ソノラマ航空戦史1 |
十数年に渡って刊行される戦史シリーズの第一作は、不朽の名作「零戦」です。 零戦関係の書籍はそれこそ雲霞の如く出版されていますが、その何れもがこの書 の何らかの影響を受けているでしょう。取り敢えず、物心ついて最初に戦史に興 味を持った時、ほぼ9割の人が最初に出会うのが「零戦」か「大和」だと思いま す。小学校の図書館にある戦争関係の本もこ2つがテーマのことが多いですし。 この書は初版が昭和26年発行で、そういった意味では古い戦史ということに なります。データ的には色褪せている点も出ていると思いますが、その中身につ いては非常に深い内容です。単に零戦神話をつらつらと書き連ねているだけでは なく、その強さと弱さ、そして零戦の先輩や後継機達の戦いについても言及され ています(元のタイトルは日本航空小史ですから)。作者はそれぞれ零戦の開発 面と作戦面から大きく関わった方々ですし、マクロな視点から海軍航空政策を見 るためには一番良い書の一つと言えるでしょう。 本書は6部構成で、零戦以前の航空史、零戦開発史、戦争前半の圧倒的な活躍、 戦争後半の苦戦、零戦の後継機の戦い、結びとなっています。 手に取って、ぱらぱらとめくってもらえばわかるのですが、非常に資料が多い。 特に文書的な資料はたいへん参考になります。ただ文書的には少し読みづらい点 もあり、テーマ的にも今では在り来たりなものとなってしまったので、手が出難 いかもしれません。ですが、日本の戦史書を語る上では欠かせない一冊でもある ので一度御読み下さい。この本に関しては普通の書店でもまだ充分手に入ります。 |
ソノラマ航空戦史3 |
日本機動部隊が戦った幾度の海戦の中でも戦局の転換点となった、「南太平洋 海戦と「マリアナ沖海戦」について、機動部隊の航空参謀だった著者二人がまと めあげたものです。作戦面から二つの海戦を捉えており、海戦の全体像が簡潔に まとめられています。また、ミッドウェー海戦以後の機動部隊の動きも詳細に述 べられ、海軍の作戦方針も眺めることのできる良書です。 この本でもう一つ圧巻なのは、「あ号作戦」の精密な資料群です。とにかく数 字資料が豊富で作戦命令、作戦編成のデータも充実しています。マリアナ沖海戦 については本書抜きには語れないでしょう。航空戦史シリーズの初期作品には、 こういった戦後しばらくして発行された名著の再版が多いのですが、この書もそ の一つに挙げられます。 |
ソノラマ航空戦史4 |
日本の航空戦で最も人気のある在ラバウル海軍航空隊の興亡を詳細にまとめてあ り、航空戦史の中でも屈指の名書と呼べるものです。特に巻末に付いている南東方 面航空作戦経過概要には資料的価値も高く、本編を読む際の数値的裏付けにもなり ます。
ラバウルに日本海軍は航空隊の総力を結集して、南東方面の戦況を支えようとし
ましたが、結局は連合軍の物量に押し切られ航空隊をすり潰すことになりました。
この書にはラバウルに終結した航空隊が網羅されており、どの程度の戦力が揃って
いたのか、どのような航空作戦が実施されたのかが時期を追って記述されており、
大変勉強になります。 |
ソノラマ航空戦史5 |
僕の知っている限りでは最も詳しいマレー沖海戦の本です。作者自身も鹿屋空の 一式陸攻の搭乗員としてこの作戦に参加しており、小隊長としてレパルスに雷撃を 行っています。この書のいいところは単に作戦に参加した作者の手記に留まらず、 作戦に参加した陸攻隊の隊員の証言や手記、イギリス側の資料も掲載、参照して広 範囲からこの海戦を捉えている点です。データ的な面からも非常に精巧な調査がう かがえ、この一大海戦絵巻を充分堪能することができます。 ただこの書は既に新装版で再版されたこともあり、航空戦史の方では手に入れる ことはほぼ不可能と思われます。