ソノラマ新戦史シリーズの解説3



リロード中です。少々お待ち下さい。




うまく画面が飛ばない時はこちらを押して下さい。














ソノラマ新戦史5


最後の特派員

衣奈多喜男
\560
1988.7初版発行

太平洋戦争直前にヨーロッパに赴任した新聞記者である著者は、ローマよりドイツ、スウェーデンへと 居地を点々としながら、ヨーロッパの戦況を日本へと伝えました。日本が参戦した1941年からは ヨーロッパの戦況は逆に連合軍へと傾いていく、苦戦の状況を故国に伝えることになります。

ローマから戦況を伝えていた著者は、イタリアの降伏とともにドイツに移り、さらにノルマンディからドイツ へ連合軍が進軍してきたために、最後はスウェーデンに移動して活動をしていました。
当時、軍人以外の日本人はヨーロッパにはそれほどおらず、民間人の視点で戦争を記録した 貴重な1冊と言えます。

特にノルマンディ上陸作戦を身近で見た日本人は数少ないと思います。圧倒的な連合軍の戦力 と敗退していく同盟国について克明な記録を残しています。またイタリア防衛を引き受けていたケッセル リンク元帥へのインタビューや、ベルリン攻防戦時の混乱等は、ひじょうに読み応えがあります。
戦記という点では少し毛色が違うかと思いますが、視点を変えたヨーロッパ戦争を読みたいかたは 是非どうぞ。




ソノラマ新戦史13


大空戦

E・H・シムズ
\680
1989.2初版発行

1914年から1970年までの各戦争での空戦に空戦についてを体系的にまとめた一冊です。
第1章:起源と発展、第2章:第一次世界大戦、第3章:第二次世界大戦(第一期)、第4章:第二次世界大戦(第二期)、第5章:朝鮮戦争、第6章:ベトナム戦争と各段階の空戦について章立てして解説しています。

それぞれ各項目について、空戦史での特記事項や、著名な戦闘機乗りのインタビューによって肉付けを厚くしています。
第一次世界大戦時のドイツの名エースだったヨセフ・ヤコブズや、1918年次のイギリスエースのロックフォード、イギリスのスピットファイア乗りのA・C・ディア、ドイツ最高のエースの一人、ギュンター・ラル等です。私自信は空戦の歴史の解説より、こちらのエース達のインタビューのほうがはるかに興味深く読めました。
また、歴史に沿っての空戦史の解説は、あまり詳しくない方には読みやすいかと思います。

書き口が連合軍側(特にアメリカ)寄りなところが少し気にかかりますが、全体的に読み応えのある良書だと思います。ちなみに日本の話は出てこないので注意してください。




ソノラマ新戦史17


太平洋のエースたち

E・H・シムズ
¥650
1989.7初版発行

太平洋戦争中のアメリカ海軍・海兵隊戦闘機パイロット達の空戦記です。海軍の空母パイロットや、対地支援任務や直援等も行なわなければならなかった海兵隊パイロットは、陸軍の戦闘機乗りに比べて撃墜数が少ない傾向にあります(これは日本の空母パイロットにも言える事ですが)。しかし、太平洋全域に渡って、激しい激戦を繰り広げ、また赫々たる戦果を挙げたことは間違いありません。
本書は、大エースというよりは数機〜十数機を撃墜したいわゆる「中堅エース」の空戦を、色々とまとまています。
ミッドウェーから沖縄まで、太平洋の戦場を追うようにエース達の話を一話ずつ進め、日本機や日本艦隊との激戦についてを書き上げています。

本書は日本では珍しく、日本機を敵とした空戦記ですが、当然宿敵となる零戦や陸攻の話についても、敵としての視点から見ることができます。
日本側の空戦記での撃墜記録がそのまま使えないのは周知の事実ですが(空戦記の撃墜数をそのまま鵜呑みにすると、太平洋から連合軍の航空機は全部撃墜されてなくなったことになります)、連合軍も負けず劣らず、撃墜数の上乗せは多かったみたいです。米軍の戦果をそのままつけても、ラバウルの零戦隊は毎月全滅していることになりますから。
ただ、本書を読むと、米軍の戦闘機乗りも決して楽をして戦果を稼いでいたのではないのは、よくわかります。1944年後半以降の錬度のがた落ちになった日本機を迎撃する時期ならともかく、1942〜43年のソロモンでは、両軍とも歯を食いしばっての殴り合いと言っても過言ではありません。
本書はそんな米軍の戦闘機乗りの戦いをパイロットごとに短編でまとめあげて、ほどよく読み応えがあるようにまとめています。特に太平洋戦争中の米空母パイロットの戦記や、海兵隊の戦闘機パイロットの空戦記は、日本ではなかなか少ないため、面白く読めました。
ちなみに、入手は相当困難ですので(苦労しました)、見かけたら即購入をお勧めします。




