価結果をどこまで公表するかについて大綱には記されていない。
 国民が役所の外から行政をチェックするには、やはり情報公開法の成立しかない――。市民団体にはそんな期待が高まりそうだ。
 大綱の政策評価制度と合わせ、省庁チェック機能の整備がやはりカギになる。
 ○文言でせめぎ合い 政治主導は盛り込まれた? 影響力温存、官僚なお腐心 総理府や経済企画庁、沖縄開発庁が一緒になる内閣府。このなかに首相や民間の有識者でつくる「経済財政諮問会議」が生まれる。マクロ経済や予算編成の基本方針を決める。官僚が牛耳ってきた領域に政治と民間人が切り込むわけで、「官主導から政治主導へ」を掲げる今回の行政改革の大きな柱の一つだ。それだけに官僚の抵抗が見え隠れし、とりまとめは迷走した。
 大綱決定を翌日に控えた25日。当初案には、この会議が出す予算の基本方針などの作業を官僚で構成する事務局が補佐することが盛られていた。ところが、結局、大綱からその一文が消えた。改革本部の幹部は「余計な疑いを持たれるようなので削除した」と語る。何とか影響力を残そうとした官僚への批判をかわすためだったようだ。
 最も神経質だったのは、行革作業を監視するため発足した経済人や学者らによる「顧問会議」(座長・今井敬経団連会長)だった。13日、大綱案を見た顧問の1人は「『原則として経済財政諮問会議が(基本方針の原案を)作成する』と書かれているが、骨抜きにならないようにすべきだ」と注文。結局、「原則として」という文言を抜くなど、目を光らせた。しかし本当に政治主導が実現するかどうか、会議が動き出してみないとわからない。

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「腐敗大国」への道(経済気象台)
年月日   1999年 1月26日

 年末年初の朝日新聞の意識調査によれば、日本国民の政治家、官僚に対する不信感は世界でも突出して高まっている。慢性的な不正のためである。世界的に政治家、官僚の腐敗を調査しているNPO(非営利組織)も、1998年の日本の腐敗はG7(主要7カ国)中第2位だったことを明らかにしている。
 このNPOはドイツのベルリンに本部を置き、90カ国以上に支部を持つトランスペアレンシー(透明性)・インターナショナルである。ゲッティンゲン大学と共同で毎年、世界各国の「腐敗感指数」を発表している。一般市民、外国企業幹部、専門家を対象に、世論調査のギャラップ社、国際競争力比較のワールド・エコノミック・フォーラム、世界銀行などが別個に実施している11の腐敗調査を総合した指数だ。
 腐敗感のもっとも高い水準を0、もっとも低い水準を10とすると、G7の中で腐敗感が一番高いのはイタリアで4.6。第2位の日本は5.8、次いでフランス6.7となる。米国、ドイツ、英国、カナダの順で腐敗感が7から9に低まる。日本は96年7.1、97年6.6と、年々腐敗感が高まっており、イタリアと逆転することもあり得る。
 政治家、官僚の腐敗とは、国民にゆだねられた公的任務を私的利益のためにカネで売り払うことであり、民主主義の崩壊に直結する。
 これを阻止するには、政府をスリム化、分権化して腐敗のリスクを最小限とし、情報公開、独占禁止法・会計検査の強化、オンブズマンやNPOの活動で、国民による監視を強めることだ。しかし日本の政治家、官僚は、行政改革や地方分権の骨抜き、情報公開法案の先送り、監視の妨害で抵抗している。
 このままでは世界の「腐敗大国」になる日も近い。このような抵抗がやりたい放題なのか、押し戻す動きがでるのか、世界は冷厳な目で監視していることを忘れてはならない。(曙光)

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地方再生こそ日本再生の切り札 富野暉一郎(論壇) 
年月日   1999年 1月19日