僕もかなりがんばったのですが、この書に関して は航空戦史シリーズ版を入手できず、新装版の方を元に感想を書いています。 ソノラマ戦史シリーズで太平洋の海戦一つを主題として捉えたものに「ミッドウ ェー」「マリアナ沖海戦」「レイテ沖海戦」「サボ島沖海戦」島が挙げられますが、 いずれも秀作ぞろいなので一読をお勧めします。特に本書は資料的価値と共に、海 戦に参加した作者の迫力ある戦闘描写も挿入されており、雷撃シーンの迫力もなか なかです。もちろん雷撃隊のみではなく、水平爆撃隊についてもしっかりとページ を割いてあり、潜水艦や水上部隊の行動も含めて海戦全体を眺める事ができます。 戦史シリーズの中でもかなりの名書ではないでしょうか。 |
ソノラマ航空戦史6 |
ウルシー環礁への日本海軍の攻撃作戦を追いかけた書です。中心は「銀河」
による片道攻撃、第一次から三次までの「丹」作戦です。 |
ソノラマ航空戦史8 |
第二次世界大戦最高のタンクキラーとして名高いルデルの空戦記です。 スツーカを駆って2530回もの出撃を果たし、義足となってまで戦い 続けた記録が克明に綴られています。 ルデルが活躍したのは1943〜44年が中心ですが、それは圧倒的 なソ連機甲部隊の優勢が確立され獲物に事欠かなくなってきたためでも あり、西へ西へ撤退しながらの必死の反撃が続くのです。 この時期ではJu−87は既に時代遅れの機体となってますが、この 遅い機体で最後まで戦い続けたドイツのタンクボマー達の苦闘が余す所 なく描写されている名著です。 |
ソノラマ航空戦史9 |
開戦後、日本軍の攻勢に押される一方だったアメリカ軍は国民への士気高揚策 として、日本の帝都東京に奇襲攻撃を仕掛ける事としました。方法は二通り考え られ、ソ連の極東基地からの奇襲と、空母機動部隊を用いる方法です。ソ連領を 利用する方法は政治的な困難から避けられ、空母機動部隊を活用したヒットエン ドランを仕掛ける事となりました。しかし、艦載機の航続距離を考えると、相当 日本近海まで接近せねばならず、奇襲の困難性が高い事が問題となりました。そ のとき、海軍作戦参謀をしていた、フランシス・ロー大佐が中型爆撃機を空母に 搭載して、空襲を仕掛ける事を思い付いたのです。 搭載されることとなった爆撃機はB−25「ミッチェル」。アメリカ最初の航 空優勢主義を唱えた軍人の名を抱いた爆撃機で、その高速と頑丈性を買われて搭 載が決定しました。空母の短い甲板から発艦できるのか?空襲後の搭乗員の回収 方法は?日本の警戒線は?と、次々と難問が出てきましたが、それを克服し、4月 17日の朝、「シャングリラ」より発進したB−25、16機は東京に進軍してい ったのです。
本書は幾つかのパートに分かれています。メインは最初の部分、実際にB−25
に登場して、東京を空襲した著者の体験記です、任務を言い渡された時の驚愕、不
安定な作戦に対する動揺と冒険への高揚心、東京上空での戦い、重慶へ向けての苦
しい脱出行等、迫真の戦いが記述されています。 |
ソノラマ航空戦史10 |
本土防空戦を通史的に捉える名著。日本防空部隊の戦闘状況がよく理解でき
ます。少ないページに多くのことが記されている事もあり、個々の記載事項に
ついては情報量が薄い点もありますが、防空戦史を読む際の基本書としては最
適です。 |
ソノラマ航空戦史12 |
