[1]アタックサーバントとはなんぞや?
ASとはアタックサーバントの略称である。そもそもASの歴史は古く、遥かなる昔に存在した魔法王国の時代にさかのぼる。ある国の王が肉体労働に使役されていた奴隷たちを哀れに思い魔導士に命じて作らせた一種のゴーレムでサーバント(英単語 servant 召使い、使用人の意味)が元となっている。サーバントは奴隷に代わり、鉱山の採掘や城などの建造の重労働に使われたほかに奴隷を戦わせていた闘技場などでも人間とかわり戦うようになった。格闘技のために専門化されたサーバントが作られ、それをアタックサーバントと呼ぶようになった。これが当時の貴族の間で流行し、性能のいいASを持つことが貴族の間でのステータスとなった。貴族たちは他のサーバントに負けないために大型化したり空を飛ばせるなどして性能を向上させ、それがどんどんエスカレートしていった結果全高9bほどになった。また、より高度で複雑な動きを求めた結果、操縦者をのせて精神力でASをコントロールした。
いつしかASを持つことが王国の象徴となり、貴族同士の争い(争いといっても数万人を動員したほぼ内乱といってもいい規模の私戦)の中でも最後の決戦に勝負を決めるものとなっていた。戦闘自体は当時は人間同士の肉弾戦と魔法合戦だったが、戦闘の中盤になるとASが出撃し、一騎打ちをはじめた。この勝負によって戦いの勝負が決まる場合が多く、またASは剣や魔法の能力が高いものしか扱えなかったため選ばれたエリートしか乗れなかったのだ。ASにのって戦うものにはどんな低い身分だったものでも騎士の称号と爵位が与えられた(当時は世襲制だったため、この処置は異例だった。)。これが現在でもASの操縦者を騎士と呼んでいる理由である。
サーバントは魔法王国の絶頂期に作られ、魔法王国の内乱で高度な魔術のほとんどが失われたとともに、ASもその例外に漏れず伝説の中へと封印されたのだったが、これを強力な兵器として現在に呼び戻した人物がいる。現在の推進,飛行システムのシムトランウ機関の生みの親であるヴエルター・フォン・シムトランウ博士その人である。
博士は作業用の汎用ロボットにサーバントの構造の原理を流用できないかと模索していた。
 (22式)
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サーバントは人間と同様の骨格(木製からミスリル製まで様々な材質で作られていた)に魔術で構成したある一定のキーワードを与えられると伸縮する人工筋肉を取り付け、その上に金属製の装甲や布などをかぶせて形を整えた。動力源は魔晶石と呼ばれる電池のようなものから引き出し、頭部に付けられた精霊石で命令を受け取り、あや取りのような複雑な行動もできたといわれている。ヴェルター博士はこの構造をそのまま当時の技術におきかえた。人工筋肉は流体金属(セラフィウム:形状を数百種類記憶でき、一定の電気の刺激を与えると決められた形に変化する。)に、電源は外部からとり、判断は搭載されたコンピューターで行う。 ヴェルター博士は数多くのサーバントを試作し、10年間にもわたって研究をつづけたが、どれも全高が9メートル近くになってしまい、作業現場での細かな作業や狭い場所での作業には向かないものとなってしまった。この研究は中断されたが、博士が交通事故により死亡した翌年の連邦暦22年に封神帝国が汎用兵器として開発を始めた。
最初に作られたASは22式と呼ばれた。動力源は外部からケーブルで接続され、最大行動半径は500m。武装は人間の歩兵用の武装を大型化しただけで、前面投影面積が大きい分被弾率も高く、歩行による移動のため、空中戦車に比べても移動力が劣っており、動力源が確保できない場所では発電用の車両が必要になる等、とても戦闘に使えるような代物ではなかった。
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これを見た他国はASの研究を中
断し、通常兵器の充実を図っていったが、封神帝国だけは地道に開発を続行していた。
連邦暦79年 火星王家連盟と封神帝国の間におきた戦争で初めてASが戦闘に参加した。当時の戦闘は戦闘艦による艦砲射撃と攻撃機による爆撃が戦闘の主力だった。帝国の戦闘艦は攻撃機の爆撃に対する対空兵装が旧式化しており、ほとんどの戦闘に大敗していたが、しかし、ASの登場により戦況が一変し、封神帝国が勝利している。
この時戦闘に参加した72式は現在のASの基本となった機体である。基本的な構造はヴェルター博士が開発したサーバントと同じだが、機体内に反物質対消滅炉とジェネレーター,シムトランウ式推進装置、および重力コントロール装置を2基装備する。エネルギーは対消滅炉で作られたものがジェネレーターで電気エネルギーに変換される。この電気エネルギーが機体の動力源となっている。重力コントロール装置は一方をパイロットのショック軽減用、一方を推進用として使用している。重力コントロール装置のサイズが小さいため、地球上で使用した場合はホバリング程度の高度しか維持できないが、シムトランウ式推進装置がその不足分を補っている。一見無駄なように見える手足も、手足を動かすことによって方向転換用の補助推力装置の搭載数を減らすことができる。
地上では足は地面を利用して射撃時の反動や高機動時に地面と接触することによって機体の姿勢を保つためのスタビライザーとして使用される。また武装の換装が短時間でできるようになり、戦闘機では母艦や基地に戻らなければできなかった弾薬の交換も戦場でできるようになった。刀剣類も使用可能なので、活動時間が従来の兵器よりも大幅に伸びていた。 ASの機体サイズは全高9メートルほどであった。これは当時の戦闘機のサイズが全長20メートル近くあったので、戦闘機の約半分のサイズということになる。一つの母艦につめるASの量は戦闘機の1.5倍なので、あいたスペースに弾薬や予備機などの物資を積むことができる。戦闘機の母艦と同じ攻撃力を持つASの母艦を作った場合、戦闘機の母艦の約70パーセントの容量ですむのである。また、巡洋艦などの中型艦艇でも3〜4機ほどのASの運用ができるため、作戦への柔軟な対応が可能になった。
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 (72式)
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| ASを使った戦闘は近接戦闘が主体となり、従来の攻撃機や戦闘艦によるミサイル攻撃用の防御兵器がほとんど無力化された。また、ASのもつ汎用性で戦場によって戦闘用の兵器を使い分ける必要がなくなった。しかし、製造コストが高いため、依然として戦闘の主役は戦闘艦や攻撃機による艦隊戦となっているが、連邦暦283年の戦果を集計した結果、ASによる戦果が従来の兵器の5倍近い数字になっており、戦闘の主役がASになるのも時間の問題と思われる。 |
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ASのコクピットは、視界を確保するためにモニターを多用、ほぼ全周囲に渡る視界を確保している。シート前方にあるコンソールと、HIDに基本情報を表示し、火器の情報、レーダー情報は周囲のモニターに表示される。
ASの操縦のインターフェイスは、基本的には精神感応式を使う。これを使うことによって、スティック式のコントローラーと比べ、大幅に反応速度が向上し、またコクピットの簡略化、コンパクト化にも役に立っている。しかし、精神コントロールは体力を消耗するため、移動時などの補助装置として、スイッチパッドと、ペダルが備えられてるが、これは基礎的な動作しか出来ない物である。火器官制は安全のためスイッチパッドに備え付けられたトリガーによって行う。これは、精神コントロールが暴走した時に武器の暴発を未然に防ぐためのものである。
機体が破壊された場合、コクピット部分を切り離し、生命維持装置として使用する。 |
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