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 2004BRA

ブラジルGP ラップタイム分析

Oct.31, 2004

F1は最後のマルチストップレースが終わった。来年からはタイヤ交換禁止になるため、大きく様変わりする。短いスティントでのタレとかの問題ではなくなるし、タイヤ交換直後の爆発的タイムがなくなるから、ピットインが不利になる。給油は可であり、燃料の重さが速度に影響することだけだ。今年までのF1マシンは燃料タンクがより小さくだったが、再び大きくしなければならない。それでバランスを崩すチームも出そうだ。

なお、タイヤ交換禁止に対してバーストしたらどうするのかなど批判が多い。だがこれらは、木を見て森を見ず、である。タイヤがあまりにも進化しすぎて、速さに対する比重が高くなりすぎた。それを戻す必要があった。おそらく問題は起きるだろうが、大きな流れは変えられない。

そんな背景のもと行われた最終戦ブラジルGPは、ミシュランが一矢を報いた。この結果は来年とは関係ないが、規則大変更でフェラーリ&ブリヂストンが築いた優位がいったんリセットされる。タイヤは木製のような固さが必要になるが、耐久性のなかでどれだけグリップできるかの戦いが始まる。

ドライバー的には、ピットストップ前後の走りで差をつけて勝つという、1994年からのシューマッハ手法が通用しなくなる。重タンでミスなく安定的に走ることが重要。ピット逆転が減るから、レースが単調になる。オーバーテイクへをめざすことが大きくなる。ウィングに規制が入り、後方乱気流が減ればオーバーテイクしやすくなればよいのだが。

佐藤は相変わらずミスが多い。さらに安定指向が必要であり、欠点の重タンでの遅さを克服する必要もある。ホンダは1レースで白煙を噴くどころではない、2レースもたせなければならない。
 
1-4位ドライバー全ラップタイム (10/26)
5-8位ドライバー全ラップタイム (10/27)
 
バリチェロ、致命的なタイヤ交換遅れ
ブラジルGPは雨上がりのコンディションでスタートしたが、ドライタイヤのアロンソが3周目には早くもウェットタイヤ勢と同等のタイムを出し、4周目には上回った。

ウェット勢で最も早くドライに交換したのはR・シューマッハで、4周目の終わりにピットインした。5周目にはライコネン、モントーヤ、佐藤、トゥルーリ、M・シューマッハの5人がピットインした。R・シューマッハは1周早かったのにモントーヤとライコネンの後ろになった。ラルフは3周目でライコネンに5秒遅れだったが、1周早いピットインでその5秒を取り戻していた。敗因はインラップとアウトラップで遅かったことだった。

バリチェロはその1周後の6周目終了時に交換した後、1位から6位にダウンしてしまった。バリチェロは6周目を遅く走って10秒以上ロスし、優勝を逃す第一の原因になった。フェラーリが12位のM・シューマッハを先に入れたのは、彼が3周目にスピンしたためだった。ブリヂストンのドライタイヤが湿った路面で弱いということも躊躇させる原因になった。

マッサはさらに後の7周目にピットインして10位にダウンした。走り続けたのは、6-7周目にリーダーラップを記録できたと言う意味があった。
 
フェラーリは週末を通じて強くなかった
ブラジルGPでフェラーリは圧倒的な強さを発揮できなかったが、それは週末を通じて言えた事だった。3日間のタイムの変遷を見ると、まず得意の金曜朝に埋もれていた。その後、トップを取ることがあっても、ライバルたちと差がなかった。

M・シューマッハは土曜フリー走行でクラッシュし、日曜のレースでも3周目にスピンした。モンツァや上海で見たことが繰り返されたようだ。鈴鹿にのみあったBSを勝たせるというモチベーションが、バリチェロの地元GPではなかったかもしれない。

レースが雨まじりだったから負けたというよりも、金曜・土曜のドライでタイヤの磨耗性に問題があった。ブリヂストンは鈴鹿に全精力を使い果たしたのか、ここでは優位に立てなかった。ミシュランは1年中やられっぱなしだったが、最終戦では一矢を報いた形になった。

インテルラゴスは、モナコとインディアナポリスに次いで3番目に短いサーキット(4.309km)である。各車の差が出にくく、タイム上も接近した混戦になった。ルノーはザウバーよりも常に遅い。ルノーがギャンブルに出たくなるのも当然の成り行きだった。
 
佐藤に落とし穴のセクター1
セクター1はコーナーといえば最初のS字だけで、あとは全開で駆け抜ける。BARはこのセクターでマシンが決まっていたようだ。だがそれが過信になったか、佐藤はレースで順位を失う場所になってしまった。
フェラーリ唯一の利点を捨てる
セクター2は、2つの高速コーナーと4つの低速コーナーからなる。一次予選が突出したタイムになっているが、レースではタイムが落ちた。これは各車ともダウンフォースを減らしてオーバーテイク重視にしたからと思われる。そのため低速コーナーでつらくなった。フェラーリは唯一の利点を自ら失った。
ホンダはBMWに完敗
セクター3は最初に低速コーナーがあるだけで、後はひたすら全開。ここではウィリアムズBMWが強かった。BARホンダは低迷した。


ウィリアムズBMWがコーナー脱出と加速で優れる
最高速を見ると、各車とも予選よりも決勝で上がっており、ダウンフォースを減らしたことがわかる。10位降格のM・シューマッハは特にそうだった。

ウィリアムズがセクター2で速い。この地点は低速コーナー間の短い直線にあるが、ウィリアムズがコーナー脱出速度と中高速域の加速に優れていたことが分かる。マクラーレンはやや及ばなかった。

