トップメニューネタバレ映画評ねこぢる草

映画のラストシーンが書かれています。まだ、鑑賞されていない方はご注意を!


「ねこぢる草」

ストーリー
  ある昼下がり、猫(だと思う・・・この生物は)の男の子が、車のおもちゃを持って風呂場で遊んでいた。そのとき、足を滑らせて、湯船に落ちてしまう。呼吸ができず、足をばたつかせる男の子・・・。同じ頃、夏風邪で布団の中で寝込んでいる男の子の姉(猫だよなあ・・・たぶん)が、死神に連れ去られてしまう。なんとか湯船から脱出できた男の子(弟)は、姉と死神が去るところを見て、追いかける。追いついた男の子は、死神から姉の魂を取り戻す。しかし、その姉の魂の半分は死神に持ち去られてしまっていたのだった。
 帰宅した男の子は、姉が死んでいることを両親から告げられる。呆然とする両親の前で、男の子は手に持っていた魂の欠片を姉の体に戻す。すると、死んだと思った姉がふと目を覚ます。しかし、半分の魂しかない姉は痴呆者の如く変貌していた。
 ある日、両親から買い物を頼まれた姉弟。途中でサーカスに寄り道してしまう。不思議な魔術を使う奇術師、光を放つ巨大な生物(『もののけ姫』のデイダラボッチに似ている)が派手なパフォーマンスを演じる・・・。しかし不意の事故で、巨大な生物から大量の水が流出(?)、周囲が海(!)になってしまう。命からがらボートに乗り込んだ姉妹、そして豚一匹。漂流生活を余儀なくされてしまう。食事がなくなると、豚の腹をさばいて焼いて食べる。豚も自分の腹の肉を食べる(共食い)。やがて3匹は陸にたどりつく、そこは延々続く砂漠だった。豚にまたがり、旅を続けるが、やがて豚が体力尽き、前に進まなくなる。豚を殴りまくる2姉弟。豚は死に際に、弟の腕を噛み切ってしまう。腕を失った弟は砂漠の一軒屋にすむ不気味な男に縫いあわせてもらう。不思議なことに腕が元に戻ってしまう。男のところを去る姉弟。お腹が減った姉弟は、また別の一軒屋に住む不気味な屋敷に迷い込んでしまう。壁には残酷な絵がかかり、主人は、でっぷり太った貴族然とした不気味な中年男。二人に料理を与えたのち、二人を釜茹でにしてしまう。間一髪逃げた姉弟は、中年男をハサミで切り裂いてみる、そうするとその中年の脳はコンピュータでできていた。ついでにぶつぎりにし、鍋の底に落としてしまう。

 なんだか分からないけど・・・姉弟の旅はつづく

ネタバレ
  旅を続ける姉弟は水を求め、砂漠を掘ってみる。すると「水でできた象」が現れる。水を得た弟は喜び、象の中の水で泳ぎ、はしゃぐ。象の背中で泳ぎながら旅をする二人。しかし太陽は容赦なく彼らを照らし、やがて水でできた象は蒸発して消えてしまう。
  やがて、海に出る二人。
  そのころ、サーカスで不思議な魔術を使う奇術師が食事を取っていた。ひとつの食材が床を転がり、巨大な時計の歯車にはまり込んでしまう。すると・・・全世界の時が止まってしまった。
  とまってしまった時間の中で(凍ったように固まった海)はしゃぐ男の子。
  奇術師ははさまった食材をのける、すると狂ったように時間が流れる・・・。

  姉弟がきがつくと、海に流されたときと同じ小船に乗っていた(豚はいない)、周囲は不気味な機械の世界。その機械の世界の中に一輪の花が咲いていた。弟は姉にその花をプレゼントする・・・すると、魂の抜け殻のようだった姉が元の姉に戻っていく。弟の頭をなでる姉。旅は終った。

  お使いも終り、帰宅した2匹。夕食時、家族の団欒が始まった。トイレにはいる男の子。
  そのとき、奇術師が、最後の料理・・・地球・・・を食そうとしていた。
  ひとり、そして、またひとり、家族が消えていく。トイレからでてきた男の子の目には誰もいない食卓があった。そして男の子も消える。

  エンディング。猫の家族が海への旅行を楽しんでいるところがセピア調の映像で繰り返し繰り返し映し出される。(完)


太郎と花子のスターシップトゥルーパーズ討論

「今回は番外編。オリジナルビデオアニメーションです。」
「映画のような予算が組めないはずだけど、かなり力が入っている作品だったので、ご紹介。」
「実は、人に薦められてみたんだけどね(笑)。」
「あまりアニメを見る人じゃないから、変だと思ったけど(笑)」

「で、感想は・・・・」

「あ"〜
「う"〜
「ガロだ。」
「ガロだねえ。」
「(笑)。」
「(笑)。」
「『玩具修理者』(※)って小林泰三という人が書いた小説があるんだけど、その小説好きでさ、一部で似たシーンがでてくるの。」
「何?」
「男の子の手を縫い合わせる不気味な男のシーン。小説ではね、ラブクラフトが創生したクトゥルーの神様の一人として描かれているんだけど、どんなものでも壊れたものを直してしまうという強烈な人の物語。」
「へえ。」
「すごくイメージが似てて「へ?」って思った。これ作った人はそれを読んでいたのかなあ???」

「しかし、せりふはほとんどなし、なのに、この説得力。異常な世界観にすっと入り込める力量はすごいものを感じたわ。」
「訳がわからないなりに物語は分かる(?)し、なんか妙に納得した気分に陥ってしまうから不思議だったね。音楽も印象的だし。」
「猫のキャラクターも幻想的で良かったわね。ちょっと、あの奇術師が浮いていたような気がするんだけど。」
「この不思議さ加減が妙に体になじんでしまってなかなか、心地の良い映画(?)だったかな?」
「しかし、常について回る死生感は原作者(数年前、自殺により他界)の人生をイメージして、良い気分にはなれなかったなあ。」
「うん。確かに、冒頭の陽光照りつける家と、その中で苦しむ姉、そしてそこに忍び寄る死神という構図は怖かった。」
「光があり、明るいはずなのに、妙に暗い。その対比が実に印象的だったわね。」
「見方によればさ・・・この作品って、冒頭に姉弟、共に死んでいるんじゃないか?と思わない?」
「死後の世界を見せたって感じもなきにしにあらずね。」

(※)『玩具修理者』小林泰三著 角川文庫刊
  第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した正味40ページ足らずの作品だけど、中盤のスプラッタな表現と、ラスト数行に渡る衝撃は忘れられない魅力のある恐怖小説となっています。映画化したら面白いと思うんだけどなあ・・・と思う作品。ホラー好きな方には、ぜひぜひ、ご一読をオススメします。


伊達と酔狂 Apl,2001