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2002年3月24日号

おすすめしたい本
『ホイッスルブローアー(内部告発者):我が心に恥じるものなし』 桂書房

 この本は、トラック業界のヤミカルテルを告発して、以後27年にわたって隔離同然の扱いを受けてきたトナミ運輸社員・串岡弘昭さんの本である。
 
 串岡さんがどのようにしてヤミカルテルの告発に至ったかが、まず書かれている。会社がヤクザまで使って、退職を強要してきたことも詳しく描かれている。
 おとなしく従順な越中人間がよくも持ちこたえたものだ。串岡さんというのはどういう人間なのだろう、どうしてこんなに頑張る力が涌いてくるのだろう、とだれもが不思議に思うだろう。
   
 
 そんな疑問に答えるように「私の生い立ち」「育英奨学生としての学生時代」の二節が用意されている。
稲作農民の忍耐力と貧しさの中で育った人が、新聞配達をしながら大学に学ぶ。そこで、独禁法の講義を聞いている。朝日訴訟の判決を目の前にしながら、それについての大学の先生たちの相反する評価を聞いている。学問に触れたのだ。科学的社会主義に出会う機会がなかった串岡さんが頑張って来れた原点がこの辺りにあるようだ。
 串岡さんは言う。大学生こそ社会のいろいろな現象に目が開ける一番の「社会人」だ、そのまま「会社人間」にならず、社会から目を背けない「社会人」にとどまってほしいと。
 
 第1回公判が行われた3月13日に、訴状なども巻末に収録して、発売された。一冊1200円、串岡訴訟に関心のある人にはぜひご一読願いたい一冊である。    (H)

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