 神奈川県から島根県に移り住んで5年が過ぎようとしている。この間、20世紀末の日本や世界の激動する姿を地方に軸足を置いて人々の生活や地域活動の側から見てきたことで、都会にいては気付かない多くのものを学ぶことができた。
 第1に、世界はグローバルになったといわれているが、地域の側から見た場合、世界は私たちには手の届かないのっぺらぼうな「状態」になったのではなく、むしろ、20世紀までの「国家の時代」より多く、私たちが直接世界を動かせる「構造」に変化したということである。
 環境や人権平和に関する非政府組織(NGO)の活動と並んで、日本の地方でも、北九州市の環境国際協力や岩手県久慈市のリトアニア支援などをはじめとして、国際社会で高く評価される地域間国際協力が目覚ましく発展しつつある。1990年代以降、軍事的な紛争解決が行き詰まっている冷戦後の国際社会では自治体間の国際協力が定着している。私たちは国家の壁を超えて人々が世界を動かす「地球市民の時代」を生き、国益に縛られない地域間国際協力によって共生や自律の理念を国際社会で機能させる「自治体外交の時代」を迎えようとしている。
 このことは、21世紀の世界が地球全体(グローバル)と地域社会(ローカル)が直接向き合い影響し合う「グローカル」な構造を持つことを示している。
 地方分権や非営利民間組織(NPO)の制度化などの日本の社会改革は、その意味で国家の視点だけでなく、グローカリズムという世界の新たなシステムへの日本社会の適応という視点からとらえ直す必要があるのではないだろうか。
 第2に気付かされるのは、都市と農村の関係に対する性急な「地方お荷物論」の危険性である。
 財政危機や公共事業批判のうねりのなかで、最近都市の側から、地方に対して地域経営の非効率性や地方の依存体質を批判し、都市への投資を求める声が高い。しかし実際に地方に住んで見えるのは、都市の自治体や住民よりもはるかに強い地域の将来に対する危機意識である。また、むらづくり公社や若者の定住対策などの独自の地域ぐるみの活性化対策を行ってはきたが、その多くが失敗して赤字公社が続出するなど、努力が報われないなかでなお苦闘している真剣な姿もそこにはある。
 個々の地域は怠けて中央依存になったのではない。自立の努力に逆風を吹き付けてきた明治維新以来の日本の中央集権的非西欧型近代化路線とその結果としての日本社会の基本的な構造こそ変革されるべき対象なのである。実際、江戸時代の幕藩体制下での自立的地域経営競争の歴史は、地方が本質的には依存体質ではないことを私たちに教えている。
 日本の再活性化は、地方を批判し過密過疎の歴史を再び繰り返す都市への投資を増やすことでは困難であり、むしろ、デンマークの農村部でのバイオガス利用システムに典型的に見られるような、環境指向の地方分散型産業システムの構築の方に緊急性がある。地域が主体となり、積極的な地方分権が背景となった技術集約型中小企業ネットワークによる新たな総合産業システムを根付かせて、地方における雇用創出と地域活性化を実現する地方への戦略的地域振興投資こそが有効ではないか。欧州社会の成熟化が、モノを供給する産業から、環境・福祉・健康など生活の質を向上、充足させる地域産業システムを生み出したように、日本やアジアの成熟化は日本の地方に同様な産業システムを成立させる機会を与える可能性は高い。
 人口分散を進め地方の豊かな自然の恵みを活用した成熟した生活様式を実現することこそ21世紀の日本再生の基本的条件であろう。その最先端に立つべき地方は、中央省庁の縦割り行政や既存の産業分野の垣根を乗り越えて、生活の質を供給する新たな地域産業システムを創出しなければならない。そのためには、中央依存体質と決別し、自立的な地域経営への政策を自ら策定する必要がある。また、都市の側も安易な効率論にくみして小さくなるパイの奪い合いに走ることなく、地方の資源を生かした成熟社会実現のための公共投資を正当に評価し、地方の努力を支援することが望まれる。 (とみのきいちろう 島根大学教授・地域環境政策)

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自治体、浮かぬ顔 鳥獣保護“分権”へ(時時刻刻)
年月日   1999年 1月17日

