地球温暖化の現状について「TIME」誌1999年12月13日号に掲載されていたものを翻訳して掲載します。
なお、詳しくは次のWEB SITEを参照して下さい。http://www.climatehotmap.org.
温室効果(地球温暖化はかなり進行している。ここにいくつかの兆候がある。)
化石燃料の燃焼から生ずる二酸化炭素とその他のガスが大気に集積し、それが温室のガラス壁のように地球表面の熱を逃がさない働きをする。科学者は地球の平均気温が次の1世紀で3.5℃上昇すると予測する。そしてもうすでに熱波の発生、北極、南極での氷の溶解、海面の上昇が起こっている。
各地域でこれから起こることは予測しがたい状況である。いくつかの地域では強烈な嵐の被害を受けるであろうし、他の地域では厳しい旱魃となる。
7つの環境団体(環境保護基金、自然資源保護会議、シエラクラブ、関係科学者連合、アメリカ公益研究団体、世界資源協会、世界野生生物基金)は地球温暖化の兆候への早期の警告を示す世界地図を共同で作成した。
科学者チームの見解によれば、これらの兆候は2つの類型に分類される。すなわち、1つは温暖化の直接の兆候(Fingerprints)、そして気候変動でより頻繁にそして拡大するであろうと思われる前兆といわれる出来事(Harbingers)である。
ここにマップの概要を示します。
1 The Harbingers(前兆)
◆絶滅した動物
(1)カリフォルニア
Edith's Checkerspot Butterflyがその生育南限や低海抜地域から消えている。
(2)南極大陸
アデリペンギンの数が生息する海氷の縮小のため、25年間で33%減少している。
(3)カナダ北極
Peary Caribouの数が1961年の24000頭から1997年には1100頭に減少した。その主な原因は多量の降雪と氷の雨が彼らの食糧供給地をおおったためである。
◆嵐と洪水
(4)オーストラリア
1998年8月15日から17日にかけての嵐でシドニーに3000ミリの雨が降った。そしてその雨量は1ヶ月に通常降る量の3倍であった。
(5)韓国
1998年7月と8月の間に大洪水が襲った。そのときの数日での雨量は2500ミリを超えた。
(6)カリフォルニア
1998年2月1ヶ月でサンタバーバラに降った雨の量は5522ミリで、これまでの月間雨量の最高を記録した。
◆病気の流行
(7)ケニヤ
1999年以前には罹ることのなかった高地で数百人の人々がマラリアで死んだ。
(8)コロンビア
アンデス山脈でデング熱や黄熱病を運ぶ蚊が、かつては1000m以上の海抜には見られなかったが、2195mの高地で確認された。
(9)インドネシア
1997年イリアンジャバ州の2100mの高地でマラリア菌が初めて検出された。
◆旱魃と火事
(10)スペイン
1994年50万ha以上の森林が燃えた。
(11)メキシコ
1998年50万6千haが日照りで燃えた。
(12)インドネシア
1998年既に荒廃してしてしまっていたカリマンタンオラウータンの熱帯雨林生息地を含む89万ha以上の土地が燃えた。
◆早い春
(13)イングランド
65種の鳥のうち31%が1971年には平均8.8日で孵化していたのが、1995年にはそれよりも早く孵化していたことがわかった。
(14)アラスカ
82年間の記録の中でタナナ川の最も早い氷塊の5件のうち4件が1990年で起こった。
(15)ニューハンプシャー
ミラー湖が氷でおおわれている期間が過去30年款で年につき約半日ずつ短くなっている。
2 The Fingerprints
◆熱波
(16)チベット
1998年ラーサ(首都)で6月に23日間25℃を越える気温を記録し、最も暑い6月となった。
(17)カイロ
1998年は観測史上最も暑い8月を記録した。8月6日には気温41℃に達した。
(18)ニューヨーク
1999年7月これまでで一番暑く乾燥した7月を記録した。気温が11日間35℃以上を記録した。
◆海面上昇
(19)バーミューダ
海洋から進入する塩水によりマングローブ林が枯れてきている。
(20)ハワイ
ワイミア湾の海面上昇が、海岸開発もあって過去90年間でかなりの砂浜を失う一因となっている。
(21)フィジー
ローカルレポートによれば海岸線が90年間で1年につき15cm浸食してきている。
◆氷河の溶解
(22)インド
Gangotri氷河が1年につき30cm後退している。
(23)ロシア
コーカサス山脈ではすべての氷河の氷の半分が過去100年間で消えた。
(24)ペルー
アンデス山脈のQori Kalis氷河が1年につき30.5m後退している。それは1960年代から70年代までの割合の7倍の早さである。
◆南極北極の温暖化
(25)アラスカ
バローでは夏に雪のない平均日数が1950年代の80日あまりから1990年代には100日以上に増えている。
(26)北極海
海氷でおおわれているエリアが1978年から1995年までで約6%減少した。
(27)南極
約2980kuのラーソンBとウィルキン氷棚が1998年3月から1999年3月までに崩壊した。
(文責:佐藤)