ソノラマ新戦史28


日本の軍艦

木俣滋郎
¥580
1990.7初版発行

ソノラマ戦史シリーズの中心を成しているのは、日本海軍戦記ですが、本書はそのダイジェスト版のような内容です。日本海軍創設から1945年の終戦まで、主な出来事や艦艇を まとめています。
メインとなるのは、各時代に建造された特色ある艦艇の紹介です。海軍創設時の外国艦中心の時代から、日清・日露・第一次の各戦争次、戦中間の海軍休日時代・無条約時代・ そして太平洋戦争の各期間で、章立てしてまとめています。
中身は海軍の建艦史の初級編といった感じでしょうか。それぞれの紹介記事はそれほど詳しく書かれているわけではありませんが、海軍建艦史を初めて読むという人にはお薦めかと思います。
特に第一次世界大戦期の海軍軍備や事件というものは、最近の太平洋戦争海戦偏重の書籍ではなかなか知る機会が少ないと思います。そういった意味では、満遍なく海軍80年の歴史をまとめているのではないでしょうか?




ソノラマ新戦史47


大艦巨砲主義の盛衰

奥村正武
\690
1992.2初版発行

19世紀より20世紀にわたり、世界の海の主役となった戦艦についての歴史を述べた1冊です。 戦艦は世界の海を制覇し、各国がその能力と数を増すために日夜競いました。しかし、その性能は 歴史の中でほとんど活かされることなく、終焉を迎えていったのです。

本書はその戦艦の誕生と進化の歴史を、主な海戦とともに語っています。
著者は元連合艦隊の参謀の方なので、日本海軍が中心の記述となっていますが、日本海軍の歴史と、その中に戦艦がどのような存在だったのかをわかりやすく述べています。
歴史は「日本海海戦」で大艦巨砲の道を切り開いた日本海軍が結局、その持てる戦艦を活かすことなく崩壊していきましたが、何故そのようなことになったのかをわからせてくれる1冊です。




ソノラマ新戦史49


高速爆撃機「銀河」

木俣滋郎
\520
1992.4初版発行

日本海軍の主力攻撃機として、「一式陸攻」という機体がありました。長大な航続距離を誇り、哨戒活動には これ以上の機体はないといえるほど、成功した機体です。ただ、この機は速度が遅く、防弾がなきに等しいという 欠点がありました・・・。
太平洋戦争で、一式陸攻は連合軍の防空砲化にばたばたと落されていきます。水平爆撃や肉薄雷撃といった 攻撃方法は、艦艇の防空砲火にまともにさらされて、雷撃点につく前に編隊が壊滅するような損害もしばしばでした。

そんな一式陸攻の後継機として登場したのが、本書の主役「陸爆・銀河」です。海軍航空機の命名方法として、 急降下爆撃の可能な機体を「爆撃機」と、そうでない機体を「攻撃機」と命名しています。陸上基地から発進する 爆撃機なので「陸爆」というわけです。ちなみに双発ながら機動性は攻撃機種としては俊敏でした。

「銀河」は奇跡のエンジンと呼ばれた「誉」エンジンを2基も搭載し、速力・機動性とも抜群の機体でした。大型機 ながら3名という少人数の搭乗員ですが、ちゃんと航法員も乗っているため、長距離飛行も可能でした。
問題は、恐ろしく整備性の悪い機体であったこと(稼動率50%を越えることは稀だったようです)、さらには登場が 遅すぎ、大型機の肉薄攻撃などという戦術は、もはや日本軍では不可能であったことです。
それでも銀河はがんばりました。マリアナ沖海戦から始まり、レイテ決戦、沖縄決戦と、太平洋戦争末期に損害を 出しながらも出撃を続けました。
特に有名なのは、連合軍の一大根拠地と化したウルシー環礁に対する特攻作戦「丹作戦」です。大型空母「 ランドルフ」を中破する戦果を挙げました。もっともこの作戦のために、数十機の銀河が失われていますが・・・。

