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2004年5月9日号

「米改革」でコメの生産を減らしていいのでしょうか

消費者、農家に深刻な被害

農民連 砺波で学習会開く

農民運動富山県連合会は4月25日、農民運動全国連合会(略称農民連)米対策部長の堂前貢氏を講師に、砺波市体育館で「米改革」についての学習会を開きました。農民連では各地域で、「米改革」の狙いを学習する運動を呼びかけています。

国産米が足りるのか?

国の米需給計画と備蓄米の状況はたいへん深刻です。

全国の年間米消費量870万トンにたいして昨年(03年)の生産量は764万トンです。政府は昨年6月末在庫が163万トンあるから大丈夫だとしています。

今年(04年)は年間消費量を857万トンと見込み、それと同量の米を生産するよう各県に要請しました。今年6月末在庫は73万トンとしていますが、そのうち7,8年前にとれた米が48万トン含まれています(1996年産米14万トン、1997年産米が34万トン)。これらを主食用から除く方針であり、実質在庫は25万トンしかありません。市場で取引される量は月40万トンといわれており、需要に応じられるかどうか、綱渡りの状態が続きます。

国産米不足が価格の乱高下に

昨年の不作でグラフのように米価が乱高下しました。新聞「農民」号外によると、町の米屋さんから「米が手に入らない」という悲鳴が上がったそうです。米不足を見越して一部の大手卸業者が価格のつり上げや買い占めをはかったからだそうです。しかし、農水省は、「通常の商行為だ」として、これを規制しませんでした。

政府の米「改革」では国が主食の安定供給から完全に手を引き、市場任せにすることにしています。今年4月から計画流通制度が廃止され、米流通に誰でも算入できることになりました。これを絶好のビジネスチャンスとする大手卸業者や商社の動きが活発化しています。

米の先物取引禁止条文が削除され、米が投機の対象にされます。消費者にとっても、深刻な影響が懸念されます。

「米改革」は農民のリストラ

米市場をねらう財界にとって、生産効率の悪い兼業農家はじゃまな存在です。政府は170万戸の米作農家を2010年までに8万戸の大規模農家と1万の農業法人(「担い手農家」)に米生産の64%を集中させることを目標にしています。

大半の兼業農家は「土地持ち非農家」とし、これらの大規模農家に土地を委ねて、他産業に従事するか、生きがい農業にするとしています。「土地持ち非農家」にとっては自分の土地が自由にならなくおそれがあります。

大規模農家にとっても、米価が安定しないので、より深刻な影響を受けます。5へクール以上の農家は95年までは増加してきていましたが、ミニマムアクセス米の輸入が始まった95年以降減少に転じ、5年間で約5千戸も減っています。国の輸入自由化によって、外国との価格競争に負けるなと規模拡大に追われて行き詰まり、倒産に追い込まれた酪農家、畜産農家、鶏卵農家の二の舞にさせられることが懸念されます。

政府の狙いは、農家の離農を促し、結果として国産米の生産が大幅に減り、減反の必要すらなくなるようにしようと言うことです。不足すれば外米の輸入です。

減反奨励金(産地づくり交付金)も当面の3年間に限定

転作で麦や大豆が作られていますが、減反奨励金がその支えになっています。これが2004年度から産地づくり交付金と名前を変えて出されることになっていますが、これも当面の3年間に限られ、それ以降の助成金については縮小、廃止の方向です。

また政府が生産調整(減反)に関わるのはここ3,4年です。2008年から国は、米生産目標面積を配分しません。したがって減反しないことによるペナルティーもなくなります(図参照)。

世界の流れに反する日本の「米改革」

このような農業つぶし政策は、世界の流れに反します。

今年は「国際コメ年」です。国連がコメの増産を呼びかけているのです。8億人を超える飢餓を解決するためです。世界人口の半数、約30億人が米を主食にしています。

「国内産を」の期待にこたえる農民連

農民連は、外米削減・価格保障の充実で稲作再生を訴えています。農家には「国産求める国民の期待にこたえ、コメを作ろう」と呼びかけ、消費者、がんばる米屋さんと手を結んで販路を開く「準産直米」の運動を進めています。大手量販店中心の「市場原理」「コメビジネス」だけの流通とは違う、もう一つの流れ「中小の業者を通して産地と消費者をつなぐネットワーク」をと呼びかけています。

グラフと図、一部文章は、新聞「農民」2004年春号外から転載

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