スピットファイアを駆ってドイツ戦闘機隊と渡り合った自由フランス空軍のエ ース、クロステルマン中尉の空戦自伝記です。1942年からドイツ降伏まで、 スピットファイア、タイフーン、テンペストとイギリスの主力戦闘機を操って、 ドイツのメッサーシュミットやフォッケウルフと死闘を繰り広げました。 本書は何月何日に何があったかという、日記的な形式で記述が続けられていき ます。その間、ドイツの封鎖突破船攻撃や、ファイタースィープ、重爆直援、対 地支援といった各種任務を果たしていきました。もちろん、事故等で乗機を失い、 何回か入院もしている生粋の戦闘機乗りです。連日の出撃を繰り返し、ドイツ戦 闘機に苦戦しながら、少しづつ戦局を盛り返していくのが手に取るようにわかる、 全編空戦シーンの面白い自伝に仕上がっています。 次々と仲間を失いながらも、勝利に向って飛び続ける戦闘機パイロットの闘魂 が良く表れた良書です。自由フランス空軍の空戦記もなかなか見つからないので、 その点からも貴重な一冊と言えます。 |
ソノラマ航空戦史14 |
英書名は「WAR IN STRINGBAG」といいます。ストリングバックとは英語で買物カゴの 意味で、英軍の雷撃機「ソードフィッシュ」の愛称です。なんでも積み込んで発進するという ところから、この名前がつきました。
複葉・固定脚・固定ピッチプロペラ・開放式コクピットという、明らかに時代遅れの艦上機で
ありながら、WW2の最初から最後まで戦った名機のひとつです。後継機として「アルバコア」
「バラクーダ」と作られましたが、それらよりもはるかに愛用されました。
筆者は開戦時、空母「カレイジャス」に乗り組んでおり、対潜哨戒任務についていましたが、
開戦後すぐに「カレイジャス」は沈没、その後は陸上基地からダンケルク撤退の支援をした後、
新鋭空母「イラストリアス」に乗り組み、地中海で奮戦します。地中海の「イラストリアス」での
活動は、有名なタラント空襲を始めとして、マルタ島補給戦やギリシャ戦です。
雷撃機の戦記というのは、戦闘機や爆撃機に比べて、比較的数が少ないように感じます。
もともと雷撃機というのは他の2機種に比べて用途が限定されるため、機数が少ない上に、
酷使されて消耗しているからです。 |
ソノラマ航空戦史13 |
数多い戦史シリーズの中でも、この書をお気に入りにしている人は多いと思 われます。僕も戦史シリーズ200冊の中でかなりポイントの高い一冊です。 タイトル通り、第二次世界大戦時の北欧の航空戦についての書です。北欧三 国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)の航空隊の発祥から、その活 動をしっかり読み取る事ができます。北欧の航空戦といえば、ソ連とフィンラ ンドが戦った2度の冬戦争が頭に浮かびますが、本書のメインもやはり冬戦争 です。日本では駄作機といわれているB−239「バッファロー」の活躍や、 あまり有名ではないフィンランド国産の「ミルスキ」シリーズ、イタリアのフ ィアットG−50、フランスのMS−406を改造したラグ・モラーヌ等、日 本ではあまり聞かない機体が次々に登場してきます。とにかく手当たり次第と いってもいいような集め方で北欧三国は軍備を揃えたので、その空軍はまるで 航空ショーを見ているかのように色んな機体が集まりました。
もちろん、北の果てで死闘を繰り広げた独英ソの航空機についての記述もあ
ります。もっとも、フィンランドはドイツのDo−17やMe−109G、イ
ギリスのハリケーン1型、ソ連のSB−2やI−153等を運用しているので
同じ国で作られた機体が戦うといったことがしばしば起っています。 |
ソノラマ航空戦史15 |
