F1ドライバー統計(1950-2000)

@チャンピオン1回と2回以上の違い

1950年から1999年までに登場したF1ドライバーは全部で648人。シリーズに分けて、これらの内訳を見ていきます。第1回は、チャンピオン27人です。頂点に達したわずか4%のドライバーの中でも、5回達成した者から、たった1回のチャンスを勝ち取った者まで、さまざまです。

2001.7.23 Updated

F1ドライバーのピラミッド

1950年から1999年まで、F1ドライバーは全部で648人登場しました。その中から、到達点を7種類に分けると、以下のようになります。

@チャンピオン
A優勝まで(チャンピオンになれず)
B表彰台まで(優勝できず)
C入賞まで(表彰台に登れず)
D完走まで(入賞できず)
E出走まで(完走できず)
F予選まで(決勝に出れず)

この下に、GP以外のレースや、テスト走行だけ走った者がいますが、それらは除外されます。

 

チャンピオン獲得回数別の内訳

チャンピオン獲得回数では、1回のみが半数を占めています。

5回: 1人
4回: 1人
3回: 5人
2回: 6人
1回:14人

このことから、チャンピオンの中でも、複数回チャンピオン(13人)と単一回チャンピオン(14人)の2種類に分類していくことにします。

ファン・マヌエル・ファンジオ(アルゼンチン)【チャンピオン5回、選手権2位2回】
史上最多チャンピオンであるとともに、史上最年長チャンピオン(1957年、46歳)。また、勝率47%、PP率55%、FL率45%、LL率75%、表彰率69%、入賞率80%、完走率80%、平均得点5.4点など、多くの史上最高もマーク。史上最強のチャンピオン。1995年没。

 

平均年齢

チャンピオン・ドライバーがF1にデビューする平均年齢は27歳4ヶ月。初優勝は29歳5ヶ月(3年目)。初チャンピオンは31歳5ヶ月(5年目)です。

複数回チャンピオンになる者は、単一回チャンピオンよりターニングポイントが2歳ほど若い、つまり早熟なのが特徴です。

ミハエル・シューマッハー(ドイツ)【チャンピオン3回、選手権2位1回】
1992年、チャンピオンの中では最年少の23歳7ヶ月で優勝。1994年、史上2番目の25歳10ヶ月でチャンピオン。続く1995年もチャンピオン。2回目としては最年少の26歳。

年代別に見ると、1950年代が高年齢なのが特徴です。初代チャンピオンのファリーナは43歳でした。

1950年代が全体の平均を押し上げています。1960年代以降からの全体平均では、初出場25歳11ヶ月、初優勝28歳3ヶ月、初王座30歳3ヶ月となります。

現代ではシューマッハとハッキネンがともに22歳でデビューですが、チャンピオンになったのはシューマッハ25歳、ハッキネン30歳です。

ミカ・ハッキネン(フィンランド)【チャンピオン2回、選手権2位1回】
1998,99年のチャンピオン。デビューは22歳5ヶ月とチャンピオン中2番目に早いが、初優勝は7年目と最も遅いものでした。8年目でチャンピオン。7年目以降に初チャンピオンになった者は6人いますが、2回達成したのはハッキネンだけ。遅咲きタイプといえます。

ニキ・ラウダ(オーストリア)【チャンピオン3回、選手権2位1回】
1975,77,84年のチャンピオン。デビューは22歳5ヶ月。3回目の王座は2回目から7年の間隔を置いての最長記録。1976年の大火傷のあと2度もチャンピオンになった不屈のドライバー。

 

達成度率

全チャンピオンの完走率は61.8%、ポイント獲得率は47.5%、表彰台に登る率は34.8%、そして優勝する率は16.4%です。

複数回チャンピオンと単一回チャンピオンの違いは勝率がもっとも際立っています。完走率・入賞率にそれほど大きな差はありませんが、勝率は1.93倍の差が出ました。

アイルトン・セナ(ブラジル)【チャンピオン3回、選手権2位2回】
史上最多ポールポジション65回は2位クラーク、プロスト33回の倍近く。チャンピオンは1988,90,91年の3回。また、リーダーラップ86レースも史上最多。1994年サンマリノGPで事故死。

デニス・ハルム(ニュージーランド)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
1967年のチャンピオン。ポールポジション1回のみというのは全チャンピオン中、最低。チャンピオン後に無冠で7年間も走りつづけたのは最長記録。デビュー時は素足でペダルを踏んでいたことから、裸足のデニーと呼ばれました。

ポールポジション獲得率においても、複数回チャンピオン(20.3%)が単一回チャンピオン(11.1%)の1.82倍になっています。

ファステストラップ獲得率では1.69倍の差。

リーダーラップ率は、1周でもトップを記録したレースが、出走全レースのうちどれくらいあるかを表します。ここでは1.67倍の差になりました。

1周の速さにおいても、レースをリードすることにおいても、複数回チャンピオンは単一回チャンピオンを凌駕しているといえます。つまり、派手なわけですね。

ジャック・ブラバム(オーストラリア)【チャンピオン3回、選手権2位1回】
1959,60,66年のチャンピオン。1966年は自分のチームでチャンピオン。3回以上チャンピオンになった者の中では最低の勝率(11.1%)。好不調の波が大きかったドライバーと言えます。

