第41回学習会2000年4月15日
「分権後の自治体の課題」

 2000年度の本会の学習計画について討論。出来るだけ気軽に参加できて、それでいてタメになる内容のものを実施していく。
 具体的には、今年度は地方分権初年度ということもあり、今後の自治体改革を見据えた内容のものを実施することに決定。

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第42回学習会2000年5月20日
「実施後の介護保険の状況」

 報告者 鎌田洋一さん(船引町役場)

 1 介護保険の対象者とサービス 
  @要介護認定申請状況
  A訪問調査実施状況
  B審査判定結果
  C非該当者申請時の利用サービス状況
  D施設入所者の判定数
  Eケアプラン作成件数
  F在宅介護(支援)サービス受給者数の状況
  G施設介護サービス受給者数
  H施設介護サービスの状況

 2 サービス内容
  ・横だし、上乗せ等のサービスは基本的に考えておらず、従来の福祉サービスにより対応する考えである。また、対象者のニーズにより今後逐次対応すべきものは検討していく。
  ・従来の福祉サービスは継続
  ・介護認定で要介護とならなかったディサービス受給者43名については、希望をとり、保健事業とのタイアップで「いきいきディサービス」を週1回実施することとした。(本人負担800円ー食事代)
   また、希望者28名で現在6回実施している。今後ディケア受給者で要支援に該当しなかった方についても同様の事業実施を検討している。

 3 料金
  ・実労働内容に即した単価とは言えないかも知れない。
   例:訪問入浴 1回1時間  12,500円 3名従事
     訪問介護 1時間未満   4,020円 1名従事

 4 保険料
  ・
○福島県内市町村介護保険料等一覧(現在県のホームページに掲載されていません)

 5 介護保険へ移行して
  ・保険料の設定がわかりにくい。
  ・要介護の判定が高いほど得をしたと錯覚されやすい。
  ・介護保険により初めて福祉サービスを受けられた方から、受給申請は認定等があって面倒だと思っていたが、緊急の場合に福祉サービスがすぐに受けられるため助かったとの声もあった。
  ・反面、従来からサービス等を受けている方からは、同じ様な手続きを今回もとらされたことで、大変難しい制度であるとの苦情もあった。
  ・当初介護度の程度に苦情のあった方についても、概ね限度額の5割程度しか使わない傾向にある。(本人負担を強く意識しているものと思われる。)
  ・自己負担金については、老人医療も全額無料というわけではなかったので抵抗がないのか特に高いという声はない。
  ・保険料については、6月に2号被保険者の保険料のキップが発足されるので、どのような反響となるか不明。

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第43回学習会2000年6月24日
「自治体財政はどうなるか」

 講師 清水修二先生(福島大学経済学部教授)

1 財政危機の現状

  (1)公債の累積をどう見るか

  (2)国債と地方債のちがいについて

2 戦後における地方財政危機の経験

  (1)1950年代の危機
     ドッジライン
     地方財政再建促進特別措置法(1955)
     町村合併促進法(1953)・新市町村建設促進法(1957)
     「自治研活動」のスタート

  (2)1970年代の危機
     石油ショック
     大都市財政の危機
     東京都新財源構想研究会(1973〜79)
     第2次臨調(1981設置)

  (3)1990年代の危機
     バブル経済の破綻・グローバル段階の財政危機
     再度の大都市財政危機
     地方分権一括法・市町村合併特例法改正

3 今日の地方財政危機の原因

  (1)長期不況による税収の落ち込み

  (2)景気対策としての地方単独事業の拡大・・・・地方債・交付税振替えシステム

  (3)国策追随の地方行政運営

4 財政危機をいかに打開すべきか

  (1)集権的分散システムの破綻

  (2)分権的財政改革・・・・新しい地方所得税

  (3)公共事業依存体質からの脱却・・・・福祉型財政運営への転換?