著者は503空で彗星を駆ってマリアナ沖海戦に参加し、その後は381空 で南西方面で行動された方です。503空はマリアナで壊滅的損害を出し、作 者はビアク島やマクノワリで苦闘しながら、381空の特攻待機で終戦を迎え ます。 後書きでも述べられているのですが、本書は大空戦録というより、1下級搭 乗員より見た敗戦への記録です。圧倒的な物量に押される日本軍や、南西方面 での占領統治に状態、わずかに残った南西方面航空部隊の活動、終戦後の捕虜 生活等、。どちらかといえば地味な一冊となっています。しかし、作者は作戦 を分析するような書を作りたいのではなく、1少年兵が見た戦争の実状、下級 兵達の戦いをまとめたかったのです。戦記的には盛り上がるところも少なく、 三分の一は捕虜生活についてまとめられていて、実際に彗星が活動するところ はあまりありませんが、兵士の視点から太平洋戦争を見るということに関して は、成功している1冊です。本書を求める時に求めているものと視点が違う方 もおられるかもしれませんが、間違いなくしっかりした戦記の一冊です。 |
ソノラマ航空戦史16 |
アメリカの冒険飛行家、アメリア・イヤハートやイギリスのエリイ・ジョン ソンと並ぶ、最も有名な女性飛行士がドイツのハンナ・ライチェです。天才パ イロットとして、数々のグライダー記録を打ち立て、戦後はインドやガーナで グライダー学校を設立して、その航空発展と青少年教育に貢献していきました。 ハンナ・ライチェはドイツ・グライダー研究所に所属して、各種のグライダ ーや新機構の航空機(その中には、ヘリコプターやロケット機も含まれます) のテストを実施し、各国の航空競技会に参加して次々とグライダー記録を打ち 立てていきました。本書はそれらの戦前の輝かしい時代から、戦争中のV1ロ ケットの複座機の実験、陥落直前のベルリンへの有名な飛行から、終戦で終っ ています。 ハンナ・ライチェを有名にしたのは、そのグライダーの天才的腕前もさること ながら、やはり最後のベルリン飛行でしょう。各種の戦史にそのことは書かれ ており、彼女をヒトラーの女友達としてしまったのです。本書で最も強調して いる点はそこにあり、彼女は決してヒトラーのために飛んだのではなく、リッ ター・フォン・グライム上級大将の命を受けて飛んだにすぎないのです。戦後、 特に東側で、ファシストの証言者という役割で彼女のことが取り上げられ、色 々の誹謗や誤解を生みましたが、本書では彼女が唯一この自伝でのみ明かす形 で、その最後の飛行について一章を割いています。 また、本書にはドイツ空軍の著名なパイロット達や将官が次々と登場していま す。本書自体は彼女の航空に対する自伝記としてまとめられているのですが、 歴史的な価値の非常に高い一冊です。空に一生をかけた女性パイロットの生き 様が本書では生き生きと描かれています。 |
ソノラマ航空戦史17 |
特殊部隊というのはミリタリー関係の中でも、特にファンの多いジャンルのひとつです。最精鋭の隊員
が、圧倒的に不利な中、鍛えぬいた戦闘力で困難な目的を達成するという、ドラマ性がファンの心
を強く掴んでいるのでしょう。 |
ソノラマ航空戦史18 |
戦史シリーズでも多くの著作がある奥宮正武の自伝記です。 |
ソノラマ航空戦史21 |
本書は大本営作戦部に務めていた作者が戦略、軍政面から見た太平洋戦争の通史 です。日本海軍の戦史では連合艦隊の立場からみた書は数多くでていますが、それ に比較して軍令部の立場からみたものは少ない気がします。戦略なき戦いだったと 言われる太平洋戦争に対して、軍令部がどういった見通しを立て、戦力運用を試み たのかを一端を見ることができます。 各時期における太平洋戦域の状況と、各種の作戦に対する軍令部の見解が述べられ ています。本書で特徴的なのが潜水艦作戦と対潜作戦の失敗の原因が、軍令部の作戦・ 戦力整備指導の誤りにあると認めている点です。実際、戦史を読むと上層部の作戦 指導に致命的なミスがあった、と実戦部隊の戦記ではよく記述されていたのですが、 僕自身はその書を読んでその裏付けが取れたと感じました。 視点を変えて戦史を読むといった点からみて、本書は一つの指標となる本と言えま す。また軍令部の裏話的な記述も多く、この書を読んで初めて知った点も多々あり ました。どちらかといえば地味な書なのですが、戦略面から戦史を捉えたい人には かなりお勧めです。 |