ジャッキー・スチュワート(イギリス)【チャンピオン3回、選手権2位2回】
1969,71,73年のチャンピオン。デビューの1965年にいきなり優勝を記録。1968〜1972年に5年連続最多リーダーラップ。自チームを率いても1999年に優勝。

ネルソン・ピケ(ブラジル)【チャンピオン3回、選手権2位1回】
1981,83,87年のチャンピオン。3回以上チャンピオンの中では、ブラバムに次いで勝率(11.3%)が低くなっています。不利なマシンの時は成績を残せませんでした。

 

選手権争いの経験数

チャンピオンは、選手権争いに敗れた年もあります。複数回チャンピオンと単一回チャンピオンの差のひとつに、選手権争いの経験数があります。

複数回チャンピオンは、チャンピオン回数で単一回チャンピオンの3倍近く経験しています。同様に、選手権2位の数でも3倍近くを経験しています。また、シリーズ途中のポイントリーダー回数でも、3倍近く経験しています。

複数回チャンピオンが効率的に王座を獲ったのではなく、多くの悔し涙も流しているのです。

アラン・プロスト(フランス)【チャンピオン4回、選手権2位4回】
チャンピオン回数で史上2位。選手権2位回数で最多。ポイントリーダーに立った年は10回。プロストの最多記録は優勝51回、表彰台108回、入賞128回、完走143回、FL41回、総得点798.5などがあります。

ケケ・ロズベルグ(フィンランド)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
チャンピオンの中では史上最低の勝率(4%)。選手権2位は経験なし。ポイントリーダーに立ったことは1982年の1回のみ、年間わずか1勝でチャンピオンになりました。前年0点というのも記録。FL率、平均得点もチャンピオンの中では最低を記録。1986年に最多男プロストとチームメイト。野武士タイプのファイターです。

 

ルマン、インディ、2輪世界GPを制覇したF1チャンピオン

F1での最高記録はなくても、モータースポーツの他のカテゴリーを制覇したF1チャンピオンも偉大です。

マイク・ホーソン(イギリス)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
1958年F1チャンピオン。1955年ルマン優勝。ルマンでの事故が惨事を呼び、F1で王座についてすぐ引退。翌年に交通事故死。

フィル・ヒル(アメリカ)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
1961年F1チャンピオン。1958,61,62年ルマン優勝。1961年のF1王座はチームメイトの死亡事故の結果という悲しい結末でした。

 

グレアム・ヒル(イギリス)【チャンピオン2回、選手権2位3回】
1962,68年F1チャンピオン。1966年インディ500優勝。1972年ルマン優勝。世界3大レースのモナコ・インディ・ルマンを制覇した唯一のドライバー。自分のチームを興した1975年に飛行機事故死。息子デーモンと親子2代で王者。

ジム・クラーク(イギリス)【チャンピオン2回、選手権2位1回】
1963,65年F1チャンピオン。1965年インディ500優勝。スコットランドの農夫出身で、フライング・スコットと呼ばれました。通算25勝に対し、2位がわずか1回。勝つかリタイヤかというタイプ。勝つときはぶっち切りでした。1968年にF2レースで事故死。

ジョン・サーティース(イギリス)【チャンピオン1回、選手権2位1回】
1964年F1チャンピオン。1956〜60年にかけて2輪世界GP(350cc,500cc)で7回チャンピオン。2輪と4輪を制覇した唯一のドライバー。

 

ヨッヘン・リント(オーストリア)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
1970年F1チャンピオン。22歳4ヶ月のデビューはチャンピオン中、最年少。1965年ルマン優勝。1970年、イタリアGPの予選で事故死。死後チャンピオンになりました。

エマーソン・フィッティパルディ(ブラジル)【チャンピオン2回、選手権2位2回】
1972,74年F1チャンピオン。25歳8ヶ月でチャンピオンは史上最年少。1989,93年インディ500優勝。

マリオ・アンドレッティ(アメリカ)【チャンピオン1回、選手権2位0回】
1978年F1チャンピオン。1969年インディ500優勝。CARTチャンピオン4回。息子のマイケルもCARTチャンピオンになり、F1を走りました。

 

ナイジェル・マンセル(イギリス)【チャンピオン1回、選手権2位3回】
1992年F1チャンピオン。デビューから13年目でチャンピオンは最長記録。1993年CARTチャンピオン。F1、CARTを連続してチャンピオンになったはこの人だけ。

ジャック・ヴィルヌーヴ(カナダ)【チャンピオン1回、選手権2位1回】
1997年F1チャンピオン。デビューから2年目でチャンピオンは最短記録(F1創設1950年を除く)。1995年インディ500優勝、CARTチャンピオン。父は1982年ベルギーGP予選で事故死したジル・ヴィルヌーヴ。