 鳥獣保護法の改正案が19日から始まる通常国会に提案される。これまでの狩猟規制から科学的・計画的な保護管理を打ち出す点で、自然保護行政の大きな転換を迎える。一方、地方分権の流れの中で、有害鳥獣として捕獲する許認可権の多くは国から県に、さらに市町村に移る。だが、自治体側は「専門家も予算も少ない市町村に調査能力はない」と戸惑い気味。環境NGO(非政府組織)からは「理念はいいが、実行できるのか」と疑問視する声も出ている。
 (社会部・杉本裕明)
 ●戸惑い
 先月17日、東京・霞が関の環境庁。都道府県の鳥獣保護行政の担当者が集まり、自然環境保全審議会が直前にまとめた答申内容の説明会があった。質問が相次いだ。「権限の移譲で有害鳥獣駆除の許可は具体的にどう変わるのか」「保護管理計画をつくれといわれても調査には金がかかる。国は支援してくれるのか」。答申が改正案の基になるが、具体的な法案作成作業はこれから、ということもあって環境庁から明確な回答はなかった。
 参加者の一人は「『さあやって下さい』と言われても、抽象的で筋道が見えない」と戸惑いを隠さない。
 答申では、国がどのように自治体を支えるのかはっきりしないからだった。
 ●地元
 その保護管理を担う県も、有害鳥獣駆除の権限の多くを市町村に移すことになる。
 ツキノワグマの生息地、広島県芸北町。九七年、捕獲したクマを山に放つのをやめ、その場で処分することにした。町民がクマに傷つけられる事故が発生。町民から「住宅地に来るクマは処分しろ」との声が高まり、「生かして戻すことに了解が得られなくなった」(産業振興課)からだ。
 広島県は町にクマを駆除する許可を与えながら、殺さないよう指導してきた。それが行き詰まった。市町村に大幅に権限が移る今後は、県の関与も薄まる。
 奥山放獣は、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長が提唱、隣の戸河内町が91年に実施した。この地域のクマは、西中国山地個体群といわれ、広島、島根、山口の3県に約3百頭が生息。保護しないと絶滅の危険性があるとされ、環境庁の指導で、3県は保護管理計画もつくっていた。
 戸河内町職員で鳥獣行政に携わる栗栖浩司さんは「住民と直接向き合うのは市町村。『殺さないと危険だ』と迫られたら、『それでも大丈夫』と言い張れない。県も積極的にかかわってほしい」と話す。
 米田所長は「人工林が広がり、クマの食べる落葉樹の実が減る。里に出るクマが増えて捕獲、やがて絶滅の危機という流れが全国的に強まっている。国による総合的な保護行政が必要だ」と提言する。
 ●見直し要望 予算は、人は… NGO心配
 25のNGOでつくる「鳥獣保護法『改正』を考えるネットワーク」(草刈秀紀代表)は都道府県を対象にアンケートを実施、40都道府県から回答を得た。「権限が移譲され、すべての鳥獣保護を県レベルで行うのは困難」との回答が27。大半が「財政、人員で調査能力を確保するのが難しい」とし、「専門の担当者がいる」と答えたのは3県しかなかった。「有害鳥獣駆除をどのような判断でしているか」には、「前年度からの慣習」が9、「地元住民からの要請」が13だった。
 草刈代表は「有害鳥獣駆除は、科学的な調査を根拠に行っているわけではないことがわかった。予算も人もいない状況で権限だけ地方におろして大丈夫だろうか」と心配する。
 日本自然保護協会は、先月末、野生生物保護に関する最終的な責任が国にあることを明文化すべきだ▽保護管理の体制が地方に整わない状態で、捕獲許可権限を移すべきではない、との要望書を環境庁に出した。国会に法改正内容の見直しを働きかける構えだ。
 これに対し、環境庁の東海林克彦鳥獣保護業務室長補佐は「都道府県の全部に調査能力や態勢が整っているわけではないが、まず、科学的保護管理の概念を打ち出し、方針転換をはかることが重要だ。その後の運用については、計画策定のマニュアルを作ったり、調査費を補助したりするなど、できるかぎり支援したい」と話している。
 <環境庁の自然環境保全審議会の答申内容>
(1)狩猟規制から科学的・計画的な保護管理の考え方を導入し、ツキノワグマなどの特定の個体群を保護するため、都道府県単位で新たな保護管理計画の策定を進める
(2)国の権限を都道府県におろし、狩猟・有害鳥獣駆除の際の生息数調査を充実させ、生息数を望ましい状態に維持する
(3)カスミ網など鳥獣の絶滅につながる恐れのある捕獲方法の規制は環境庁の権限とする――など。