ソノラマ航空戦史22 |
まず、この本が最初に刊行されたのは、昭和28年です。その点を確認して
から読むことをお勧めします。 |
ソノラマ航空戦史24 |
ソノラマシリーズの中でも最も評価の高い1冊でしょう。初版は昭和28年 に刊行され、50年に新版が出ています。その評価の高さからソノラマで文庫 化されることになったのです。 太平洋戦争中の海上護衛について、最も最初に深く纏め上げた一冊です。航 空戦史のほうでは入手が難しくなりましたが、新装版でも再版されているので、 そちらでお求めになるのが良いでしょう。とにかく日本海軍の作戦について、 知りたいなら是非一度は読んでおきたい書です。 作者は海上護衛総隊の参謀を務めた方で、日本海軍で数少ない海上護衛のつ いて見識のあった方でしょう。本書で有名な点が菊水作戦について徹底的に批 判していることです。日本海軍最後の水上作戦でしたが、少なくとも結果は米 機動部隊がほとんど損害もなく、勝鬨を上げただけでした。残り少ない燃料を このような無駄な作戦に使用した点を、戦略的見地から非難しているのです。 本書を読む限り、日本の海軍中枢が如何に戦略的視点を持っていなかったかが 分かってきます。 本書は血沸き肉踊るといった海戦シーンとは無縁です。開戦時から既に敗北 が始まっていた海上護衛について述べているため、負け戦が続くといっても 過言ではありません。しかし、日本がどうして負けたのかについて、その本質 をついている書です。日本海軍について勉強するのなら、まず最初に読む一冊で しょう。 |
ソノラマ航空戦史27 |
沖縄戦で特攻機と死闘を繰り広げた米駆逐艦「アーロン・ワード」の戦記です。レーダーピケット艦
として警戒配置についていた「アーロン・ワード」は、次々と襲い掛かる特攻機の猛攻にさらされ、
一時は艦の放棄直前までいったのですが、乗員の苦闘の末、なんとか戦域離脱に成功した艦です。
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ソノラマ航空戦史29 |
ソノラマ戦史には結構、朝鮮戦争の本が出版されていますが、これはその最初の 一冊です。朝鮮戦争開始から休戦までの南北の空戦の経緯を簡潔にまとめています。
朝鮮戦争は1950年より3年間戦われました。その時代の空軍は第二次世界大戦
のレシプロ機の時代から、ジェット機の時代へとの過渡期となっています。そのため、
参戦航空機も第二次世界大戦で活躍したレシプロ機から、第一次世代のジェット機へと
移っていくことになります。 基本的にMIG15の迎撃戦は、あまり国連軍に損害を与えるものではありませんでした が、国連空軍の戦術活動の阻害には大きく貢献してます。また、朝鮮戦争でのハイライト の一つとして、「MIG対セイバー」の空中戦があります。キルレシオはセイバーの ほうが良かったようですが。ちなみに、十数年後、MIG21対F−4という構図と なって、ベトナム上空で双方の航空機は再び対決するわけです。 この戦争は第二次世界大戦を引きずった最後の陣地戦と言われてます。この後の戦争は 空中機動を始めとした、立体機動戦と遊撃戦にシフトしていくことになるので。 戦争の意義はともかく、戦史ファンには色々、興味を引く点のある一冊となっています。 |
ソノラマ航空戦史30 |
