赤旗読者通信のページ
2000年12月3日号
「住民の幸せになる街づくりとは」と題した都市計画問題学習会が11月23日、小矢部市総合会館で開かれ、参加した29名の市民らが、都市プランナー野口和雄先生の話を聞き、熱心な質疑応答を繰りひろげました。この学習会は、都市計画道路社内上野本線新富町から今石動1丁目までの450メートル区間の道路拡幅計画がきっかけで開かれ、富山県自治体問題研究所小矢部支所(上田由美子支所長)が主催し、明るい富山県政をみんなでつくる小矢部市の会(堀内喜亨代表世話人)が共催しました。
上田由美子支所長の司会で始まった学習会は、富山県自治体問題研究所・松尾龍平理事長が「地方分権」の意義について触れた開会あいさつのあと、砂田喜昭市議から街路拡幅計画の経過と問題点についての報告を受けました。その中で、小矢部市が今年6月につくった「中心市街地整備改善活性化基本計画」にこの区間の道路拡幅計画が位置付けられておらず、「活性化のために道路拡幅が必要だ」との行政側の説明に重大な疑問があると述べました。
講演では野口氏が、都市計画決定の問題点について説明したあと、@地方分権の本来の意義は住民参加で計画づくりを進めることにあること、A住民参加の街づくりをすすめた横浜市の経験について、B都市計画づくりの手続きを住民参加で行うための仕組みづくりと、今年5月の都市計画法改正で事業の必要性について行政の側の説明義務が決められたこと、Cすでに都市計画決定された公共事業をどう見直すか、そのために「公共事業見直し法(サンセットロー=太陽が沈むように必要性のなくなった公共事業を中止・変更する法律のこと)」のような法整備が必要なことなどを解明されました。野口氏が盛んに強調されたのは、住民が幸せになる街づくりは、住民自身が議論を重ね、住民自身が選択することがもっとも大切だということです。どんな道路が必要かについても、その議論が前提と強調されました。
住民参加で行なった横浜市の場合
横浜市で都市計画道路恩田元石川線の事業を進める際に、道路を広げないことも選択肢の一つにし、住民参加でいくつものルート案をつくり、住民が専門家を交えてそれぞれのよい点、悪い点を指摘しあい、行政の側も道路ができたら騒音、振動、大気汚染がどうなるか、その予測情報を公開し、数年間議論を重ねた経験を紹介されました。これは建設省でも高く評価されているそうです。このときの道路づくり委員会の資料がインターネットで横浜市のホームページに公開してあります。また、横浜市長がこの経験を神奈川新聞社から単行本にして刊行します。
反対なら買収に応じなきゃ良い
講演の後、質疑応答に移り、「国の認可も下り、来年度から予算がつくと説明されているが、今の段階で反対、賛成といってもどうすればよいのか」という意見が出されました。野口氏は、「あくまでも反対だというのであれば、買収に応じなければよいのです。日本の国は幸い私有財産権を保障しているので、土地を売らなければ事業は進みません。強制執行は、法律上はできないことはないが、そう簡単にできるものではない。最終的には世論が決めることで仮に20軒も反対して売らないといったら、絶対にできっこない」と説明されました。
また、「交通が少ないのになぜ道路を広げないといけないのか、ほんとうに活性化につながるのか」という意見も出されました。野口氏は、「車がどんどん入ってきて活性化しているところはないですね。東京近辺でがんばっている商店街は全部下町で、ごちゃごちゃしているところです。再開発ですっきりしたら商店街なんてなくなっちゃいます。大型店が得をするだけで。高くなるのは固定資産税と相続税だけ」、「ただそれを選択するのは住民自身です。真鶴町では『道路を広げない、今ある道路を生き生きとつくりかえていこう、尾道のような』と住民が決めた。これが正解なのか、あるいは、熱海のような大きなビルをつくって、道路を広げたほうが観光地として正解なのか、それを選択するのは住民自身であるべきだ。議会が決めるとかね。ただ少なくとも市長が決めるべきでない。」、「30年、40年経って、子どもが、孫が東京を捨てて小矢部へ帰ってくるようにするには、どんな町にすればよいのか、そこをみんなで議論することが大事でないか」と指摘されました。
最後に「みんなの会小矢部」・堀内喜亨代表世話人より「住民参加とはどういうことかということについて、わかりよい話で、また一面では大変なことだと考えさせられた。民主的な都市計画とはどういうものか、住民の幸せになる街づくりをどうするか、この後の見通しをつけさせてもらったように思います」と閉会のあいさつがありました。