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三重・北川氏(知事 地方政治のリーダー) 
年月日   1999年 1月14日

 伊勢湾がわずかに見える三重県庁3階の会議室で、北川正恭は5日、新年の記者会見に臨んでいた。
 前日、首相の小渕恵三らと伊勢神宮を参拝した。北川はそれを話題に、「首相の言葉にも地方分権や行革を実行しないといかんという内容があった。大変よかった」と話した。行革で名を売った自信が、言葉の端にのぞいた。
 知事としての北川の名を高めたのは、2年前に取り入れた「事務事業評価システム」だった。事業の実効性を数値に置き換え、むだをなくすのが目的。画期的な手法として、自治体ばかりか、企業からの視察も少なくない。
 こだわりは徹底している。福祉や教育など効果を測ることが難しい仕事でも目標数値を決めさせ、達成度の自己評価を課した。財政担当課が「費用に対して効果が乏しい」とみると、その仕事は廃止した。
 広報紙の担当職員は「読んで役に立った」という県民の割合を数値にとり、70%の目標数値をたてた。毎月、発行するたびに5百人に電話をかけ、追跡調査をしている。
 ●満足度を調査
 県内各地を会場に、昨年秋、約1カ月にわたる催し「みえ歴史街道フェスタ」が開かれた。
 「イベントを、どうやって数値にし、何を基準に効果を評価するのか」
 担当職員は悩んだ。過去の催しでは、せいぜい入場者数を調べた程度だ。入場者の満足度などをアンケートで調べ、「相対的に文化振興への効果があった」と結論づけた。
 抽象的な評価に、自己満足に過ぎないとの批判もあった。だが、北川は「今は不十分でも、今回のデータが次の基準になる」と考えを変えない。
 システムの採用で、この2年間、県外マスコミ向けの広報冊子(1,200万円)など「639件、約116億円分の仕事がなくなった」。県の広報紙は、そう成果を強調している。
 「自己評価は甘くならないのか」という県民の声を気にかけ、職員の目標と評価も公表した。それは、予算をどう編成するのかについて、県の意思を明らかにすることでもあった。
 ●助成打ち切り
 「利益を誘導しようとする団体から有形無形の圧力がかかるのではないか」
 そんな職員の不安にも北川は明快だった。
 「県民にオープンにすれば、理不尽な要求はしたくてもできなくなる」
 「右肩上がりの経済が終わり、超高齢化社会を迎える。行政のスリム化と効率化は欠かせない。前例で仕事をする時代ではない」
 北川は昨年春、医師会などへの助成を廃止した。県議会で、廃止を主張する総務部と存続を求める担当部の議論を公開し、裏取引の余地を封じた。有力者が自分の田に水を引くことは論理上できなくなった、といわれた。
 「団体への助成の打ち切りは選挙に響く。落ちますよ」。対談で会った政府の地方分権推進委員会の大森彌東大教授の忠告にも、北川は動じなかった。
 4年前、北川は6期途中で引退した現職の後継者といわれた副知事と知事選挙を戦い、456,676票対443,861票の接戦で当選した。
 県庁に乗り込んだとき、北川には、議会最大会派の自民も、県職員労組も相手陣営にいた敵だった。
 選挙のさ中から「県政刷新」を叫んでいた北川は、しがらみに縛られず、改革を進めた。前任者の長期政権のウミを出すため、徹底した意識改革を職員に求めた。県民が支持した改革を白日のもとで進めたために、議会も職員も異論をはさむことができなかったともいえた。
 ●なお戸惑いも
 ただ、北川の冷徹なまでの合理主義には、県庁内にいまも戸惑いが残っている。
 「行政の仕事を、むだという理由で切り捨てていいのか」
 「県の財政難は、職員の意識、政策立案能力が足りないからではない」
 この8日に開いた県職員労組の臨時大会では、北川への不満が相次いだ。それでも、委員長の奥山喜代司は「改革を進めようとする姿勢は一致する」などとまとめ、春の知事選で北川を推薦することを決めた。
 2期目への選挙を、北川は共産を除くすべての主要政党の推薦を受けて戦う。相乗りで緊張感のある行政を続けられるのか。当選すれば、次の4年間は、そこが試される。
     ◇
 4年に一度の統一地方選が近い。21日には、その前哨戦となる愛知県知事選が告示される。わたしたちの地域を見つめ直す好機だ。地方政治の代表ともいえる知事は「事をつかさどる人」の意味をもつ。新しい世紀を託すリーダーに求められるものは何か。そこから考え始めたい。 (敬称略)

