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2001年8月26日号

イタリアを旅して
日本にない「頑固さ」

 ある読者にイタリア事情について寄稿していただきました。

 この夏、イタリアの4都市(ミラノ、ベネチア、フィレンツェ)を中心に観光旅行してきました。紀元前からの壮大な古代ローマの遺跡、ルネッサンス時代を中心とした絵画や彫刻のすばらしい美術作品が、町中(国中)にあふれているという感じで、数日で見て歩けるものではありませんでした。観光という点からだけでなく、イタリアという国の特徴を知る大切な機会にもなりました。

農業を大切にする頑固な方針に感心!

 ひとつは、イタリアはヨーロッパで有数の農業国(総生産高ユーロの中で6位だったと思います)であることです。各都市を結ぶ高速道路を車で走っている間じゅう見えるのは、ずうっと畑なのです。主にとうもろこし、ぶどう、苗木などとにかく延々と畑が続きます。時々、教会を中心としたこぢんまりとした町がありますが、それ以外はとにかく畑。イタリアでは、建物は町の中で作るのが原則だそうで、大事な土地をむやみに宅地や工業用につぶしてしまわないのです。逆に、日本へ観光に来た人が東京から名古屋まで新幹線に乗ったら、ずっと町並みが続いていて、ずっと東京が続いているんだと思ったそうです。食べ物というか食べることはそのまま生きることにつながるからか、イタリア人は特に食べることに執着(?) するからか、でも、農業ひいては畑や田んぼを大切に保っていくという頑固な方針をしっかりこの目で確認できたことは成果でした。
 一般に個人の自由は尊重されているけど、見た目の景観ということから建物の屋根瓦は茶色系で壁はアイボリーという原則はみんなで守らなければならないそうで、町並みはどこの都市でも本当に美しかったです。絵本の世界を見ているようで、広い畑の向こうの小さな美しい町という風景がイタリアを象徴するものだと思います。

従業員が決められた休みを取らないと事業主が罰せられる法律のある国

 二つ目は、人の穏やかさというかのんびりしているというか、日本人のせっかちな性格とは違っていることです。ベースには労働条件の違いがあるのでしょうが、イタリア人自身はほとんどバカンスにいっていて、いるのは観光業関係の人と外国人ばかりで、町の中の車の数もうんと少ないとのことでした。日曜日は、ずいぶん多くの観光客がいるにもかかわらず、店はしっかり休んでいるところが多く、キリスト教の安息日の教えともあいまって儲かることはわかっていても休みは休みという原則はこれまた頑固だなあと思いました。労働時間やお休み(長期のバカンス時期のも)は、決められた分はしっかりとらないと事業主が罰せられるという法律があるので、従業員が休むのは当たり前。夏休みどころか、週に一度の休みもままならず働いている日本人と比べて、年がら年中何かに追われながらせっかちに生きている自分に引き当ててみても大きな考え方や習慣の違いを感じました。もちろん、昼休みは昼食のためいろんなお店は3時までお休み、夜のレストランは7時か7時半まで開きません。食事をゆっくり取り、またあわてず働こうというのんびりした雰囲気が国全体にあるように感じました。

日本のよさも痛感。
子供が戦争にとられる心配がないのは憲法9条のおかげ

 三つ目は、イタリアには徴兵制度があることです。15歳から20歳までの好きなときに2年間兵役につくのだそうで、その間に不幸にもNATO関係の戦争があれば、国連軍として戦争に行かなければならないとの事でした。2年以内に廃止されるはずが、また法律で廃止の時期が延びているとか。この点では、自分の子供たちが戦争に行くなんて絶対に考えられないことで、改めて憲法第9条に当たり前のように守られていることのありがたみが身にしみた瞬間でした。戦争というものに未来永劫、絶対にかかわらなくていいんだという安心感は、憲法第9条のおかげです。
 全体的に人や建物が持っている特徴は、やはりキリスト教がベースとしてあるから出てくるものと感じました。バチカン市のローマ法王がいるから当たり前ですがイタリアは、9割がカトリック教徒で、宗教心が人々の常識や節操みたいなものを作っていると思います。
 それにしても、どの建物も人間業とは思えない技術や規模ですごいものが作られていて時の権力や地位、お金の力を示すためのものならば、いつの時代も力の誇示の仕方は変わらないものだなあと思います。 (K)


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