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2000年11月5日号


砂田喜昭の行政視察報告

私が「桜町遺跡をどう思いますか」と聞くと、
「うらやましいと思う反面、気の毒に思う」と、桜町の膨大な調査量に同情

10月30、31日、市議会桜町遺跡特別委員会は新潟県糸魚川市と長野県茅野市(ちのし)の縄文遺跡の保存、展示施設などを視察しました。私も参加しましたので、そこで特に感心したことをお知らせします。

糸魚川市長者ヶ原遺跡
 糸魚川市では長者ヶ原遺跡が縄文時代の遺跡で、「長者が原考古館」を視察しました。ここは国の史跡として指定されており、発掘調査はごく一部のみ実施され、ほとんどが現状のまま保存された状態でした。発掘調査は1954年の第1次調査以来、1998年まで13次の学術調査が行なわれましたが、土器を中心にみかん箱で3000箱の出土品があります。これを保存展示するのが長者ヶ原考古館です。

桜町遺跡の発掘規模の大きさにあらためて驚く
 私が注目したのは桜町遺跡に比べた発掘調査の規模の違いです。市の職員は2名体制で、発掘にはアルバイトを中心に12名ほど、出土時の復元・整理にアルバイト6名の体制で行なっていましたが、なかなか出土量に追いつかないと悩みを語っていました。年間の調査費が数百万円で、1991年度の第6次調査から1998年度の第13次調査までの発掘調査の予算が約3000万円、それに整理の予算が約1000万円とのことでした。桜町遺跡の調査費は1年分だけでも2億6千万円(1999年度決算)であり、このことからも、桜町遺跡の発掘調査の規模がどれほど膨大なものか推察できると思います。私が桜町遺跡の調査について、率直な感想を聞かせてもらえないかとたずねたところ、担当者は「すばらしい遺跡を調査できるのでうらやましいと思う反面、(たいへん膨大な仕事量でもあり)気の毒なことだと思う」と語ってくれました。

国、県あげた桜町遺跡調査体制への支援がカナメと痛感
 私はかねてから桜町遺跡の調査体制は県内9市の中では一番充実しているかもしれないが、人口3万5千人の市に全部負担させるには荷が重過ぎると、国や県とも交渉してきましたが、糸魚川市のこの遺跡を視察して、ますますその思いを強くしました。

長野県尖石遺跡
長野県茅野市では尖石(とがりいし)縄文考古館を視察しました。今年7月にオープンしたばかりです。参加・体験型の新しい博物館がうたい文句になっていました。常設展示が4つに区切られ、A展示室は日本の縄文研究の中心地になった宮坂英弌(みやさかふさかず)氏の業績と尖石考古館の歴史も知ることができるようになっています。B展示室は国宝となった土偶「縄文のビーナス」を中心に美術館的な展示をし、C展示室は出土品の解釈など仮説を排して、事実のみを展示することに心がけたそうです。D展示室ではいろんな仮説にもとづいて縄文時代の暮らしを再現し、縄文時代を体験できるコーナーも設けてありました。

市民参加で縄文考古館を建設
説明で私が感心したのは、市民参加でこの考古館をつくりあげたということです。1997年に基本計画をつくる際と基本設計のはじめの段階で市民公聴会を2回開催し、市民のいろんな意見を出してもらったそうです。この段階は盛りだくさんな市民の声を行政が聞くという形でしたが、さらに市民の皆さんにも設計に加わってもらおうと「新尖石考古館建設ワークショップ」を開催しました。公募した市民と市職員の30名で構成し、5人程度のグループ討議を中心に、専門家の助言を得ながら参加者全員が問題解決を図っていく方法です。この討議を経て何がこの考古館に生かされたのか、尋ねたところ、ゆとりのある部屋にすることと、休憩できる喫茶コーナーの確保が図られたこと、体験学習のコーナーと学芸員室、「縄文時代の人々の暮らしの展示コーナー」(D展示室)を一体のものとしたことなどが上げられました。市民から一通り意見を聞くと言うにとどまらないこのやり方は、今後小矢部市としても学んでいくべきだと思いました。(広報ちのを参照)


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