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2004年3月2日号

市民オンブズ小矢部が発行する「おやべ市政ウォッチング」Ｎｏ．２に掲載した原稿です。
　２００２年度分の明細書も掲載しました。

市長交際費、ここが問題

砂田喜昭（小矢部市議会議員）

（1）       市長交際費をなぜ問題にするか

昨年（2003年）３月２５日に立ち上がった「市民オンブズ小矢部」は2001年度の市長交際費を分析し、自民党の政治資金団体に税金で資金提供していたことを暴露し、2000年度、2001年度に支払った2カ年分、2万4000円を市長から小矢部市に返還させました。また、年間400万円の予算を使い切るために清酒やビール券などを年度末に集中して購入している問題点も指摘し、若干ですが改善させました。

今年（2004年）1月28日に、代表の美谷克己氏らは2002年5月と2003年2月に国会議員との懇談会の賄い費24万6372円を市長交際費で支出したのは不当だと、市長に返還を求める監査請求をしました。

私が市長交際費を問題にするのは、税金の使い方を、市民の目で問題にし、正したいからです。

国や地方自治体が行財政改革を問題にするとき、官房機密費や官官接待、黒塗りの市長車などではなく、そこでやり玉に挙げられるのが公務員の人数・給与の削減や、受益者負担を口実に手数料使用料の値上げであったり、保育所や学校給食センターの民営化や統廃合であったり、住民サービスの切り下げばかりです。

一方、無駄な公共事業は全く問題にされません。たとえばその必要性に疑問のある綾子河川公園（小矢部川と渋江川の合流点と第二千歩島線の橋に囲まれた三角地に7億円あまりをかけて建設予定）について、国や、県、市も止める意志がありません。綾子から島へ抜ける4車線の第二千歩島線に橋を架ける理由付けに、この公園が必要とされているようです。ところがこの公園建設予定地は、クロスランドや「水辺の学校」など似たような公園施設のすぐ近くで、しかも民家から離れており、車でしか行けない場所です。国から補助金をもらうために必要でもない公園をつくるのが、よい税金の使い方でしょうか。

市民一人ひとりが、このような税金の使い方に疑問を持ち、監視し、意見を述べ、改善を求めていくことがたいへん重要です。市民が市長交際費の内容を吟味することをきっかけに、税金の使い方全体に関心を持つようになればと願っています。

（2）       裁判では何が問題になったか

市長交際費に関して、全国的に裁判が起こされ、いくつかの判決が出されています。私が入手した判決は西東京市（東京地裁2002年4月25日判決）と西吉野村（奈良地裁2002年5月15日判決、大阪高裁同年12月判決）です。

官官接待への支出は違法

西東京市での判決は、市長交際費で市の関係する公的機関に対して贈答の趣旨で年末年始にビール券を配布したことは違法としたものです。市当局はビール券配布の理由に「必要な情報収集に対する謝礼」「困難な案件に関する指導、教示等を受けた謝礼または迷惑をかけたお詫び」をあげていました。これに対して裁判所は「公的機関である相手方が公務上当然に行うべきことをした…にすぎない」と述べています。さらに「特別の配慮を求める趣旨で金銭又はこれに準ずる物品を贈与することは、行政の公正性、中立性を害するおそれを生じさせる点において、これに伴う弊害はいっそう大きくなる」と批判しています。

行政機関の政治的中立は憲法上の要請

奈良地裁は西吉野村長に対する判決で、村と関係する公務員への交際費による餞別の支払いと、選挙の出陣式、当選祝い、就任祝い、公明党新春祝賀会会費、第3回民主党定期大会への支出、議員の出版祝い及びパーティー券購入を「公益性がないばかりか、違法」としました。判決は次のように述べています。

「行政の政治的中立性を堅持することは、日本国憲法上の基本的要請である。すなわち、日本国憲法は、国民の自由、法の下の平等及び政治活動の自由を前提とした代表民主制をその政治の基本原理としており、したがって、国の機関や地方公共団体もしくはその執行機関は、一党一派、特定の政党に対し便宜を供与し、これを支持、支援してはならないものである。そうして、上記便宜供与や支持、支援は、特定の政党に公金を支出することを当然に禁止しているものと解される」と述べています。（ゴチックは引用者）

選挙に関する公金支出の違法性は顕著

「選挙そのものは、…もっとも政治的対立が表面化する場面である。したがって、地方公共団体が特定の候補者の出陣を祝ったり、その当選や就任を祝うことは、行政の政治的中立性を害する最たる行為といわねばならず、当該行為に公金が使用されることの違法性は顕著である」（ゴチックは引用者）