5 自治体職員の役割を考える

  (1)危機打開の道を指し示すことができるか

  (2)地方分権をどうとらえるか

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第44回学習会2000年7月22日
「三春町の自治体組織改革論を学ぶ」

 講師 伊藤寛三春町長

 基本課題「自前の政策をしっかり持ってまちづくりをすすめるために」

 第1主題 政策立案・決定責任の所在をはっきりさせるー「政策審議会」方式の提案

  (1)そもそも「自前の政策を持つ」とはどんなことか。
    @「事務事業評価管理票」作成の2年間の反省
    A情報公開条例に基づく「政策資料目録」の内容分析
    B「自前の政策を持つこと」に無縁だった行政体質
    Cしかし、地方分権の時代は、政策を競い合う時代

  (2)法的・制度的にはどうなっているか。
    @議決機関としての議会の権限(法§96)
    A議会の政策立案補佐機関
    B執行機関としての長の権限(法§149)
    C結論

  (3)政策の立案・決定責任の現状はどうか
    @長
    A議会
    B附属機関としての各種審議会
    C長途議会の中間領域

  (4)「振興対策審議会」の2年間をどう評価するか。
    @当審議会の概要
    A議員制からの最大公約数的評価
    B職員側(行財政改革委員会)からの評価
    C長の評価

  (5)改革案としての「政策審議会」について
    @名称の変更
    A当審議会の法的性格
    B答申議会の運営
    C委員の構成
    D委員数
    E議会との関係
    F長との関係
    G当審議会の開催頻度

第2主題 政策立案の補助機関を強化するー複数参事役の提案

  (1)長の補佐役としての助役制度の問題点
    @責任と権限の曖昧さ
    A守備範囲の広さ
    B間接的管理の制約

  (2)参事役と助役・課長の違い
    @参事役は行政支配人
    A参事役は特別職

  (3)参事役の複数制

  (4)参事役の公募制

  (5)収入役を置かず財政担当参事役が兼掌
    @収入役の法的・制度的位置づけ
    A収入役の任期
    B「収入役は長から独立した機関」の意味
    C内部牽制の2つの機能
    D内部牽制機能としての収入役設置の必要性

第3主題 人材が育つ強い自治体にするー縦割り職制廃止と新しい人事政策の提案

  (1)行財政改革の中間点
    @三春町が進めてきた行財政改革4つの柱
     ・文書主義の徹底と文書管理の改善
     ・事務事業評価管理方式の導入
     ・企業会計方式の導入による単位事業別費用対効果分析
     ・事業所制の導入

  (2)人が育たない職場といわれる事情
    @年功序列型の停滞人事
    A勤務評定不在の職場
    B指導力の弱い中間管理職
    C専門職が育たない人事管理
    D型にはまった地方公務員研修
    E県依存の情報収集・管理

  (3)人事政策の改革
    @単葉部門参事役に直結の業務体制
    A個人担当、個人責任の原則
    B職場内の協調関係
    C職務名を廃止し、職能名を勤務年数によらず、厳格な評価基準で運用
    D年功序列主義と実力主義を折衷した給与管理システム
    E勤務評定制度の導入
    F専門職登録制の検討 