太平洋戦争を幾つかの段階に分けて通史的に捉えた書です。本書は真珠湾攻撃 から南太平洋海戦、「ろ号作戦」までの海軍作戦について概説的に解説されてい ます。歴史書としてではなく、あくまで戦略面、戦術面で太平洋戦争を簡単に読 み解くことのできる書は意外とないもので、本書も重宝できる一つです。 また、タイトルにある通り、上下巻で10人の提督の紹介もなされています。 上巻である本書には山本五十六、南雲忠一、近藤信竹、井上成美、草鹿任一の5 人の戦歴と作戦指導についても語られています。 比較的簡単な基本書ですので、ある程度太平洋戦争について研究した方にはも のたりないと思われます。これから本格的に始めようと思われる方にはおすすめ です。 |
ソノラマ航空戦史31 |
上巻がミッドウェーからソロモン戦が始まった頃までを紹介していたのに対して、下巻では
「い」号作戦より、中部太平洋での敗退、フィリピンから沖縄へと繋がる後退、本土防衛戦の苦闘
より敗戦へと怒涛の如く進みます。
下巻で紹介されている提督は、古賀峰一、豊田副武、小沢治三郎、栗田健夫、大西瀧治郎と
太平洋戦争でのキーマンとなった提督5人です。うち三人は連合艦隊司令長官を経験しています。
また、その他の提督として、簡単ですが、塚原二四三、角田覚治、山口多聞の航空部隊を率いた
3人の提督についての文章もあります。 |
ソノラマ航空戦史32 |
ドイツが対戦末期にロンドンに対して実施したミサイル攻撃、その主役となったのが 集合体4号(A4)、またはヒトラーの名付けた報復兵器2号(V2)です。 フォン・ブラウンやドルンベルガーを始めとするドイツのロケット開発の歴史について その短所からドイツの敗戦までをえがいています。ドイツのロケット開発はベルサイユ 条約による重砲の開発禁止を端緒とし、長距離攻撃兵器としての開発が進みました。 最も科学者や技術者は月や衛星軌道上にロケットを打ち上げる夢を見て、開発を進めて いましたし、ヒトラーは大威力の戦略兵器としてA4を見ていましたが。
ドイツのロケット開発は時代の先駆者ということもあり、試行錯誤の連続でした。
途中より軍がパトロンとして参加し、攻撃兵器としてのいロケットの開発へと切り替わ
りましたが、民間であれだけの資金・設備投資が出来たか疑問点がある以上、最も早く
ロケットを開発する近道だったのでしょう。 |
ソノラマ航空戦史35 |
第二次世界大戦では、多くのパイロットが戦いに参加しましたが、その中には女性パイロットも多数
含まれていました。ロケット戦闘機のテストパイロットで陥落寸前のベルリンに飛行したハンナ・ライチェ
を始めとして、主に後方のフェリー飛行や教官、テストパイロットとして、各国で活躍しています。 |
ソノラマ航空戦史39 |
太平洋戦争で日本軍が積極的に活用した兵器の一つに上陸用舟艇があります。「大発動艇(通称
大発)」と呼ばれ、軽量のため、各種艦艇に搭載可能で、後続距離や搭載力も小型艇にしては、優秀なものでした。 |
ソノラマ航空戦史40 |
ソノラマ戦史シリーズで有名な本を3冊あげると、必ず名前が並ぶ一冊だと思います。そのくらい有名な
本です。同名の超大作映画の原作であり、出版されたアメリカはもとより、ドイツやフランスでもベストセラーとなりました。いまでも、海洋冒険小説の名著として、各国で読まれています。 |
ソノラマ航空戦史41 |
