第3.6回

「恐ろしき笑い」

この回は第3回の単なるオマケです。大した事を書くつもりはありません。ただ、最初に、以下の企画展、見ていただくとしましょうか。


 川崎市市民ミュージアムにて、
企画展「ポスターのユートピア 〜ロシア構成主義のグラフィックデザイン〜」

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 私も行きましたがこれは面白かった。(以下、「だぶん」コーナーからの再掲です)
 帝政時代末期から、スターリン体制確立までのポスターデザインのいろいろ。機械的な図案や、写真のコラージュなど。色彩感の明快な対比(赤と黒が多い)、印象派とは正反対に微妙な絵具の混ぜ具合、色調の変化とは無関係。・・・・そんな視覚的体験を重ねるうち、これこそ、ショスタコの音楽を生んだ土壌かも、と思う。初期の舞台音楽、交響曲など、この美術界の動向と無関係ではあるまい。逆に手法としては、かなり類似していないか。
 そんな思いを巡らしつつ、最後のポスターが、マヤコフスキーの劇「南京虫」のもの。文字だけが並ぶものでデザインとしてみるべきものも少ないが、ありました、「音楽、ショスタコーヴィチ」の活字。もっと劇、映画のポスターが沢山あれば、タコ関連のグッズも期待したが、1枚のみ。ただ、興味深かったのは、1932年、マヤコフスキーの著作本のなかの見開き2ページのデザイン画「恐ろしき笑い」。赤地に、黒の兵士たち5人が全く同じ大きさスタイルで、銃口を一方向に向けている。兵士たちが笑っているわけでもない。見る者は、銃口の向こうに、見えてはないが、「恐ろしき笑い」があるのではと想像する。笑え笑えと鞭打たれ、「それがお前たちの仕事だ」と。この1枚は、当然にショスタコの「証言」の交響曲第5番フィナーレに関する記述を思わせるものだ。ショスタコ・ファンならずとも、ショスタコの5番を選曲する演奏者の皆さんは必見、と思う。4/6までなのでお早めに。この企画展、ショスタコを語る上で絶対見逃せないと私は断言します。(広いスペースに、休日ながら客はまばらでしたのでゆったりと鑑賞できるはず。)

(2003.3.22 Ms)


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