わ が 青 春 の 歌
私の高校時代に、教科書か何かで見て、特に印象深く残っている詩の一節に、次のようなのがある。
きみが心は知りがたし
きみをはなれてただひとり
月夜の海に石を投ぐ
作者は忘れてしまったが、当時の私の心情には訴えるところが多く、絶えず思い出してはつぶやいていたようである。
ちょうどその頃、私にも似たような片想いの歌が数首ある。相手は近所に住む、隣のクラスの女性で、今さら思いだして公表
するのも面映ゆいが、いつまでも私の胸の中だけにしまっておくのも心苦しいので、早く吐き出してすっきりしたいと思う。
当時の私の二人の友人が、私の気持ちを察して、それぞれに仲介の労をとってくれたので、二度ほど私の家から海までの小一
時間の田舎道を、彼女と一緒に散歩したことがある。といっても、仲介者が好奇心半分について来ているので、ふたりきりでは
なかったが、その時の余韻をもとに、夜になってから一気に書き上げたものである。
☆むらさきの小さき花を君が手に取りて我に問う晩秋の暮
☆ごうごうと松風すさぶ晩秋の落ち葉の小道ともに行きしかな
☆打ちよせて玉と砕けて散る波を見つめる君は何思えるか
もう少しあったような気もするが、今では忘れて思い出せない。
これらの歌を仲介者のひとりに見せたところが、即座にうろ覚えのまま彼女に報告に行ったので、「てにをは」やリズムがで
たらめになって、聞かされた方も何のことだか解らなかったであろうが、私の方も冷や汗をかいた。
この女性も今では東大を卒業して、国家公務員として課長補佐の要職にあるそうである。一度仕事ぶりを拝見してみたい気も
しないではない。