1942年11月30日に生起した「ルンガ沖夜戦」を日本艦隊の視点で捉え た一冊です。第二水雷戦隊がガダルカナル島で餓死に直面していた陸軍部隊に対 して、ドラム缶輸送(補給物資をドラム缶に詰めて、目的地沖合いで海中に投入 し、自艦の搭載艇でそれを曳航して陸岸近くまで運ぶ輸送法)を実施、その補給 部隊を要撃に来た米軍夜戦部隊と発生した海戦が「ルンガ沖夜戦」です。 本書には「ルンガ沖夜戦」の詳しい経過(司令部の動きや、各艦の行動)はも ちろん、当時のソロモン海域での日本水雷戦隊の行動についても、詳細に述べら れています。もっとも本書のメインは、「ルンガ沖夜戦」について、補給部隊で ある二水戦の出撃から、米艦隊の動き、さらにはその時点での両軍のソロモン海 域での活動、両艦隊の動きと戦闘を極めて詳細に書き上げています。さらには作 戦に参加した日本駆逐艦のその後にまで筆は及んでいます。 本海戦は日本の誇る酸素魚雷がその真価を発揮した海戦として知られています。 アメリカ軍から恐れられた田中頼三司令官の率いる二水戦が、僅かな損害で米重 巡部隊を撃破したのです。本書には、何故優勢な米軍を撃破できたのかが、しっ かり分かるように記述されています。その詳細を極めた記述は海戦が手に取るよ うです。日本水雷戦隊に興味をお持ちなら是非進めたい一冊です。 |
ソノラマ航空戦史44 |
太平洋戦争で日本が最後の沈めた米大型艦が重巡「インディアナポリス」です。 この艦は「伊58」が魚雷攻撃で撃沈したのですが、撃沈される直前にグァムに 原子爆弾を輸送していた艦でした。結果、この艦は単なる巡洋艦の喪失に留まら ず、政治的な問題となり、「伊58」の艦長であった橋本中佐がアメリカ本土の 査問会の召還されるほどの大騒ぎとなりました。 本書は米本土から「インディアナポリス」が、日本本土から「伊58」が出撃 するシーンから始まり、両艦の行動と「伊58」の攻撃、「インディアナポリス」 の遭難と、その責任問題の騒動についてまで、詳しくまとめてあります。 「インディアナポリス」の沈没は最も有名な艦船遭難の一つなので、名前だけは知って いる方も多いでしょうが、その全貌をまとめた本は多分本書が最も充実している と思います。特に何故、800人もの乗組員が遭難することになったのか、その 救助活動の実状や、「伊58」の襲撃行動(この時は回天は投入していません) についても、興味深く読むことができます。 |
ソノラマ航空戦史45 |
原題は「SAVO」というタイトルで、ややこしいのですが日本で呼称するサボ島沖海戦 とは、違う海戦です。日本側呼称は「第一次ソロモン海戦」で、連合軍艦隊が最大の敗北を 喫したと呼ばれる海戦を、連合国側に視点で描いたのが本書です。
「第一次ソロモン海戦」は海戦後に輸送船団を叩かなかった等の批判はありますが、日本側
でも艦隊戦に関しては大勝利の海戦として、よく知られている海戦です。本書では、その海戦
の開始である、第八艦隊の集結から、巡洋艦シカゴの艦長ボード大佐が自殺するまでの全ての
期間を詳細にまとめています。 日本側の艦橋から見た視点や、参加した水兵の方の戦記はよく見かけますが、連合軍側でどの時期に 魚雷や砲弾が命中し、どのような損害が出ていったかを詳細にしることは、なかなかできません。 そういう観点から見れるのは、本書の翻訳で一番価値を高めている点ではないでしょうか。 |
ソノラマ航空戦史46 |
作者は「伊6」の艦長として、開戦劈頭ハワイ沖で空母「サラトガ」を大破 された潜水艦長としては著名な人の一人です。本書の「サラトガ」雷撃、イン ド洋作戦、ハワイ偵察作戦、南東方面の輸送任務等、太平洋戦争序盤の潜水艦 戦ついて一通り述べられた読み応えのある戦記です。潜水艦戦記の中でも最も 著名な一冊といえるでしょう。 文調としては豪快さに溢れていて、気持ちよく読む事ができます。艦長として の判断や行動がいきいきと描かれていて、一気に最後まで持っていかれました。 本書に出てくる潜水艦の大半は激しい戦闘で戦没していきましたが、作者は武運 に恵まれてか生き延びる事ができました。日本海軍の艦長職で最も消耗の激しか ったのが潜水艦長で戦争終盤になると深刻な艦長不足に陥ります。そんな中で生 き延びることができたのは、作者も何度も述べているのですが、運が付いてまわ ったということだと思います。 この書はかなり増版のかかった書なのでいまでも入手可能だと思われます。潜 水艦戦史に興味のある人ならば一読をお勧めします。 |