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サルで分かる分権の難しさ(記者席)
年月日   1999年 1月14日

 箱根の山でサルの押しつけ合いもどきの騒ぎが起きている。山の片側、静岡県熱海市はこの2年間で15匹前後のニホンザルを捕獲した。畑が荒らされ、子どもが襲われる事故まで起きていた。やむにやまれぬ「自衛策」である。だが、隣の神奈川県は過去10年間、ニホンザル保護をうたう基本方針を守ってきた。
 熱海市は捕獲したサルの一部を神奈川県内で放した。これに対し、神奈川県も駆除をやりやすいように方針の見直しを急ぐことにした。
 地方自治体が住民の被害を抑えるのは当然だ。難しいのは、ニホンザルが国際版「レッドデータブック」で絶滅危ぐ種とされ、「種の多様性を維持することが大事」(野生動物研究者)とされる点だ。
 19日召集の通常国会に提出される鳥獣保護法の改正案には、野生動物の狩猟・駆除に関する権限をさらに地方に移すことが盛り込まれる。環境団体には「地方自治体に任せると、駆除を優先し、動物保護は後退するのでは」との懸念が強い。
 もちろん、地方のことは地方で決めたほうが目配りが利く。だが、どこまで「種の保存」といった全国レベルの問題に配慮できるのか。

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「官」の刷新へ(あふれろ民力:7 21世紀私たちは第1部)
年月日   1999年 1月 9日

 自分たちの発想だけでは、「民」の要望にこたえきれない。そこに気づいた「官」が、刷新に踏み出した。
 「スキーウエアの人は着膨れする。トイレは大きめにしたほうがいい」
 「年間を通じ使えるよう考えたら。夏はハンググライダーで遊ぶ人も来る」
 昨年11月18日夜、秋田県鷹巣町今泉地区の集会場。岩川徹町長(50)を中心に、車座になった約四十人の話が熱を帯びた。町営スキー場にヒュッテ(山小屋)を新設する。「どう作るのか、みなさんで考えて下さい。いいアイデアは、当事者じゃない役場職員からはなかなか出ませんから」と岩川町長。
 約1年かけて住民がスキー場の運営全般を考える「ワーキンググループ」の発足が、この日決まった。
 ワーキンググループは、これで7つ目。約7百人の町民が参加する街づくりの原動力だ。
 福祉の分野では、町民自身が在宅介護の老人の家庭を訪ね、何が必要かを聞くことから始めた。そこから「ホームヘルパーの24時間派遣」などが生まれた。この春にオープンする在宅福祉支援施設「ケアタウンたかのす」。建設前には施設のモデルルームを、町民らの「探検隊」がチェックして、89もの注文をつけた。
 町の1998年度の予算約94億1千5百万円のうち、32%を民生費が占める。土木費は9%。「土木から福祉へ」とかじを切り替えてきた。だが「『初めに福祉ありき』ではない。住民参加が町の姿を変えてきた」と、岩川町長は話す。「町民が議論して必要だということになったら、お金はかかっても価値はある。逆に何の意見もでないようならゼロ査定でいい」
 畠山進さん(69)は福祉のワーキンググループで、公共施設の点検に加わったことがある。役場の窓口が、車いすの人だと首しか出せない高さなのに気付き、改良を提案。カウンターは低く改められた。前は「町のことは役場が考えるもの」と思い込んでいた。でも今は、窓口を見るたびに「自分たちが行政を動かしたんだ」と、誇りに思う。