本書は木俣節とも言える、著者の軽快な書き口ですらすらと読めます。姉妹図書に航空戦史の「孤島への特攻」 という本もありますので、両書とも読めば、丹作戦についてはまず理解できるかな?と思います。




ソノラマ新戦史51


空母パイロット

P・T・ギルクリスト
¥1100
1992.5初版発行

日本の戦記ばかり追いかけていると、戦後の空母機動部隊というのが、どのようなものなんか、いまいち分からなくなります。 実際、航空ファン以外は、ジェット機時代の空母の運用というのを良く知りません。偉そうなことを書いている私もそうでした。
ちょっとずつ本を読んでいって少しずつ知識を蓄えていくしかないのですが(実際米空母任務群の資料といっても、湾岸以前はベトナム戦争期の ものばかりです。)、そういう中で本書は意外なほど色んなことが記述してあり、結構勉強になりました。

著者は元々空母戦闘機パイロットで、少将になるまで、空母航空団の司令をはじめ、海軍航空隊の実戦指揮官を歴任しつつ、艦上戦闘機を 飛ばし続けた人です。
SNJテキサン練習機での初着艦から、最後のF−14トムキャットでの着艦まで、筆者が操縦した航空機は、F6Fヘルキャット、T−33シューティングスター(TF−80Cの海軍練習機型)、F9F−2パンサー、F9F−6クーガー(のちにF9F−8も)、T2J−1バックアイ、A−4スカイホーク、F−8Bクルーセイダー(F−8Eへ更新)、A−7コルセアII、F−5Fタイガー、F−15イーグル、F−16ファイティングファルコン、F−106デルタダート、F−104スターファイター、F−105サンダーチーフ等。
途中でトップガンとして仮想敵機航空群の司令を勤めたということもありますが、よくもまあ、これだけの航空機に乗っているなぁと感嘆します。しかも空母の発着艦を始めとした、空母航空隊の運用や技術、ジェット機時代の空母構造や各部署の説明等、盛りだくさんな内容で、読んでいてとても楽しい内容でした。
当然ですが、筆者はベトナム戦争にもF−8を駆って参加しており、空母から何百回と出撃を実施しています。

これだけの戦闘機パイロット経験を持つ戦闘機乗りの自伝はそうはありませんし、経験からくる様々なエピソードもひじょうに興味深く読めます。なかなか読んでお得な一冊です。




ソノラマ新戦史53


イスラエル空軍

H・ハルペリン/A・ラビドット
\750
1992.12初版発行

第二次中東戦争から、現在に至るまで、中東戦域の制空権を握っているイスラエル空軍。しかしながら、 その歴史は常に死闘の連続でした。周辺各国を敵対国のアラブ諸国に囲まれ、保有機数では劣勢に立たされながらも、 装備機の性能とパイロットの技量で常に勝利を続けてきた常勝空軍です。

基本的に輸入しやすかったフランスのミラージュシリーズとアメリカのF−4、F−16を主力機としていますが、それ以外にも 様々な航空機を運用しています。それらのパイロットの空戦インタヴューを集めたのが本書です。
イスラエル空軍の将官は現場叩き上げの士官が多く、現在の空軍首脳部も若い頃はミラージュやスカイホークに乗って、 戦場を舞っていた連中ばかりです。
それらの貴重な空戦記録、特にジェット機での空戦というのは、恐らくアメリカ軍より実績と経験を持っている国ですので、 本当に臨場感の溢れた面白いものばかりが集まっています。

空戦機の乗機も多彩で、ミーティア、ミラージュ、F−4、スカイホーク、CH−52、ストラトクルーザーなんて機体まで出てきます。 ジェットの空戦記としては、ひじょうに読み応えのある既述ばかりでしかもエースクラスの話がどんどん出てきますので、 ジェット戦闘機が好きなら、見かけたら買いでしょう。お勧めの一冊です。







ソノラマ新戦史55


撃沈戦記PART4

木俣滋郎
\600
1993.12初版発行

木俣氏の撃沈シリーズの第四弾、今回も色々マイナーな艦船の最後やピンチが掲載されています。
特に今回は書き下ろしが多いため、『シーパワー』誌で読んでいたファンも、新作が多くて納得の一冊になっています。