ソノラマ航空戦史48 |
晴天の霹靂のような真珠湾攻撃で始まった太平洋戦争は、当時大西洋岸のノー フォーク軍港で整備を年次整備を行なっていた米空母「ヨークタウン」を太平洋 に出撃させることになりました。そして、2度とこの港に戻って来る事はなかっ たのです。 「ヨークタウン」は、「エンタープライズ」「ホーネット」の同型艦3隻のネー ムシップです。2万トン級の中型空母で大きさに比べて多数の搭載機を誇った同 級は、戦争序盤のの日本の攻勢を防ぐのに、大活躍しました。「ヨークタウン」 は同型艦3隻の中でも一番最初、ミッドウェー海戦で、「飛竜」攻撃隊と「伊 168」の攻撃を受けて沈んでいます。その戦歴はわずか182日ですが、この 間に日本空母「祥鳳」「加賀」「飛竜」を撃沈し、「翔鶴」を大破させました。 文句無しに1942年の米海軍の最高殊勲艦です。 海戦後、太平洋に回航された「ヨークタウン」は、マーシャル、ギルバート、 ラエ、ツラギの空襲、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦と、休む間もなく戦闘を続 けました。戦争序盤は日本軍の圧倒的優勢であったと思われがちですが、米空母 はこれだけ活発に日本軍に対して反撃を仕掛けていたのです。 その搭載機のパイロットの練度を優秀で、珊瑚海海戦の結果、「瑞鶴」がミッド ウェー海戦に参加出来なかったのは、「ヨークタウン」隊との交戦の結果です。 「瑞鶴」飛行隊はその再建のために最も大事な海戦に参加できなくなっており、 「ヨークタウン」は「瑞鶴」こそ撃沈できなかったものの、戦力喪失という、ほ ぼイコールの戦果を挙げた事になります。 本書は、「ヨークタウン」の182日間の戦闘を詳細にまとめ上げたものです。 激しい戦闘と、「ヨークタウン」の短い栄光を、しっかりと記録しており、米機 動部隊戦記としては最高の一冊に挙げられると思います。 |
ソノラマ航空戦史49 |
僕に友人にも何人か、ソノラマ戦記が好きなのがいるのですが、そのうち一人 が、一番面白いと絶賛しているのが本書です。ドイツ空軍のエースパイロット列 伝なのですが、確かに面白い。読み応えは抜群です。 日本でもドイツのエースパイロットは人気で、それなりの量の書籍が出ていま す。本書の内容も詳しい人なら知っていることが多いかもしれません。ですが、 さくっと読めるエース列伝の中では、かなり名作のうちに入る一冊だと思います。 ちなみに原題は「HORIDDO!」で、やはり海の向こうでも人気のある一冊 です。残念なことに、邦訳の際、夜間戦闘機のエースの章がまるごと割愛されて おり、夜間戦闘機好きな僕としては、ちょっとあれっと思ったのを覚えています。 メルダースやマルセイユ、ハルトマン、シュタインホフ等の超エースを中心に 章が構成されており、東部戦線のあまり日本では知られていないようなエース達 も登場します。また、ドイツ軍のエース達の誤った神話や誤解等にも注約が加え られていて、親切な作りになっています。 文章のタッチも軽く、そんなに肩を張らずに気楽に読めるのもいい点でしょう か。原書が古く、改訂が入っていてもあれっと思う点も少々ありますが、エース 入門としての一冊では、最高の本に入るでしょう。東部・西部・さらにはジェッ トエースの話がまんべんなく描かれており、飽きが来ません。ひじょうにお勧め で見かけたら是非読んで見てください。 |