 JR川崎駅前のビルの一室で昨年12月19日、市民による条例作りを目指す「市民立法ゼミナール」が行われていた。
 「川崎市地方分権推進条例試案」。A3判の3枚の資料には、地方分権が実施された際に、市と住民がどのように取り組むかを示した条例の総則、各章、付則が記されていた。
 「市民が行政の意思決定に参加できることを、条文ではっきり書いたほうがいい」「区役所に、もっと権限を移すべきだ」。ゼミに参加する自治体職員や大学生ら24人が、試案をたたき台に議論を続けた。
 ゼミを企画したのは、川崎市職員で地方分権担当の高橋慶子さん(39)だ。
 地方分権推進計画が昨年五月に閣議決定され、関係法が改正されれば、自治体独自の仕事が増える。条例作りの作業で忙しくなるはずだ、と思いながら「いままでのように、市の職員がやるだけでいいのだろうか」と考えた。それまで14年間、公民館で働いた。地域の人と病院や公園、託児所などの情報をまとめた「子育て便利マップ」を作ったり、川の浄化運動に取り組んだりしたことが原点になった。
 「住民が条例案をつくり、市議を通じて議会に提案する。そんなやり方だってできるはずだ」
 上司の太田直さん(48)も高橋さんの考えに賛成だった。市議会への配慮から、「そこまでやらなくても」という声も聞こえてくる。だが、「役所と学識経験者だけで条例をつくっても、住民にはなじみのないもので終わってしまう」。
 ゼミで配った条例試案は、法律やほかの条例との整合性や文言も条例案として堪えるものにした。ゼミがただの勉強会ではないことを示したかったからだ。
 この「実験」がうまくいけば、条例づくりという、市民参加の新しい形が描けるかもしれない、と考えている。 (澤田歩、国分高史)
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NPO・NGOを知る10冊 
年月日   1999年 1月 7日