インテルラゴスのスピードトラップ地点は第一コーナーの手前だが、ブレーキングポイントにきわどいため、コントロールラインよりも速度が下になっている。
 
ドライスタートの3人でアロンソだけ成功
ドライタイヤのギャンブルに出た者は、8番手アロンソ、12番手クルサード、13番手ビルヌーブの3人だった。このうちアロンソだけが成功した。ビルヌーブは8周目から19周目まで7位を走ったが、その後はズルズルと後退して10位に終わった。クルサードも8位まで上がったが、最後は11位だった。2ストップによる重い燃料が彼らのペースアップを阻み、グリッドと大差ない結果に終わった。

それだけにアロンソの8位スタート4位フィニッシュは目立った。アロンソがウェットタイヤでスタートしていたら何位で終わっただろうか。ザウバー勢との8位争いになっていた可能性がある。アロンソはドライで前に出ることで後続を長い間抑えた事が4位につながった。ギャンブルの代償は得られた。

ウェットからの変則3ストップが主流だった。ライコネンは第3スティントをモントーヤよりも4周長くして逆転を狙ったが果たせなかった。佐藤も第3スティントを長くしてラルフを逆転したが、残り3周で元に戻された。
 

ピット作業だけは速いトヨタ
コース上ではいつもより不調のフェラーリだが、ピットレーンではトップクラスの速さだった。トヨタは複雑な路面コンディションにまったく対応できなかったが、ピット作業だけは安定して速かった。
 
ライコネンが最速ペース
レースペースでは、ライコネンとモントーヤが1:12秒台で突出した。バリチェロは前車に抑えられていた印象があるが、そんなに多く抑えられてはいない。M・シューマッハは最終スティントのほとんどを前車に抑えられていた。

佐藤も最終スティントは抑えられていたが、最も抑えられ続けたのはR・シューマッハで、2つのスティントで50周はアロンソの後ろだった。

ザウバーはそれらに続いて速かった。フィジケラも後半はマッサに抑えられ続けた。ルノーはザウバーより遅く、トヨタに近かった。また、アロンソよりビルヌーブの方がペースが良かった。
 
フェラーリ、モンツァの再現できず
スティント平均では、第1スティントを7周目以降とした。ここでもライコネンとモントーヤが抜き出ている。フェラーリは厳しかった。フェラーリは同じような雨上がりのモンツァで後半に圧倒的な速さを見せていたのに、ここではまったく冴えなかった。前車に詰まったというのは、モンツァのときのような力で抜けなかったからだ。レース中盤もオンボードカメラに水滴が見えたことはモンツァと違っていた。

第3スティントはアロンソに詰まった佐藤と兄弟が示されている。一方、ザウバーはいいペースだった。序盤のダンプ路面で後退しなければもっと上の順位の可能性もあった。
 
アロンソはミスしても抜かれず、佐藤は抜かれた
ラップタイムの変遷では、アロンソが1:13秒台で遅いことが目立っている。アロンソにつかまってしまったら負けだった。モントーヤとライコネンはそうならなかった。

ラルフは28周目につかまった。ラルフは第2スティントでモントーヤたちに離されたことが敗因になった。2回目のピット後にアロンソにつかえてしまった。51周目にアロンソを抜いたが、52周目に抜き返された。

佐藤は33周目のミスでバリチェロに先行されたが、39周目にもタイムの落ちが見られる。アロンソも61周目に落ちたが、佐藤は抜けなかった。そして69周目に佐藤が落ちたとき、ラルフに抜かれた。このときアロンソは落ちていない。佐藤はチームから完走優先と言われたらしいが、抜かれていいとは言われていなかっただろう。

佐藤に対する海外の評価としては、最後までinconsistent(不安定)がつきまとうことになった。後半戦はポイント重視でアクレッシブさも影をひそめたから、余計目立った。
 
モントーヤに2つの勝因
バリチェロは30周目に1位に20秒差をつけられた。佐藤・ラルフ・アロンソを抜いた後の51周目に21秒差だった。残り20周で詰められなかったが、レース後に首の痛みを訴えていた。地元GPで期待通りの成果をあげられなかった理由としては、どこかで聞いたような話だった。

モントーヤとライコネンの勝負は、6周目のバトル(モントーヤのオーバーテイク)が第一のポイントだった。第二のポイントは最後のピットイン前にあった。二人は27周目に3.8秒差、49周目に5.8秒差になった。ライコネンは第3スティントでモントーヤより6周後にタイヤ交換したが、1.4秒後方で復帰した。6周で5.8秒は逆転できなかった。勝負は46-49周目にあった。モントーヤが1:11秒台を連発し、差を4.6秒から5.8秒に広げた。ここで稼いだ1.2秒が大きかったことになる。
 
佐藤は誰にもあるミスを致命傷としないこと
モントーヤは33周目に1:15.883とタイムが3秒も落ち込んだ。同じ周に佐藤もミス(1:17.227)した。1位モントーヤは2位ライコネンとの差が7.7秒から5.0秒に縮まっただけだった。5位佐藤は0.6秒後方の6位バリチェロに抜かれてしまった。モントーヤと佐藤は似たようなタイプで、オーバーテイクが売り物だがミスもする。重要なのはミスを致命傷としないことだ。

アロンソはラルフとの抜きつ抜かれつがあったものの、結果的に55周目の4位を守りきった。アロンソも少しは波があったが、絶対に抜かれなかった。佐藤に足らないのはこれだ。優勝経験者たちに囲まれて臆するようではそこまでの選手で終わってしまう。上を目指す(勝てるドライバー)ならば、後ろに着かれても余裕を持てることとスキを見せないことである。
 

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