三春町の行政組織改革案から学ぶもの            
 佐藤敏明
 去る7月22日(土)、本会としては初めてのフィールドワークを三春町で実施した。学習テーマは、最近教育長の公募制で話題にもなっている三春町の行政組織改革についてである。伊藤寛町長を講師に招いたこともあり、当日の出席者は通常例会の倍を超える数となり、三春町田園生活館研修館は満杯になった。
 機関委任事務制度を廃止した新地方自治法が本年4月施行し、自治体にとってはいよいよその自前の政策が試される時代に入った。これまでのように「国の指導だから」、「他の自治体でもやっていないから」とかの逃げ口上は通用しない。市民に対する政策説明責任とともにその結果責任についても問われる時代になっている。
 しからば、現下の自治体組織体制がそれに足るだけのものになっているだろうか。今回の自治法改正でも地方行政体制の改革は、議員定数の法定化、中核市の要件見直し、特例市の創設にとどまっている。
 自治体に限らず、筑紫哲也氏の言葉を借りれば、「日本の組織は今、時代の変化に適合できず、我々が前に進むことを妨げている」のである。筑紫氏はその欠陥を、保守性、減点主義、無謬主義、全員一致主義(無責任主義)、前例主義、総括できない組織、秘密主義の7つの大罪として指弾する。そしてその弊害ぶりは、最近でもそごう問題、雪印事件等々で明らかなように相も変わらず引き起こされている。
 このような状況を背景に三春町の行政組織改革案は、「自前の政策を持つこと」に無縁だった行政体質を改め、政策を競い合うという地方分権時代にふさわしく、「自前の政策をしっかり持ってまちづくりをすすめる自治体になるために」提案された。これまでも政策立案機関としての振興対策審議会の設置、事務事業評価制度等々三春町では様々な改革が実行されてきた。今回の改革はその延長線上にある。
 この改革案の柱は、1)政策立案・決定責任の所在をはっきりさせる。2)政策立案の補助機関を強化するー複数参事役(公募制特別職)の提案。3)人材が育つ強い自治体にするー縦割り職制の廃止と新しい人事政策の提案である。
 この案の特徴は、これまで曖昧になっていた政策決定機関とその政策を執行する補助機関の明確な分離である。首長と議会は政策決定に責任を持つとともに、その結果責任についても厳しく問われる。また政策を執行する補助機関には事業所制を採用するとともに、その事業所の責任者として、公募による特別職である参事役を配置することである。そしてこれまでもその存在意義が疑問視されていた収入役を廃止し、その職務を財政担当参事役が兼掌するというものである。当然に事業所の責任者である参事役には政策執行の責任が問われてくる。それと同時に補助機関としての自治体職員にとっても、これまでの年功序列、終身雇用への安住は許されず、政策を執行する上での普段の研究が求められてくる。
 私はこの学習会の討論を通じて、自治体首長として住民生活の安定と住民福祉向上に注がれる伊藤町長の真摯な姿勢と責任感、そしてその強い信念を感じとることができた。
 先日私たち自治体職員学習会のホームページを見て、学習会に参加してきてくれた仙台市の大学院生は、来春の就職先を三春町に希望しているという。
 来年4月以降の三春町を注目してゆきたい。


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第45回学習会2000年9月30日
「自治体行政とNPOの関係論〜新たな「公共性」の視点から」

 報告者 遠藤哲哉さん

T 新たな「公共性」とは何か 

  (1) 「公共性」の一般的な意味合い
  (2) 新しい「公共性」論とは?
  斎藤純一著「公共性」(岩波書店)を中心に
 @公共性ーその理念/現実
  第1章 公共性の位置
   1公共性をめぐる近年の言説
   2公共性と共同体
  第2章公共性と排除
   1公共性へのアクセス
   2対抗的公共圏と孤独
 A公共性の再定義
  第1章 市民社会と公共性
   1啓蒙=公共性のプロジェクト
   2合意形成の空間
  第2章 複数制と公共性
   1現れの空間
   2共通世界と意見の交換
   3社会的なものへの批判の陥没
  第3章 生命の保障をめぐる公共性
   1ニーズを解釈する政治
   2公共的価値と社会国家
   3社会国家の変容
   4社会的連帯の再生をめぐって
  第4章 親密圏/公共圏
   1親密圏の発現
   2親密圏と公共圏・家族
   3親密圏の政治的ポテンシャル
  終章 自己と公共性

U NPOとは何か?

V 自治体行政とは?

W 自治体行政とNPOの関係  
 (1)「支援」と「パートナーシップ(協働)」の2つのキーワードからNPO施策を展開
   @支援
   A協働
 (2)問題の所在
   @自治体行政とNPOとの関係把握が不十分(協力・互助・対立・競合・無関係)
   A公共政策形成の主体と市民(NPO)参画の意義についての認識
   B既存の自治体行政における各種資源自体がNPOリソースであることの位置付け
   C組織変革の努力が不十分
 (3)自治体の組織改革

 a 各種の対策

 b NPO条例の策定(横浜市の事例)

 c 自治体行政組織再編の動向(京都市の事例)