 「官」主導のシステムに、あちこちでほころびが見える。経済も曲がり角をなかなか過できない。そんな時代だからこそ、これまでは社会の枠組みの外にあった民間の非営利組織(NPO)や非政府組織(NGO)の活動が注目を集めている。特定非営利活動促進法(NPO法)が施行され、いよいよ今春には「NPO法人」も誕生する。こうした動きにちょっと乗り遅れたという人のために、この半年ほどの間に出版された本を中心に、「NPO/NGOを知る10冊」を選んでみた。
 ○「まだよくわからない」という人に
 日本NPOセンターが主催するNPO塾の講義をまとめた「NPO基礎講座」「同2」が、NPOの現状と課題をコンパクトにまとめている。
 1昨年出版された「基礎講座」はNPOの定義やボランティアとの違い、企業や自治体、助成団体とのかかわりなどについて、続編の「2」は福祉や芸術、環境、女性、まちづくり、国際交流の6つの市民活動について、それぞれの専門家が解説している。日本のNPOについて現時点での達成点が整理されており、活動内容を具体的に理解するには便利だ。
 社会の中でのNPOの位置づけを知るには「NPOの可能性」が良いだろう。昨年4月に開かれた宝塚NPOセンター設立記念フォーラムの講演記録で、阪大の本間正明教授は「NPOは時代が必要としている」と指摘、東大の上野千鶴子教授はNPOを「市民社会の新しい実験」として新たな見方を示している。NPOという世界の広がり、その潜在的な力が見えてくる。
 ○「法律がどうも苦手だ」という人に
 NPO法制定の推進役となった熊代昭彦代議士の手で書かれた「日本のNPO法」は、法律を作った側の意図や思いが読みとれて面白く、解説も歯切れが良い。
 少し離れたところから法律全体を見ているのは「NPO法コンメンタール」。法制定に協力してきた専門家による逐条解説で、利用する市民だけでなく、自治体の担当者も読者として想定している。
 執筆者による座談会「NPO法をどう活用するか」を読むと、「この法律は育てていくものである」ことが分かる。「NPO法を解釈するキーワードは私的自治と地方分権」という指摘は重要だ。
 「NPOとボランティアの実務――法律・会計・税務」は、阪神大震災をきっかけに生まれた大阪弁護士会のNPO部会の研究を中心に、大阪の弁護士、税理士グループがとめた実務書。Q&A方式で、136項目を解説。特にNPOと労働問題、会計・税務の項目は具体的で参考になる。
 ○「もっと深く知りたい」という人に
 気候変動という地球環境の分野を通して国際的なNGOの活動を紹介したのが「環境NGO」だ。
 1972年にスウェーデンで開かれた環境NGOフォーラムをきっかけに国際NGO活動を始めた関西学院大の山村恒年教授は、環境NGOの役割を「国益や省益、地域益といった政治的な制約に左右されやすい地球環境問題を、地球益の立場から守っていくことにある」と指摘している。
 温暖化防止京都会議など一連の環境会議でのNGO活動の舞台裏も具体的に描かれ、際環境NGOが各国を動かしていくプロセスがよく分かる。
「NPOが描く福祉地図」は、NPO法と介護保険法の入門書でもあるが、NPOが介護保険とどうかかわっていくのかという解説も含まれ、今後の福祉分野のNPOのあり方についての示唆に富む。
 タイプの違う福祉団体の事例紹介があり、介護保険制度のもとでの福祉NPOの可能性について考えさせる。介護保険の指定事業者になることを目指しているNPOにとっても参考になるだろう。
 市民活動の実践ガイドブックを目指した「NGO運営の基礎知識」は、人集めや活動の進め方、資金調達に至るまでのノウハウを個条書きで示している。
 日本ではまだNPOの組織運営についての蓄積がなく、本来の活動にかかわらないささいなトラブルで活動がつまずくケースも多い。「基礎知識」はミーティングの進め方や企画書の書き方など体験に基づいた具体的な活動マニュアルを提示している。これから活動を始める人、運営で悩んでいる人にはおすすめ。
「日本のNPOの経済規模」は、NPOの経済的価値に関する経済企画庁の委託調査報告書。財団法人や社会福祉法人などの民間非営利活動団体が年間11兆円の付加価値を生み出し、市民活動のボランティア活動を「有償」とみなすと約6500億円となることを示した。
●オススメはこれだ
 ・NPO基礎講座 山岡義典編著 ぎょうせい 2000円
 ・NPO基礎講座2 山岡義典編著 ぎょうせい 2000円
 ・NPOの可能性 本間正明・上野千鶴子著 かもがわ出版 571円
 ・日本のNPO法 熊代昭彦編著 ぎょうせい 1905円
 ・NPO法コンメンタール 堀田力・雨宮孝子編 日本評論社 3300円
 ・NPOとボランティアの実務――法律・会計・税務
         NPO・ボランティア研究会編集 新日本法規 4800円
 ・環境NGO 山村恒年編 信山社 2900円
 ・NPOが描く福祉地図 さわやか福祉財団監修 ぎょうせい 1600円
 ・NGO運営の基礎知識 A SEED JAPAN/POWER共編 アルク 2500円
 ・日本のNPOの経済規模経済企画庁国民生活局編 大蔵省印刷局 1000円

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市民が技を鍛え始めた やわらかな社会をつくる(社説)
年月日   1999年 1月 3日