政党の大会等や、議員の出版祝いへの公金支出も違法

「たとえ…村行政に関わる首長や議員との交流を深めて村行政を円滑に進める目的で支出されたもので、…支出目的自体は政治的目的を持つものではないとしてもかわりはなく、客観的に議員の選挙や政党のパーティーに関連して支出する行為自体、当然にして深く政治的色彩を持つことはさけられないものである。」（ゴチックは引用者）

奈良地裁の判決後、大阪高裁もこの判断を支持した（2002年12月）との報道（読売新聞2003年5月10日東京朝刊）があります。それによれば判決について総務省行政課は「首長には政治的中立性が求められていない」としながらも、「交際費の使途は住民に納得されるものでなければならない」とコメントしています。いま問題にしているのは、首長の政治的中立性でなく、市長交際費という税金を使って特定政党を支援することなのです。

市との関わりや行政効果が不明な支出は不当

以上のほかに、西東京市の監査委員会による判断（2001年8月30日）で、市長交際費の使途に関して不当とされたものには、次のようなものがあります。

郵政街づくり協議会時の懇談会会費（「協議会の成果を明らかにするものの提出はなく、本件協議会の必要性、妥当性を示すものを見いだすことができなかった」）

ローカル紙の広告料掲載、ローカル紙・タウン誌の購読料（「意図が不明確で、特段の行政上の効果も認めることができない」）

財団法人さくらの会賛助会費（「さくらの会との交際を必要とする理由の説明もない。本件会費の支出の根拠は不明であり、そのような支出は不当」）

これらによれば、行政当局が行政効果やその必要性を住民に納得できるように説明できないものは不当な支出にあたるという判断です。

（3）       小矢部市長交際費の問題点

これらの判例、監査実例などにてらして、私なりに小矢部市長交際費の問題点を探ってみました。一覧表の最後の欄に「問題点の検討」として掲げてあるものがそれです。見逃しているもの、勘違いで指摘しているものなどがいろいろとあると思われますが、読者の皆さんも検討してみてください。そしてご意見を寄せてください。

私が「問題のあり」とした交際費支出を合計すると、１４７万円近くになりました。これからも、本気になれば市長交際費の半減は可能と言うことがわかります。

懇談した国会議員の名前を明らかにできず

特徴的ないくつかを紹介しましょう。

国会議員との懇談会の賄いは2001年度にはなかったものです。1回目は2002年5月7日に東京「赤坂小みや」で13万9650円を使っています。参加者は8名で、ビール6本、日本酒21本を飲んでいます。2回目は2003年2月1日で市内の料亭で10万6722円を使っています。参加者は14名で、ビール12本、日本酒24本を飲んでいます。参加した国会議員の名前の公開請求したところ、「文書がない」として公開しませんでした。誰と飲んだのかさえ公表できないようでは、この懇談に公益性が全くないことを、自ら認めたことと同じで、不当、違法な支出と言うほかありません。

綿貫会への会費支出は違法

2002年8月2日に開かれた第5回綿貫会の会費の支出3万9000円は、特定の政治家に対する支出として裁判で違法とされたものと同じです。招待文書に「綿貫民輔先生のご了解を得ましたので、第5回綿貫会を添付別紙の通り開催いたします。」とありますが、その「添付別紙」は「見あたらない」として今回は公開されませんでした。

官官接待も依然として改まらず

県職員との懇談会については、前回も官官接待として問題にしましたが、今回は参加者名簿が公開されました。2002年8月25日にヘルシーパルの八重桜（全室）において幕の内弁当コース33人分などで9万5427円支払っています。

2002年6月27日には県に対する重点要望の陳情に際し、同行した県議の昼食代として1万5330円を負担しています。昼食をごちそうしてもらわないと陳情に同行できないような県議では困ります。これも不当な支出ではないでしょうか。

　最近砺波市の市長交際費の明細を入手しました。それによると小矢部市長とは違って、議会との懇談会会費を私費で支払い、市長交際費を使っていませんでした。これは見習うべきです。

市長交際費の使途に公明正大なルールを

市民の目でその使途を吟味するために、私は昨年12月議会で毎月の市長交際費の使途を小矢部市のホームページ、市報で公表することを求めましたが、「今のところそのつもりはない」とのことでした。しかし羽咋市では、毎月公表しています。その結果、市長交際費が大幅に節約できました。

2002年度分の市長交際費については、その大部分が監査請求できる1年以内という期限を過ぎているのですが、これらについて、市民の間でもっともっとオープンに議論し、市長交際費の使い方について、公明正大な方針をつくりあげようではありませんか。

２００２年度　小矢部市長交際費の支出明細書　予算額４００万円　決算額３８９万５１３０円　不要額　１０万４８７０円

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