今回、面白いなと思った艦艇は、イタリア潜水艦『ガリレオ・ガリレイ』(紅海で自沈に近い状況で沈んでしまいました)、ユーゴスラビア巡洋艦『ダルマチア』(旧ドイツ帝国巡洋艦。のちにドイツに接収されて防空艦として活躍)、オーストラリア軽巡『ホバート』(開戦より終戦まで太平洋戦域で戦った殊勲艦)、日本救難曳船『長浦』(ラバウル北方で悲劇的な最後)、南ベトナム砲艦『ヌータオ』(南沙諸島の紛争で撃沈)等でしょうか。

撃沈戦記シリーズは、PART1はかなりメジャーな艦艇が中心でしたが、今回の4になると、ほとんど知られていないような、マイナーな艦艇が中心となってきます。まあ、それが面白いといえば面白いのですが。
文体は、いつもの木俣節なので、ひじょうに読みやすく、また平易になっています。入門書とするにはお勧めしないマイナー艦艇ばかりですが、読み物としてひじょうに面白いものだと思います。







ソノラマ新戦史57


戦艦対戦艦

三野正洋
¥820
1994.1初版発行

三野氏の戦艦についての著書です。戦艦の生い立ちや、日露・第一次・第二次の戦艦の戦い、各国の代表的戦艦についてのカタログ比較等を行なっています。私は兵器のカタログデータというものに、あまり愛着を感じていないため、カタログ同士の比較を見ても「ふ〜ん」で済ませてしまうほうですが、好きな人にはきっと面白いんだと思います。まあ、確かにスペック系の本集めたときもありましたし。

戦艦について軽く調べるときなんか、手に取ってパラパラめくったりする使い方で私は愛用していますが、ちゃんと読むとそれなりに中身が沢山詰まった本です。大艦巨砲が好きな人なんかにお薦めかもしれません。
ずらっとアメリカのBBナンバーが並んでいるあたりとかでしょうね。




ソノラマ新戦史64


造船仕官の回想(上)

堀元美
\750
1994.8初版発行

日本海軍の各種士官の中で、造船士官というのは一種特殊な兵科です。のちの海軍短現士官 等もそうですが、普通の大学(といっても東京大学工学部にほとんど限られますが)を出た後、兵学校 に入らず、最低限の士官教育を受けた後にそのまま任官する士官です。
そのため、娑婆っ気が抜けきらず、あちこちでいろいろと騒動を起こしたりする姿をユーモラスに描いた のが本書です。

造船士官というのは、なかなかピンと来ない兵科です。名前の通り、艦を始めとして、各種の海軍兵器を 作るのですが、当然前線にいかないですし、基本的に技術士官なのであまり表に出てこないものです。
筆者は丁度ネイバルネイビィ(条約下で海軍の拡張がほとんど行われなかった時期)に、若手として各種の 改装工事や新型艦の建造に現場を走り回っていました。本書でも「長門」や「蒼竜」の艤装の話や、「日進」 の浮揚工事なんかの話が軽いタッチで書かれています。

また、まったく戦場のシーンがないわけではなく、本書では上海事変の際に工作艦に乗って大陸に出征し、 いろいろな河川戦闘の戦訓を得ています。
太平洋戦争の話は下巻に収録されていて、航空機の話もそちらが中心となっているのですが、本書では 平時の海軍の悲喜こもごもの話がいろいろ載っていて、たいへん面白く読めると思います。




ソノラマ新戦史65


造船仕官の回想(下)

堀元美
\750
1994.8初版発行

前巻が戦前の海軍休日時代から、太平洋戦争の出師準備までだったのに対し、下巻は戦時中の 呉海軍工廠の動きを中心にまとめられています。
開戦時は上海の現地工場で迎えた筆者ですが、その後は呉に戻って、損傷艦の修理や、特殊な兵器の 開発に携わるようになります。
本書は海軍に興味があるのであれば、色々と面白いことが書いてあります。特殊潜航艇、第111号艦、短20センチ砲、 曳航油槽船、運貨艇、一等輸送艦(特々)、二等輸送艦(SB艇)、特四式内火艇、伊404潜水艦、回天、震洋等々。
本書を読むと、開戦後に日本海軍が戦況回復のために様々なアイデアを練り、そのままアイデア倒れになっていったかという のが良く分かります。
終戦間近になると、艦艇より航空機増産に重点が置かれ、筆者の川西の紫電改の生産工場を指揮することになります。 空襲を浴び、生産システムが崩壊していく中で終戦を迎えるまでの、筆者の太平洋戦争での顛末がまとめられています。