 川崎市でヘルパーを13年間続けている渡辺美恵子さんは、いまも1人の老婦人の涙が忘れられない。
 介護できなくなった、という息子さんから連絡を受けて駆けつけると、80歳をとうに過ぎた彼女は汚物にまみれていた。部屋中を片づけ、お湯で体をていねいにふいてあげる渡辺さんに目を潤ませた。
 社会全体に高齢化が進み、だれでもこの老婦人と同じような境遇に置かれる可能性がある。いざというときに助けてもらえるヘルパーの役割は高まる一方だ。
 渡辺さんは民間の介護サービス組織「だんだん」のコーディネーターでもある。ヘルパーをしてくれる主婦たちとの連絡役として仕事を調整し、相談に乗る。
 ヘルパーを確保するには、欠かせない仕事である。それなのに、民間のコーディネーターにはほとんど報酬がない。組織をまとめている神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会の長年の悩みだった。
 ○手づくり条例をめざす
 「自分たちで条例をつくろう」。たどり着いたのが、この結論である。
 連合会と、神奈川県の地域政党、神奈川ネットが手を組み、半年余りかけて「在宅福祉非営利市民事業支援条例」の素案を昨年7月につくりあげた。そこには、渡辺さんのうなコーディネーターの人件費への公費補助が盛り込まれている。
 神奈川ネットは、統一地方選の横浜、川崎、厚木などの市議選で議案提出権を持つ人数の当選をめざしている。実現すれば、次々に条例案を出していく方針だ。ほかの会派にも協力を呼びかける。
 暮らしを少しでも良くしていくために、自分たちが選んだ議員を通して、自分たちが必要とする法律や条例をつくる。それが当たり前のことなのだという意識が、徐々にではあれ、市民の間に広まりつつある。神奈川での動きはその一例だ。
 国や県が面倒を見て、人々はその恩恵を享受する。社会にしみついたそんな固定観念から抜け出て、人々がみずから政治を担ったとき、日本の民主主義はやっとその名に値するものとなるに違いない。
 見逃せないのは、そのような動きの背景に、3つの大きな流れがあることだ。
 第1は地方分権、第2は特定非営利活動促進法(NPO法)の制定、第3は情報公開条例の普及である。
 これらを追い風として、市民が法律や条例づくりに挑戦しようとしている。
 ○地方分権をテコとして
 「新たにつくるのは少なくとも百、もしかすると二百を超えるかもしれない」
 地方分権に伴って制定が必要になる、と川崎市が予想する条例の数だ。地方分権とは条例づくりの時代といえる。
 明治以来、自治体の仕事は国からの機関委任事務が大半だった。中身は国が決め、議会も住民も口を挟めなかった。今後は、その六割が自治事務となる予定だ。
 法律が改正されれば、福祉や環境、教育など身近な分野で、国から県や市町村に裁量権が一気に移る。その機会に、住民や議会の意思が反映されるよう新たに条例をつくろうとする動きが強まっている。
 これまでなら、「国に権限がある」といって矢面に立たずにすんだ自治体が、いや応なしに市民と直接向き合わざるをえなくなる。その緊張関係は、双方に自治の担い手としての自覚を促すだろう。
 市民の側にはすでに実績がある。
 阪神・淡路大震災の被災者に対する公的援助は、市民運動の働きかけで、不十分な点を残しつつも議員立法で実を結んだ。NPO法の制定はさらに劇的だった。
 市民団体のメンバーが議員たちと法案の中身を話し合いながら、その経過を全国の支グループに逐一伝えた。「議員への根回しも含め、法律をつくるプロセスをみんながつぶさに体験した」。日本NPOセンターの山岡義典常務理事はこう語る。
 その体験が、NPO法の成立後、都道府県が法人格の認証手続きを条例で定める段階になって生かされた。議員立法なので国から手引はこない。各地で行政と市民団体が共同して条例案をつくり、成立させた。いまは一歩進めて、NPOの活動を支援するための条例づくりが始まっている。
 これこそが、自治事務について都道府県が独自に条例をつくる過程にほかならない。分権時代の条例づくりの予行演習を多くの都道府県が体験した。
 議会も眠ってはいられまい。市民が議員に働きかけて条例を提案したり、議員が出そうとする条例について、NPOの知恵を借りたりすることも増えるだろう。
 立法機能を使いこなせる議員がどこまで増えるか。それこそが、統一地方選の本当の争点になるべきなのだ。

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