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2001年7月1日号

中学歴史教科書問題
子どもを戦争へと導く教科書は採用しないで下さい。

 七月五日まで市の教育センターで開かれている検定教科書展示会に、扶桑社発行の「新しい公民教科書」「新しい歴史教科書」も展示されています。今年も国民平和大行進で平和への行動を訴え続けた小矢部平和委員会の太田房子さんに見てもらいました。

 「新しい公民教科書」は一一ページのグラビア写真で始まります。取り上げられている一一のテーマのうち五つは軍事関連です。(「阪神淡路大震災と自衛隊」「国境と周辺有事」「国家主権と日本人」「国連の混乱と限界」「大国日本の役割」)。またそこに載せられている五六点の写真のうち一〇点に軍隊が写されています。
 「ヒヤッとしますね。これではこの世界に生きて行くためには、軍隊に頼るしかない、と子どもは思ってしまいますよ。東チモール紛争を取り上げるにしてもS社は『住民に投票を教える日本人ボランティア』の写真なのに、扶桑社のはオーストラリア軍の写真です」と太田さん。
「新しい歴史教科書」は建国神話に九ページも割いています。太田さんは「現代語訳のどぎつい表現が気になりますね。こどもは、史実と神話の区別がつくでしょうか」と眉を寄せます。
神武東征伝承
 日清戦争当時の情勢を述べた部分で「この日本に向けて大陸から一本の腕のように朝鮮半島が突き出ている」という表現には「軍人の目で地図を見ている」と一言。日清戦争に勝利した原因について「その背景には、日本人が自国のために献身する『国民』になっていたことがある」と述べた部分に目を止めた太田さん、「私たちの頃の『天皇のために献身する皇国民となっていたため』を言い換えたのでしょうね。今の子どもたちを、何に『献身する』国民に仕立てあげたいのでしょうか」と厳しい。
 「扶桑社の教科書は、憲法・教育基本法の精神に立てば、検定を通らなかったはずです。せめて学校に持ち込まれないよう、教育関係者のご努力をお願いしたい。子どものころ習ったことはいつまでも鮮明です。間違ったことを教えてはなりません」と太田さん。横顔には、戦争賛美の教育で思い知らされた、痛苦の戦争体験が刻まれています。

戦前の軍人勅諭の冒頭に出てくる神武東征神話を、地図入りで「伝承」だと、1ページを使って書く扶桑社の教科書













T社版教科書、資源獲得を目的の記述扶桑社版教科書が戦争目的を美化

 第二次大戦について、扶桑社版歴史教科書(写真右)では「白人の植民地支配にあえいでいた・・・人々に独立への夢と勇気をはぐくんだ。」と書き、戦争目的を「大東亜共栄圏」の建設と美化している。一方、T社版(写真左)では「この地域の資源を獲得するために進出」と不十分ながらも侵略戦争だったことをほのめかしている。
 扶桑社版教科書の見解は、日本政府の見解とも異なるものです。これを検定で合格させた日本政府の二枚舌が批判されています。
 参議院予算委員会で政府は、「日本政府として戦後、大東亜戦争がアジア諸国の独立のきっかけになった旨述べたことはございません」(河野洋平外務大臣・当時)と、日本共産党の阿部幸代議員の追及に何度も確認しています。(2001年3月19日)
 また、韓国併合、従軍慰安婦など日本の侵略と戦争犯罪についても、歴史教育としてキチンの教えることも国際公約となっています。「21世紀を担う次世代に私たちの世代の過ちを過ちとして伝え、これを二度と繰り返すことのないよう歴史を正しく伝えていかなければならない。過去の事実を直視する勇気被害を受けられた人々の感情への理解、そして過ちを繰り返さないという戒めの心とりわけ青少年の間にさらに培ってまいる決意です。」(92年、宮沢総理大臣の韓国での演説)と述べ、これが「今日も変わっていない」と同日の予算委員会でも確認しました。(この論議については、国会議事録でも、また、「議会と自治体」2001年7月号、日本共産党中央委員会発行でも読むことができます。)


学徒出陣を載せたT社版教科書特攻を賞賛する扶桑社版歴史教科書
 

T社版(写真左)では学徒動員の写真を掲げ、「どんなことを考えながら行進したのかな」と考えさせる内容となっていたが、扶桑社版(写真右)では、「神風特別攻撃隊」が「アメリカ海軍艦船に組織的な体当たり攻撃を行った」ことを「全世界を驚愕させる作戦を敢行」と称え、命を「鴻毛(鳥の羽毛)よりも軽し」(軍人勅諭)と教育した戦前の日本の野蛮な軍事作戦を美化している。

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