華々しい海戦や航空戦という描写には無縁な本ですが、技術者・後方の海軍工廠という視点から見た本書はひじょうに 興味深いものです。
「鳶色の襟章」という原本のかなり著名な本ですが、既に絶版となっていますので、本書を古本屋で見かけた方はパラパラ めくってみるだけでも面白いと思います。




ソノラマ新戦史66


最後の飛行艇

日辻常雄
\757
1994.9初版発行

著者は海兵64期で、昭和12年に卒業してから終戦まで、水上機・飛行艇一本でずっと過ごされた方です。特に昭和16年からは 飛行艇に転向し、終戦まで飛行艇で常に最前線を飛んでいた飛行艇搭乗員の第一人者といえます。
飛行艇は「K作戦」(フレンチフリゲート環礁を利用したハワイ奇襲作戦)や、「丹作戦」(陸爆銀河によるウルシー環礁奇襲作戦。 二式大艇は誘導に参加)等が有名ですが、南東や沖縄海域等での哨戒・索敵作戦に参加して帰ってこなかった機体は、あまりにも 多いものでした。飛行場のいらない便利な機体とはいえ、鈍重な面は拭い去れず、戦闘機に捕捉されればまず帰投は難しかったため です。

著者はそんな中、緒戦の南方攻略作戦、南東ソロモン海域での索敵哨戒、南西方面での対潜哨戒、詫間航空隊で飛行長として、 梓攻撃隊を送り出す作戦指揮まで取っている方です。
飛行艇戦記はあまり数がないのですが(知っている限りで4冊程度です)、本書はそんな中で、作戦の中 の飛行艇の位置付けがしっかり読み取れる名著だと思います。

特に飛行艇の作戦したほとんど全戦線の記述がある(南西方面は静かだったので端折られていますが)のは、なかなか貴重でしょうか。 また、飛行艇に乗る前、大陸沿岸での水上機母艦「神川丸」においての作戦も、なかなか資料が乏しく、面白い記事が多いです。
なかなか読み応えのある一冊といえるでしょうか。




ソノラマ新戦史71


飛燕対グラマン

田形竹尾
\980
1995.3初版発行

本書はタイトルは「飛燕」となっており、クライマックスもたった2機の飛燕で、30機以上とのグラマンとの空中戦のシーンに あるのですが、それ以外はほとんど飛燕は出てきません。
登場シーンが多いのは97戦で、その前に乗っていた92戦、95戦での空中戦シーンが分厚い本書の半分近くを占めます。
飛燕に乗り出したのは、台湾に配備されて「台湾沖航空戦」での迎撃シーンより。その後、本土防空戦(特攻待機)でも、飛燕に 乗っていました。

教官配置や、試験飛行官の配置が多かった著者ですが、総飛行時間は4000時間を越え、終戦時の准士官としては、文句なしの 最熟練パイロットの一人です。
昭和18〜19年という、熟練パイロットがビルマやニューギニアで次々と散っていった時期に、比較的後方にいたという運もありますが、 著者の技量が生き残った最大の要因となっています。中盤のクライマックスの空中戦では、著者の技量が存分に描かれています。

本書のもう一つの特徴は、著者が所属した第八飛行師団より出撃した、「全ての」特攻作戦機について記述していることです。これは 著者の長年に渡る調査と、現場にいた体験より描かれたものですが、この記述は特攻作戦の資料的価値がひじょうに高いと思います。

厚手の本ですが、読み応えは充分です。




ソノラマ新戦史72


空母「瑞鶴」

神野正美
\980
1995.4初版発行

空母「瑞鶴」の戦記は、結構色々出ているのですが、このソノラマ版は「瑞鶴」最後の戦いについてを詳細にリポートしています。
日米空母最後の戦いとなった「エンガノ岬沖海戦」での、「瑞鶴」を始めとした小沢艦隊の戦いぶりを、よくぞここまで!と思えるほど調べ上げています。

日本の軍艦で好きなのを上げてみてください。というと、「大和」「武蔵」が来て、次が多分「雪風」で、その次に「瑞鶴」でしょうか?ハワイ空襲を初陣として、 ミッドウェーを除く主要な海戦にほとんど全て参加し、日本機動部隊の中核として太平洋戦争を戦い抜きました。
搭載機数、擬装装備等、日本の空母の完成体として誕生し、次々と量産されるアメリカ海軍のエセックス級に唯一対抗できるクラスでした。

本書は、捷号作戦に参加するために出港準備をするところから始まって、フィリピン東方への艦隊の進出、索敵任務と米機動部隊への攻撃隊の発進、 米艦隊に発見された後の防空戦闘と、空母4隻の撃沈、残存艦艇の本土への帰投と、生き残った瑞鶴乗組員のその後についてまで、時系列で細かく まとめてあります。
エンガノ海戦を調べる際には、有無を言わせない第一級の資料でしょう。記事の出所がどこかもしっかりと記載されていますので、原書調査という観点からも 貴重な資料となっています。それになにより、圧倒的な乗組員のインタビューが、本書の価値をさらに高めています。
客観的に小沢艦隊の行動をまとめている点と、迫真性溢れる乗組員の証言が、ひじょうに臨場感をたかめています。お薦めの一冊です。




ソノラマ新戦史78


人間魚雷「回天」

神津直次
\800
1995.9初版発行

太平洋戦争末期、追い詰められた日本海軍が誕生させた最悪の兵器「回天」。一度発進したら、まず間違いなく戦死する悪夢のような兵器です。
100%生還できない兵器としては、特攻ロケット機「桜花」やレシプロ特攻機「剣」がありますが、これらは航空機です。海上特攻兵器としてはモーターボート の「震洋」がありますが、これは引き返したりもできる一応機動運用のできる兵器でした。しかし、「回天」は一度発進したら、二度と帰ってくることはできません。
しかも極めて機動力が低く、タイミングを間違えてもやりなおしの利かない・・・そういった兵器としての完成度も考えたくもないような兵器でした。

筆者は予備学生として対潜学校に入り、そのあと回天のほうに回された方です。回天搭乗員の戦死者は事故も入れて106人。発進する方法が、終戦までは潜水艦 攻撃しかなく、稼動潜水艦も底をついていたため、ほとんどの方は基地回天隊や水上艦回天隊として生き残り、筆者もその一人です。
ただ、それでも106人です。攻撃前後に撃沈された潜水艦乗組員も含めると、数百人の犠牲者が出ています。この方たちは、出撃したら決して生きて帰ってこない 作戦に出て行った人たちです。
私は特攻作戦というものについて、どのようなものかまったく考えも付かない世代の人間ですが、出撃せずに生き残った筆者も最終章で特攻観について書こうとして、 かなり苦労されています。実際出撃した人でないと、分からない世界なのでしょう。しかし、このような死に方をした人たちがいたことは、忘れるべきではないと思います。

本書は殺伐とした「回天」という兵器をテーマにしていますが、当時の訓練生達がどのように生きていたのか、また「回天」というものがどのようなものだったのか、比較的 明るいタッチで書かれています。
かなり軽い文章でもあったので、一気に読みきることが出来ました。特殊潜航艇の本は数冊読んだことがありましたが、「回天」についてのみかかれた本というのは、 本書が初めてだったため、かなり興味深くもありました。一度読んだほうが良い本かも知れません。




ソノラマ新戦史93


湾岸戦争兵器ハンドブック

三野正洋/深川孝行/仁川正貴
\780
1996.12初版発行

ハンドブックシリーズの3作目、今回は1990年から1991年にかけて勃発した湾岸戦争に前半半分、後半は1980年に発生したフォークランド(マルビナス)紛争について解説されています。
この二つの戦争はベトナム戦争後に発生した大規模正規戦の代表的な戦争です。アフガンやカンボジア、アフリカ・南米の幾つかの国では内戦が起きており、現在も続いているものもありますが、これらは基本的に正規軍対ゲリラ戦という形式を取っています。

このハンドブックシリーズは基本的に戦争勃発の経緯とその経過を解説したパート、個々の戦闘について分析したパート、兵器を分析・紹介したパートの3部攻勢に分かれています。基本的な紹介分析書籍なので、それほど細かなところまで解説しているわけではないですが、新聞や簡単な解説程度の知識しか持っていない場合は、本書は色々な点を紹介しているので、なかなか面白いかと思います。

湾岸戦争は3つの段階に分かれます。一つはイラクがクウェートに侵攻した段階、これは、イラク軍の奇襲により即時に終了しました。クウェート軍はほとんど抵抗できず、わずかな航空機がサウジアラビアに脱出できたぐらいです。
二段階目は多国籍軍が結成され、イラクに対する空襲の段階とイラク軍のスカッドミサイルの反撃の段階です。このときはスカッドミサイルや迎撃のパトリオットミサイル、米艦隊よりのトマホークミサイル等、当時の新聞やニュースで連日報道されたミサイルとステルス攻撃機等の段階です。
第三段階は多国籍軍によりイラク侵攻作戦です。これは圧倒的な多国籍軍の攻撃で、イラク軍はあっという間に壊滅し、湾岸戦争は終結することになります。

もう一つのフォークランド紛争(アルゼンチン名ではマルビナス紛争)は、英軍の機動部隊とアルゼンチン空海軍の迎撃戦を中心に紹介されています。特にこの戦争ではVTOL戦闘機ハリアーの活躍と、アルゼンチンの対艦ミサイル「エグゾセ」の威力が有名です。アルゼンチンはたいした数のエグゾセを持っていませんでしたが、わずかなミサイルは英軍の駆逐艦やコンテナキャリアーを海の底に沈めました。
いまではフォークランド紛争の全体的な解説書はなかなか見ることができませんが、本書は簡単なレベルでの解説が行われており、なかなか興味深く読ませていただきました。

値段も手ごろで、二つの戦争の全体的な分析が読めるこの本はなかなかお徳かな、と思います。湾岸戦争やフォークランド紛争で何か情報が欲しいときなんか、私は最初にこの本を見ていますし、この本で わからないことは逆に本気で調べないといけないかな、とわかるので。
この二つの戦争に興味のおありの方は手にとって見てはいかがでしょうか。




ソノラマ新戦史94


日本の軍用機(海軍編)

渡辺洋二
\750
1997.1初版発行

太平洋戦争中の日本海軍機の主要なものを網羅した一冊です。どの辺が網羅っぷりかと申しますと、「九七式艦上攻撃機」と「九七式二号艦上攻撃機」が分けてあったり、愛知の「二式練習飛行艇」がちょこんと掲載されていたり(かなりマイナーな機体のはずです)、輸送機のコーナーにちゃんと「晴空」が載っていたりと、まあかなり深いところまでまとめています。
これで、九八式夜間偵察機や、九九式中型攻撃機まで載っていたら、文句なしに買いの1冊ですが、さすがにそこまでマイナーな機体はありませんでした。

著者はソノラマでも航空モノを沢山出している渡辺洋二氏ですので、中身についてはかなりのものと思います。文庫という形式を取っているため、ハンドブックから脱却できていませんが、それは仕方ないことですし。
しかし・・・このシリーズ、結局「陸軍編」は出なかったんですね・・・。




ソノラマ新戦史99


現代兵器事典

三野正洋/深川孝行
\724
1997.6初版発行

新戦史シリーズ最後の作品。これが最後のソノラマ新作となりました。内容は湾岸戦争やチェチェン紛争を踏まえた、現代の兵器についての用語解説です。
まあ、著者が書いているように、日本での軍事用語はメチャクチャな状態となっています。まともな解説書もないし、勉強するという機会がまずないため。 でもそれはそれで別に誰かが困っているわけではないですし、そういう状態に陥っているジャンルは他に幾らでもあるので私的には構わないと思うのですが。

とりあえず、現代兵器の用語の解説ですが、例えば陸戦兵器や艦艇のクラスの名称、ミサイルの種類なんかの解説をしています。
これはこれで、超初心者向けな気がしますが、そういう意図で書かれたのでしょう。私的に新発見のネタはほとんどありませんでした。
ミリタリー系に入ったばかりの方だと、相当役に立ちそうなつくりになってますけどね。

例えば、「戦車マガジン」や「世界の艦船」を読んでいて、「??」という用語が出てきた時とかに、便利そうな本です。そういう意味ではこの手の本は見たことないので、 価値があるかも知れませんね。もうミリタリーに詳しい方は多分積極的には買わなくて良い本かと思います。